第58回日本作業療法学会

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ポスター

管理運営

[PQ-6] ポスター:管理運営 6

Sun. Nov 10, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PQ-6-2] 自分たちが受けたい医療・介護を目指して

リハ訪問の中止・終了者減少に向けての取り組み

櫻井 優, 中本 千瑛, 石田 里沙 (訪問看護リハビリステーション癒々)

【目的】 弊社訪問看護事業において,理学療法士等による訪問(以下;リハ訪問)の全利用者のうち,平均約5%で中止・終了者が存在する.安定した事業継続の観点だけでなく,地域高齢者の公衆衛生・将来的な社会保障費軽減の観点からも,中止・終了の減少は社会的意義があると思われる.
本発表はリハ訪問終了者減少への取り組み結果を振り返ることで,リハ訪問サービスの課題・質の向上のための一助を得ることを目的に実施した.
なお本発表に際し,弊社管理委員会にて同意を得た.また開示すべきCOI企業はない.
【方法】 2023年4月~6月の3か月間のリハ訪問利用者の実人数総数は533名であった.そのうち中止・終了となった35名の,①基本属性(性別),②終了理由(永眠,入院・入所,利用者都合,会社都合の4つに分別),③開始から終了までの利用期間,の分析を行った.
【結果】 ①基本属性は,男性37%(14名),女性63%(21名)であった.②終了理由は,状態悪化や疼痛増強,都合や通所移行による利用者都合が最多49%(17名)を占めていた.次いで入院・入所が23%(8名),永眠と会社都合による終了がそれぞれ14%(5名)であった.③開始から終了までの利用期間は,開始6か月以内の終了者は6名いた.
【取り組み】 上記の結果にて,担当者のHopeの聞き取りや目標共有不足,コミュニケーション面の課題が抽出されたため,2023年7月から以下3つの取り組みを実施した.
①管理者・リーダーでの介入開始6か月以内の利用者宅モニタリング訪問(7~9月:47件),②終了利用者の担当者との面談の強化,③スタッフ作成の“信頼関係のコツ”YouTube動画を社内公開(7~9月8本,計26本),を実施した.
【最終結果】 2023年10月~12月の3か月間,中止・終了者は37名となった.①男性38%(14名),女性62%(23名)と性差に変化はなかった.②初期に終了理由として最も多かった利用者都合の終了は,40%(15名)と割合は減少した.次いで入院・入所が38%(14名),永眠が22%(8名)であった.③開始から終了までの利用期間は,6か月以内の終了者は,2名に留まった.
【考察】 利用者の終了理由として,永眠や入院・入所など,一定の付加効力による終了は存在した.利用者都合による理由(状態悪化・疼痛増強,自己都合)が割合として最も多かった.利用者の自己都合の中には,担当者のHopeの聞き取りや目標共有不足,コミュニケーション面の不満があり,終了に繋がったケースもあった.特に開始から6か月以内に終了となった利用者においては,リハ効果だけでなく,目標共有の不十分さなどの理由があった.施術力はもちろんだが,目標を合意形成するためのコミュニケーション能力も利用者に希求されており,非常に重要な能力だと考えられる.取り組み後の3か月間の中止・終了者数はさほど変わらなかったが,利用者都合による終了の割合は減少した.今回,コミュニケーション面の動画教育をするとともに,管理者・リーダーによる利用者宅へのモニタリング訪問をすることで,担当者以外も含めたHopeの聞き取りや目標共有が有効だったのではないかと考えられる.
【まとめ】 リハ訪問終了の理由として,治療手技や施術面は元より,挨拶や接遇・コミュニケーション面など基本的能力への要望の比重も大きかった.リハビリスタッフとしての専門的な臨床能力を向上するだけでは,終了者減少の本質的な解決には不十分であると感じた.
今回は短期的な経過であったが,中長期的な経過を追う必要がある.また今後,“自分たちが受けたい医療・介護を当たり前に”提供できるために,新たに導入した社員教育の効果判定も検証していきたい.