[PQ-3-4] 回復期リハビリテーション病棟にて患者の「個人史や作業に抱く価値」の情報共有を図りチーム医療が推進される要因の質的分析
【背景】
患者の「個人史や作業に抱く価値」の情報を他職種で共有することがチーム医療を促進する(川口悠子ら,2019)とされているが,当院作業療法部門の2021年度事業振り返りでは他職種と情報共有を十分できていない課題が挙った.そこで,著者らは,2022年度に回復期リハ病棟専従OT14名を対象に,患者の「個人史や作業に抱く価値」の情報共有をチーム内で図っている現状と課題についてアンケート調査を実施した(山田唯ら,2023).その結果では,全てのOTが情報伝達の必要性を感じていたが,他職種に伝わった実感は15%程度に留まっていた.
【目的】
当院回復期リハ病棟において,OTが他職種と患者の作業や生活史の情報共有を図り,チーム医療が促進される要因を質的に明らかにする.
【方法】
上記のアンケート調査において,「OTからの情報共有によって他職種の支援に良い影響があった」と回答し,インタビュー調査に協力が得られた者を対象とした.質問項目は,アンケート調査結果の分析を踏まえて作成し,「患者の作業や生活史の情報共有を他職種と行った後の具体的な効果」,「相手職種と情報共有のねらい」,「情報共有の手段や方法,タイミング」等について半構造化インタビューを実施した.分析は,チーム医療の促進に有効な構成概念を抽出し,要因を明らかにするため,4ステップコーディングによる質的データ分析手法 SCAT(Steps for Cording and Theorization)を用いて行い,著者と共同演者の4名で継続的な検討を行った.尚,調査の実施に当たっては,事前にリハビリテーション科責任者の承認を得た後,対象者に書面での説明と同意を得て実施した.得られた情報は全て匿名で扱い,個人が特定されないよう十分配慮した.
【結果】
対象者は5名(経験年数2~14年),インタビュー所要平均時間は54分だった.発言内容から,特に入院初期と退院前時期に焦点を当てた情報共有の取り組みが多く語られた.代表的な【構成概念】を用いてストーリーラインを示す.入院初期は介護拒否や意思疎通困難を呈する【患者への関わり方の情報ニーズが高い時期】に,【最初に情報活用の期待値が高い相手の選定】を行い,【OT実践から得られたナレッジを共有】,【臨床中や業務の合間に口頭で伝達】することで情報が受け止められやすく,チーム医療が促進される経験をした.また,退院前時期をOTは【生活能力を見立てる時期】と捉え,【再開したい作業と関連性の高い職種】に【患者・家族の本音を代弁】し,【職種の特性を尊重した業務依頼】を行うことで【チームが同じ退院後生活のイメージ共有】に至る経験をした.
【考察】
チーム医療が促進される質的要因について,入院初期は他職種の情報ニーズが高い時期に最初に情報活用の期待値が高い相手へ,対面で,実践に基づく知識を共有することが有効と考えられた.また,退院前時期は本人・家族が望む生活をいかに他職種とそのイメージを組み立てていくかが鍵になると考えられた.今回得られたチーム医療を促進する質的要因を元に,具体的な他職種連携について部門内教育を進めることで,経験値を問わずチーム医療を促進する可能性が示唆される.本研究の限界として,今回のサンプルサイズから得られた結果はあくまで一病院の限られた対象者のインタビューデータに基づくものである.今後の展望として,他職種に対してもインタビューを行い,OTから発信される「個人史や作業に抱く価値」情報の活用可能性について調査していきたい.
患者の「個人史や作業に抱く価値」の情報を他職種で共有することがチーム医療を促進する(川口悠子ら,2019)とされているが,当院作業療法部門の2021年度事業振り返りでは他職種と情報共有を十分できていない課題が挙った.そこで,著者らは,2022年度に回復期リハ病棟専従OT14名を対象に,患者の「個人史や作業に抱く価値」の情報共有をチーム内で図っている現状と課題についてアンケート調査を実施した(山田唯ら,2023).その結果では,全てのOTが情報伝達の必要性を感じていたが,他職種に伝わった実感は15%程度に留まっていた.
【目的】
当院回復期リハ病棟において,OTが他職種と患者の作業や生活史の情報共有を図り,チーム医療が促進される要因を質的に明らかにする.
【方法】
上記のアンケート調査において,「OTからの情報共有によって他職種の支援に良い影響があった」と回答し,インタビュー調査に協力が得られた者を対象とした.質問項目は,アンケート調査結果の分析を踏まえて作成し,「患者の作業や生活史の情報共有を他職種と行った後の具体的な効果」,「相手職種と情報共有のねらい」,「情報共有の手段や方法,タイミング」等について半構造化インタビューを実施した.分析は,チーム医療の促進に有効な構成概念を抽出し,要因を明らかにするため,4ステップコーディングによる質的データ分析手法 SCAT(Steps for Cording and Theorization)を用いて行い,著者と共同演者の4名で継続的な検討を行った.尚,調査の実施に当たっては,事前にリハビリテーション科責任者の承認を得た後,対象者に書面での説明と同意を得て実施した.得られた情報は全て匿名で扱い,個人が特定されないよう十分配慮した.
【結果】
対象者は5名(経験年数2~14年),インタビュー所要平均時間は54分だった.発言内容から,特に入院初期と退院前時期に焦点を当てた情報共有の取り組みが多く語られた.代表的な【構成概念】を用いてストーリーラインを示す.入院初期は介護拒否や意思疎通困難を呈する【患者への関わり方の情報ニーズが高い時期】に,【最初に情報活用の期待値が高い相手の選定】を行い,【OT実践から得られたナレッジを共有】,【臨床中や業務の合間に口頭で伝達】することで情報が受け止められやすく,チーム医療が促進される経験をした.また,退院前時期をOTは【生活能力を見立てる時期】と捉え,【再開したい作業と関連性の高い職種】に【患者・家族の本音を代弁】し,【職種の特性を尊重した業務依頼】を行うことで【チームが同じ退院後生活のイメージ共有】に至る経験をした.
【考察】
チーム医療が促進される質的要因について,入院初期は他職種の情報ニーズが高い時期に最初に情報活用の期待値が高い相手へ,対面で,実践に基づく知識を共有することが有効と考えられた.また,退院前時期は本人・家族が望む生活をいかに他職種とそのイメージを組み立てていくかが鍵になると考えられた.今回得られたチーム医療を促進する質的要因を元に,具体的な他職種連携について部門内教育を進めることで,経験値を問わずチーム医療を促進する可能性が示唆される.本研究の限界として,今回のサンプルサイズから得られた結果はあくまで一病院の限られた対象者のインタビューデータに基づくものである.今後の展望として,他職種に対してもインタビューを行い,OTから発信される「個人史や作業に抱く価値」情報の活用可能性について調査していきたい.