[PQ-4-1] 就労支援機関管理者における職務ストレスの傾向
【はじめに】令和6年の障害福祉サービス報酬改定により,就労移行支援,及び,就労定着支援事象所の就労(定着)支援員は「基礎的な研修」の受講が義務付けられた.つまり,一般就労を直接支援する職員の基盤となる研修が開始される.しかし,現場での人材育成に携わる管理者については,今後の課題となっている.
就労支援機関管理者において,高ストレス者は非高ストレス者と比較し,所属機関の人材育成システムに課題を感じている割合が有意に高いことが示されている(大川ら,2023).そこで,今回,管理者に対する職務ストレスに注目した分析を行ったので報告する.なお,本研究は本学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:03018).
【方法】対象は就労移行支援,就労継続支援(A・B型),障害者就業・生活支援センター(以下,ナカポツ)を運営する就労支援機関800カ所の管理者である.ナカポツは厚労省,他はWAMNETの情報を参照に,各200ヵ所をランダムに抽出し,依頼文書と調査票を郵送した.その際,返送をもって本研究へ同意したものとみなした(調査期間:2022年2月~4月).調査票は回答者・所属機関の基本情報,職業性ストレス簡易調査票(57項目)(厚生労働省),職リハ従事者特有の職務ストレスについて4件法(全く思わない~とてもそう思う)で回答する職リハ従事者特有の職務ストレス尺度(石原ら,2011)を含めた.
分析方法は,最初に,労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚労省,2021改定)に従い,職業性ストレス簡易調査票の合計得点より高ストレス者を判断した.その後,高ストレス者群と非高ストレス者群における職務ストレスの比較をMann-WhitneyのU検定で行った(p<0.05).なお,統計解析にはSPSSver.29を用いた.
【結果】住所不明等で回答できない19 カ所を対象から除き,回収率は30.3%(242 カ所)であった.また,職業性ストレス簡易調査票の回答に欠損を認めた分を除き,分析対象は205カ所(25.3%)の管理者となった.回答者の属性は男性134名(60.8%),女性75名(36.8%),年代は40代が70名(34.5%)と最も多く,所属機関は訓練等給付事業所135名(65.9%),ナカポツ70名(34.1%)であった.そして,高ストレス者は22名(10.7%)であった.
職リハ従事者特有の職務ストレス尺度の比較では高ストレス者は非高ストレス者に比べ,「就労支援以外の業務負担が多い」(3.18±0.92/2.76±0.97 p=0.039),「就労に対して家族の理解が得られない」(2.68±0.78/1.98±0.81 p<0.001),「よかれと思ったサービスが対象者に理解されない」(2.82±0.96/2.37±0.75 p=0.020),「就労支援に関する事務処理が煩雑である」(3.23±0.81/2.66±0.89 p=0.006),「就労支援に有効な方法やプロセスがわからない」(2.41±0.85/2.02±0.78 p=0.034)で有意に得点が高かった.
【考察】今回,高ストレス者群において,直接支援に係る以外に事務処理や就労支援の方法プロセスの理解に関して,ストレスを感じていることが認められた.既に,人材育成システムに課題を感じる者の割合が高いこと(大川ら,2023)を踏まえると,管理者が現場の人材育成に携わる際に,事務処理に追われた結果として,自分が学ぶことや職員の育成に十分な時間が捻出できない可能性が考えられた.なお,本研究はJSPS科研費JP19K02163の助成を受けている.
就労支援機関管理者において,高ストレス者は非高ストレス者と比較し,所属機関の人材育成システムに課題を感じている割合が有意に高いことが示されている(大川ら,2023).そこで,今回,管理者に対する職務ストレスに注目した分析を行ったので報告する.なお,本研究は本学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:03018).
【方法】対象は就労移行支援,就労継続支援(A・B型),障害者就業・生活支援センター(以下,ナカポツ)を運営する就労支援機関800カ所の管理者である.ナカポツは厚労省,他はWAMNETの情報を参照に,各200ヵ所をランダムに抽出し,依頼文書と調査票を郵送した.その際,返送をもって本研究へ同意したものとみなした(調査期間:2022年2月~4月).調査票は回答者・所属機関の基本情報,職業性ストレス簡易調査票(57項目)(厚生労働省),職リハ従事者特有の職務ストレスについて4件法(全く思わない~とてもそう思う)で回答する職リハ従事者特有の職務ストレス尺度(石原ら,2011)を含めた.
分析方法は,最初に,労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚労省,2021改定)に従い,職業性ストレス簡易調査票の合計得点より高ストレス者を判断した.その後,高ストレス者群と非高ストレス者群における職務ストレスの比較をMann-WhitneyのU検定で行った(p<0.05).なお,統計解析にはSPSSver.29を用いた.
【結果】住所不明等で回答できない19 カ所を対象から除き,回収率は30.3%(242 カ所)であった.また,職業性ストレス簡易調査票の回答に欠損を認めた分を除き,分析対象は205カ所(25.3%)の管理者となった.回答者の属性は男性134名(60.8%),女性75名(36.8%),年代は40代が70名(34.5%)と最も多く,所属機関は訓練等給付事業所135名(65.9%),ナカポツ70名(34.1%)であった.そして,高ストレス者は22名(10.7%)であった.
職リハ従事者特有の職務ストレス尺度の比較では高ストレス者は非高ストレス者に比べ,「就労支援以外の業務負担が多い」(3.18±0.92/2.76±0.97 p=0.039),「就労に対して家族の理解が得られない」(2.68±0.78/1.98±0.81 p<0.001),「よかれと思ったサービスが対象者に理解されない」(2.82±0.96/2.37±0.75 p=0.020),「就労支援に関する事務処理が煩雑である」(3.23±0.81/2.66±0.89 p=0.006),「就労支援に有効な方法やプロセスがわからない」(2.41±0.85/2.02±0.78 p=0.034)で有意に得点が高かった.
【考察】今回,高ストレス者群において,直接支援に係る以外に事務処理や就労支援の方法プロセスの理解に関して,ストレスを感じていることが認められた.既に,人材育成システムに課題を感じる者の割合が高いこと(大川ら,2023)を踏まえると,管理者が現場の人材育成に携わる際に,事務処理に追われた結果として,自分が学ぶことや職員の育成に十分な時間が捻出できない可能性が考えられた.なお,本研究はJSPS科研費JP19K02163の助成を受けている.