第58回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-3] ポスター:管理運営 3 

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PQ-3-3] 当院回復期リハビリテーション病棟における自動車教習所との連携開始と実施効果について

栗谷 明至, 和田 裕大, 山本 紘平, 竹内 章子, 真継 大輔 (医療法人幸生会 琵琶湖中央リハビリテーション病院  リハビリ療法部)

【はじめに】近年,作業療法では脳卒中,てんかん,高次脳機能障害を呈した方を対象とした運転支援が重要である.蜂須賀研二ら(2020)によると運転適性判断のゴールドスタンダードは実車評価であるが,回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)入院中の実車評価は,病院や都道府県により対応が様々で連携開始のプロセスは一様でなく実施困難な場合もある.当院は180床の回リハ病棟を有し,2021年にHondaセーフティナビ(本田技研工業,以下DS)を導入,運転支援を開始したが,DSでの支援後にも不安を訴える患者を認めた.そこで2023年に近隣の自動車教習所と相談,実車評価の体制を検討したため連携開始の一例として報告する.尚,当院倫理委員会の承認を得て患者が特定されないよう配慮した.開示すべき利益相反の関係にある企業はない.
【目的】自動車教習所との連携開始のプロセスを報告,効果を検討し課題を明らかにして実車評価導入の一助とする.
【実車評価開始に向けた活動】実車評価に向け作業療法士による運転支援班を結成した.院長の承認後,教習所との連携に向け活動を開始した.
1)院内活動:運転支援班はフローチャートや実車評価マニュアルの検討,院内啓発のため月1回会議をした.運転支援は家族も含め運転再開を希望した患者に医師の指示のもと神経心理学検査(MMSE,TMT-J,Kohs立方体組み合わせ検査,SDSA),停車評価,DSを行った.実車評価の対象者は支援の中で運転に不安の訴えがあった患者,運転可否の判断をしかねる患者とした.
2)院外活動:『滋賀県自動車運転と医療に関する協議会』で教習所職員と交流,近隣の教習所の紹介を受けた.教習所と面談後にメールや電話で実車評価の時間,感染対策など運用の調整をした.
【実車評価の内容】事前準備は,主治医の指示で作業療法士が教習所の予約を行った.患者から免許センターへの電話連絡を行い適性相談を実施した.実車評価当日は,当院のDS評価結果を教習所職員と共有し,作業療法士は後部座席に同乗した.運転は教習所の場内で行い,作業療法士と教習指導員は運転の評価を各視点から行い,終了後に情報共有した.後日,運転適性診断の結果が病院に書面で送付された.
【結果】運転支援班が院内外で連絡調整して教習所と連携開始された.実車評価が可能となり2023年10月~12月で2名が運転再開に至った.作業療法士の同乗により教習所職員と情報共有がスムーズであった.実車評価はDSで評価し得ない後方駐車が可能であった.後部座席から録画した動画を患者と共有,作業療法プログラムへ反映した.運転診断結果は患者,主治医と情報共有し,患者より「教習所の方に大丈夫と言って頂いてほっとした」,主治医より「診断書が書きやすい」と声があった.実車評価は,教習所側は運転診断書の作成や患者に応じた個別対応,病院側は作業療法士による通常の個別リハビリテーションに加えて2時間が必要であった.
【考察】回リハ病棟入院中の実車評価は運転の状況把握による患者と医療者の不安軽減,スムーズな多職種連携に繋がり早期から運転再開に至る可能性がある.生田純一(2019)は実車前評価から実車評価時の具体的な運転行動やその数を予測することは現時点では難しいと述べており,運転を各機関で評価することは有用と考える.
 課題として,教習所は個別対応が必要で実車評価の可否は教習所の体制が重要である.病院は支援に一定のマンパワーを要しており,支援継続のため,患者,教習所,病院に有益となるよう調整する必要がある.都道府県により行政の対応が一様でないため,状況に応じた実車評価の調整及び退院後の調査が課題である.