[PQ-4-3] 精神科医療機関における多職種協働による一般就労支援チームの構築
【はじめに】
近年,法定雇用率上昇,短時間就労,雇用と福祉の連携強化など制度設計がなされ,精神障害者の一般就労への機運は高まっている.しかし,1年定着率は49.3%で半数が1年未満で離職しており,離職理由や雇用継続困難要因のアンケートを概観すると病気や障害の不安定さ(疾病性)が主な理由である.精神科医療機関(以下;病院)からの病気や障害に関する情報提供は就労定着に寄与すると思われるが,ハローワーク(以下;HW)と病院の連携は全体の3.6%と少ない.そこで筆者らは,一般就労の希望がある精神障害者(以下;対象者)に対する就労支援チームを構築するためのワーキンググループを立ち上げ,アセスメントや介入について検討を重ね,就労支援を行っている.本報告の目的は,就労支援チームの介入事例を提示し,今後の課題を検討することである. なお,報告に際し,事例の同意と当院倫理審査委員会の承諾を得ている.
【構築にあたり】
作業療法士(以下;OT)が就労支援に関わることは精神障害者のQOL向上に資する上でも重要な機会であるが,当院ではデイケアや福祉就労系サービスの利用に消極的な対象者にOTが関与するシステムがなかった為,普段の病棟業務と兼務しつつも対象者に就労支援を展開できるチームの作成を考えた.
【チームの機能と役割】
構成職種は看護師,精神保健福祉士(MHSW),公認心理師(CPP),OTである.医師や他職種からの紹介に基づきアセスメント(対象者の仕事に対する価値観やモチベーションの共有,就労パスポート(以下;就パス)の作成,客観的な能力評価など)し,それらで得られた情報をカンファレンスで共有し方向性を検討する.本人の同意のもと,介入や他機関との連携を行う.
【事例】
A氏,30代女性,精神病症状を伴わない重症うつエピソード.事務の仕事をしていたが,業務過多から自殺企図し,入院.薬物療法にて症状改善し退院するも,1年ほど引きこもりがちな生活を送る.診察後にCPPのカウンセリングで「そろそろ仕事探しをしたいがHWに行くのはハードルが高い.」と話したことをきっかけに,当チームに紹介があった.初回面接時に聞き取りを主体としたアセスメントを実施(OT).その後OTで就パスの作成,CPPはWAIS-Ⅳの評価とFB,MHSWはHWとの連絡調整を行った.その後チームスタッフがHWの出張相談へ同席.精神障害者雇用トータルサポーターにA氏から意向や長所・短所などを伝え,顔の見える関係となった.以降は自らHWへ行くことができ,障害者職業センターの職業準備訓練を受けるに至った.
【事例からの考察】
今回の事例は,うつ症状は改善し退院したが社会参加に繋がっていなかった例である.当院内で就労支援について検討する窓口ができたことで紹介につながり,アセスメントを経ることで本人のペースに合わせた社会復帰への足掛かりとなった.このように,退院後サービス利用や社会参加には至らず,医療にのみ繋がっている例は少なからず存在すると思われる.社会参加への一歩を踏み出すための支援が有効であったと思われた.
【課題および今後の展望】
事例では当院よりHWに繋げた例であったが,タイムリーな情報共有までには発展できず,訓練の様子は都度確認が必要であった.制度の狭間にいる者を対象とした支援のため,チームとしてのアイデンティティを確立し,支援機関とさらに情報共有をする必要がある.今後,就労中の者に対する相談支援や認知リハなどの短期的なプログラムの展開も就労継続支援として効果的であると考えられる.
近年,法定雇用率上昇,短時間就労,雇用と福祉の連携強化など制度設計がなされ,精神障害者の一般就労への機運は高まっている.しかし,1年定着率は49.3%で半数が1年未満で離職しており,離職理由や雇用継続困難要因のアンケートを概観すると病気や障害の不安定さ(疾病性)が主な理由である.精神科医療機関(以下;病院)からの病気や障害に関する情報提供は就労定着に寄与すると思われるが,ハローワーク(以下;HW)と病院の連携は全体の3.6%と少ない.そこで筆者らは,一般就労の希望がある精神障害者(以下;対象者)に対する就労支援チームを構築するためのワーキンググループを立ち上げ,アセスメントや介入について検討を重ね,就労支援を行っている.本報告の目的は,就労支援チームの介入事例を提示し,今後の課題を検討することである. なお,報告に際し,事例の同意と当院倫理審査委員会の承諾を得ている.
【構築にあたり】
作業療法士(以下;OT)が就労支援に関わることは精神障害者のQOL向上に資する上でも重要な機会であるが,当院ではデイケアや福祉就労系サービスの利用に消極的な対象者にOTが関与するシステムがなかった為,普段の病棟業務と兼務しつつも対象者に就労支援を展開できるチームの作成を考えた.
【チームの機能と役割】
構成職種は看護師,精神保健福祉士(MHSW),公認心理師(CPP),OTである.医師や他職種からの紹介に基づきアセスメント(対象者の仕事に対する価値観やモチベーションの共有,就労パスポート(以下;就パス)の作成,客観的な能力評価など)し,それらで得られた情報をカンファレンスで共有し方向性を検討する.本人の同意のもと,介入や他機関との連携を行う.
【事例】
A氏,30代女性,精神病症状を伴わない重症うつエピソード.事務の仕事をしていたが,業務過多から自殺企図し,入院.薬物療法にて症状改善し退院するも,1年ほど引きこもりがちな生活を送る.診察後にCPPのカウンセリングで「そろそろ仕事探しをしたいがHWに行くのはハードルが高い.」と話したことをきっかけに,当チームに紹介があった.初回面接時に聞き取りを主体としたアセスメントを実施(OT).その後OTで就パスの作成,CPPはWAIS-Ⅳの評価とFB,MHSWはHWとの連絡調整を行った.その後チームスタッフがHWの出張相談へ同席.精神障害者雇用トータルサポーターにA氏から意向や長所・短所などを伝え,顔の見える関係となった.以降は自らHWへ行くことができ,障害者職業センターの職業準備訓練を受けるに至った.
【事例からの考察】
今回の事例は,うつ症状は改善し退院したが社会参加に繋がっていなかった例である.当院内で就労支援について検討する窓口ができたことで紹介につながり,アセスメントを経ることで本人のペースに合わせた社会復帰への足掛かりとなった.このように,退院後サービス利用や社会参加には至らず,医療にのみ繋がっている例は少なからず存在すると思われる.社会参加への一歩を踏み出すための支援が有効であったと思われた.
【課題および今後の展望】
事例では当院よりHWに繋げた例であったが,タイムリーな情報共有までには発展できず,訓練の様子は都度確認が必要であった.制度の狭間にいる者を対象とした支援のため,チームとしてのアイデンティティを確立し,支援機関とさらに情報共有をする必要がある.今後,就労中の者に対する相談支援や認知リハなどの短期的なプログラムの展開も就労継続支援として効果的であると考えられる.