[PQ-5-2] 多職種と連携して行うリンパ浮腫治療について
【序論】各種癌の術後に発生する可能性のあるリンパ浮腫について施設毎に色々な方法で指導・治療が行われている.しかし,リンパ浮腫に関わる各職種スタッフは決して多くないのが現状である.今回,がん専門看護師の相談がきっかけで乳癌術後の上肢リンパ浮腫に対する援助を乳腺外科医・外来部門・病棟・リハビリテーション(以下リハ)科で合議し,乳腺外科外来からリハ科にコンサルテーションする流れおよび治療のプロトコルを作成したためこれを紹介する.
【目的】当院における多職種連携によるリンパ浮腫治療の流れとプロトコルを提示する事.
【方法】今回,検討のきっかけとなったがん専門看護師を中心とした多職種連携の内容及びプロトコルについて紹介する.
【結果】当院では令和4年度71件の乳房の悪性腫瘍関連疾患の手術が行われている.患者の平均年齢は65.08歳,平均在院日数は11.27日で全国平均より1.28日長い.当院は立地状況的に比較的対象患者の年齢が高く,乳癌手術目的での入院期間中のリハは理学療法がメインの廃用予防目的であり,歩行可能な症例でのリハ科へのコンサルテーションは行われていなかった.またリンパ浮腫に関するコンサルテーションが行われることは稀であった.がん専門看護師の面談よると,年間10~20件程度リンパ浮腫疑い患者を認めている.従来は術後の上肢機能訓練・リンパ浮腫指導については病棟看護師が,外来移行後に浮腫が生じた場合は,外来看護師の各部門が作成したパンフレットでリンパ浮腫指導が行われており,内容が統一されていなかった.また入院・外来のいずれもアームスリーブの装着については乳腺外科医師の指示で看護師が採寸し,購入・指導が行われていた.病棟および外来看護師は,リンパ浮腫を呈している患者の指導について,十分な知識がないという不安の中での指導・採寸に不安を感じており対応に苦慮していた.一方,患者もスリーブの装着を勧められるのみで,何をどうしたらよいのか,これからどうなるのかという不安をがん専門看護師との面談時に訴えていた.今回,病棟・外来・リハの3領域に関与しているがん専門看護師の声掛けにより乳腺外科,外来,病棟,リハ科が連携に至った.プロトコルでは,パンフレットを用いた指導は従来通り看護師が行うが,リンパ節廓清を行った症例(センチネルリンパ節生検も含む)については入院中より作業療法部門が介入することとなった.またパンフレットについても病棟・外来・リハ科で検討し,改編・共有を目指すこととなった.合議後,外来加療中の2症例のコンサルテーションがあり,外来にて作業療法部門でのリンパ浮腫治療を開始している.現在,知識の向上・共有のために定期的な勉強会開催の準備中である.
【考察】石井ら(2021)よると2018年9月時点で国立がんセンターがん情報サービスにリンパ浮腫外来を実施していると登録されているのは198施設である.その中でもリンパ浮腫治療に携わるスタッフが1~4人の施設が約75%であり,十分に人員がいるとは言えない状況である.その中で,部署間・部門間の連携不足が問題点として挙げられている.また,奥ら(2017)の知識や関心度に個人差や職種間の差があることが多職種連携を困難にしている要因であると報告している.当院においてもリハビリ・外来・病棟の連携が少ないままリンパ浮腫に悩む患者のフォローが不十分になっていた.今後も継続的な介入および効果的な連携について検討を加えていくことが重要であると考える.
【目的】当院における多職種連携によるリンパ浮腫治療の流れとプロトコルを提示する事.
【方法】今回,検討のきっかけとなったがん専門看護師を中心とした多職種連携の内容及びプロトコルについて紹介する.
【結果】当院では令和4年度71件の乳房の悪性腫瘍関連疾患の手術が行われている.患者の平均年齢は65.08歳,平均在院日数は11.27日で全国平均より1.28日長い.当院は立地状況的に比較的対象患者の年齢が高く,乳癌手術目的での入院期間中のリハは理学療法がメインの廃用予防目的であり,歩行可能な症例でのリハ科へのコンサルテーションは行われていなかった.またリンパ浮腫に関するコンサルテーションが行われることは稀であった.がん専門看護師の面談よると,年間10~20件程度リンパ浮腫疑い患者を認めている.従来は術後の上肢機能訓練・リンパ浮腫指導については病棟看護師が,外来移行後に浮腫が生じた場合は,外来看護師の各部門が作成したパンフレットでリンパ浮腫指導が行われており,内容が統一されていなかった.また入院・外来のいずれもアームスリーブの装着については乳腺外科医師の指示で看護師が採寸し,購入・指導が行われていた.病棟および外来看護師は,リンパ浮腫を呈している患者の指導について,十分な知識がないという不安の中での指導・採寸に不安を感じており対応に苦慮していた.一方,患者もスリーブの装着を勧められるのみで,何をどうしたらよいのか,これからどうなるのかという不安をがん専門看護師との面談時に訴えていた.今回,病棟・外来・リハの3領域に関与しているがん専門看護師の声掛けにより乳腺外科,外来,病棟,リハ科が連携に至った.プロトコルでは,パンフレットを用いた指導は従来通り看護師が行うが,リンパ節廓清を行った症例(センチネルリンパ節生検も含む)については入院中より作業療法部門が介入することとなった.またパンフレットについても病棟・外来・リハ科で検討し,改編・共有を目指すこととなった.合議後,外来加療中の2症例のコンサルテーションがあり,外来にて作業療法部門でのリンパ浮腫治療を開始している.現在,知識の向上・共有のために定期的な勉強会開催の準備中である.
【考察】石井ら(2021)よると2018年9月時点で国立がんセンターがん情報サービスにリンパ浮腫外来を実施していると登録されているのは198施設である.その中でもリンパ浮腫治療に携わるスタッフが1~4人の施設が約75%であり,十分に人員がいるとは言えない状況である.その中で,部署間・部門間の連携不足が問題点として挙げられている.また,奥ら(2017)の知識や関心度に個人差や職種間の差があることが多職種連携を困難にしている要因であると報告している.当院においてもリハビリ・外来・病棟の連携が少ないままリンパ浮腫に悩む患者のフォローが不十分になっていた.今後も継続的な介入および効果的な連携について検討を加えていくことが重要であると考える.