第58回日本作業療法学会

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管理運営

[PQ-5] ポスター:管理運営 5

2024年11月10日(日) 09:30 〜 10:30 ポスター会場 (大ホール)

[PQ-5-3] 地域における専門職種連携の実態調査:支援場面毎の連携に着目して

久保田 智洋1, 岩本 記一1, 加々井 杏莉沙2, 中村 茂美1, 岩井 浩一3 (1.アール医療専門職大学 作業療法学科, 2.アール医療福祉専門学校, 3.茨城県立医療大学)

【序論】厚生労働省は,地域共生社会の実現の重要性を強調し,福祉関係者のネットワーク強化を挙げている.最近では,チームビルディングが注目されており,地域生活の支援でも連携が有効と考えられている.地域支援では,作業療法士を含めた専門職種の連携が欠かせない.しかし,地域連携においては,どのような点が課題になっているのか不明である.
【目的】本研究の目的は,地域支援のためのチームビルディングに向けて,多職種連携の際の実態を把握することである.今後,地域で専門職がチームビルディングを構築するための課題を明らかにすることである.
【方法】対象者は,A県B市の事業所に所属する介護支援専門員を対象とした.調査項目は,基本属性として年齢,性別,介護支援専門員の実務経験,保有する資格とした.自記式アンケート調査項目は,「No1.自ら連携を取る頻度」「No2.対象者に関する困難時に連絡しようと思う人」「No3.専門職から連絡を受ける頻度」「No4.関連職種が集まる頻度」「No5.普段交流のない職種と関わる機会」「No6.多職種と課題等について話し合う機会」「No7.多職種で話し合える雰囲気」「No8.対象者について困った際,職種の誰に聞けばいいのか迷う頻度」「No9.対象者について困った際,相談できる機会(場)」とした.この質問に対し「1点.たくさんある(いる)~4点.ほんどない(いない)」の4段階で配点した.この点数が高い程,連携頻度が少ないことを意味する.そして,「退院時」「入院時」「在宅生活」の3つの場面に分けて聴取した.統計解析には,SPSS.ver25を用いた.なお,本研究は本人の同意および倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】対象者29名(男性:4名,女性:25名)の平均年齢は,52.7±8.4歳(男性:45.5±2.8歳,女性:53.8±8.3歳)であった.実務経験は,平均年齢12.5±6.0年であった.介護支援専門員以外の保有資格は,介護福祉士21名,社会福祉士2名,看護師2名, 准看護師2名,介護福祉士と社会福祉士1名,介護福祉士と手話通訳士1名であった. 各質問における中央値は(退院時/入院時/在宅生活)の順に「No1.自ら連携を取る頻度(3.0/3.0/3.0)」「No2.対象者に関する困難時に連絡しようと思う人(3.0/3.0/3.0)」「No3.専門職から連絡を受ける頻度(3.0/3.0/3.0)」「No4.関連職種が集まる頻度(3.0/2.0/3.0)」「No5.普段交流のない職種と関わる機会(2.0/2.0/2.5)」「No6.多職種と課題等について話し合う機会(2.0/2.0/2.0)」「No7.多職種で話し合える雰囲気(3.0/2.5/3.0)」「No8.対象者について困った際,職種の誰に気聞けばいいのか迷う頻度(2.0/2.5/2.0)」「No9. 対象者について困った際,相談できる機会(場)(3.0/3.0/3.0)」であった.また,全9項目の合計点の中央値は,(23.0/23.0/24.5)であり,在宅生活の支援の場面で連携の機会が少ないと回答していた.
次に,実務経験年数と連携頻度を検討するために, スピアマンの順位相関係数を用いて検討をした.その結果,実務経験年数と在宅生活から入院時において有意に中等度の正の相関を認めた(r=0.51,p=0.005).つまり,実務経験年数がある程,入院時の連携頻度が少ない現状を認識していた.
【考察】本研究では,多職種連携に関する調査を行い「退院時」「入院時」「在宅生活」の連携で差があることが分かった.また,実務経験年数とともに入院時の連携でその頻度が少ない現状を認識していた.この点が,今後の在宅生活を支援する際の専門職種連携の課題である.今後は,保有する資格によって,連携に関する要因に影響がないのかを検討する必要がある.本研究の限界は,1つの医療過疎地域の介護支援専門員を対象にした調査であるため,複数の地域で比較検討をする必要がある.