[PQ-6-4] 院内レンタルシステム等を用いた福祉用具貸与事業所との連携
【序論】入院患者が使用する福祉用具については,病院が自費で購入したものを患者に貸与しているのが一般的である.しかし,当院では所有する福祉用具がごく限られ,患者に適合したものを必要な時期に貸与ができない状況であった.また,患者の生活環境を把握するための家屋調査には時間や手間がかかる.そのため入院後早期の家屋調査がほぼ実施できていなかった.
今回,福祉用具貸与事業所(以下,事業所)と連携し,入院中に使用する福祉用具を病院が有償でレンタルする仕組み(以下,院内レンタル)を導入した.加えて事業所スタッフによるリモートでの家屋調査(以下,リモート家屋調査)の導入,事業所との連携研修会の開催を行った.これにより患者・業者・病院それぞれに利点があったため,取組みの紹介に今後の展望を加えて報告する.
【目的】事業所と院内レンタル等での連携を通して,各患者へ個別性の高い支援を実施する.
【方法】①院内レンタル:一定数の普通型車いすや馬蹄型歩行車は購入して貸出し,それとは別に患者個々に適合性の高い福祉用具を必要とするケースに対してレンタルする,ハイブリット方式を採用した.また,サブスクリプションによるコスト運用を行うことで,リハビリテーション部の裁量でレンタルを依頼できるようにした.
②リモート家屋調査:事業所スタッフが患者宅へ赴き,ビデオ会議アプリを用いて院内のセラピストと繋がり,生活環境を調査する取り組みを行った.後日,事業所からの画像を含むレポートを受け取り,カルテ等に反映させた.
③事業所との連携研修:福祉用具の紹介や取扱い,シーティング,リモート家屋調査の院内でのロールプレイング等を,事業所からセラピスト向けに行った.
なお,上記取り組みについて当院の倫理審査を経て調査を実施した.
【結果】2022年10月~2024年1月までの入院患者888名に対して,院内レンタルの利用件数は151件であった.うち,途中で福祉用具を交換するなどして複数のレンタルを行ったのが17件であった.また,貸出しが多かったのが歩行補助具で74件,次いで車椅子の45件であった.
①患者の利点:適宜適合性の高い福祉用具を使用することができた.また,退院後の生活環境に近い形での入院生活を送ることができた.
②事業所の利点:サブスクリプションによる定額収益を得られる.退院後の支援継続の機会が増加した.
③病院の利点:福祉用具のメンテナンスにかかる負担が軽減された.また,リモート家屋調査により早期に情報収集が行う機会が増えた.患者宅への往復に要す時間や報告書作成の手間を省くことができ,業務の効率化に繋がった.
【考察】今回集計した期間中に院内レンタルを利用した患者は全体の約17%と少なく見える.しかし,院内レンタルでなく病院が購入したものを貸し出した場合,その割合はさらに小さくなり,適合性の高い福祉用具を利用したケースはもっと少なくなっていたと考える.今回の取り組みによりこれまでより多くの患者に対し,ニーズに応じた個別性の高い支援が行えたと考える.
コスト面ではサブスクリプションでの運用が行えていることで,短期的には低コストで福祉用具の利用が行えている.しかし中長期的にみると,レンタルと購入でコストが逆転することも想定される.今後も院内レンタルシステム等,業者との連携を継続するために,費用対効果についてアウトカムを用いて分析する必要がある.継続した評価,報告を行いたい.
今回,福祉用具貸与事業所(以下,事業所)と連携し,入院中に使用する福祉用具を病院が有償でレンタルする仕組み(以下,院内レンタル)を導入した.加えて事業所スタッフによるリモートでの家屋調査(以下,リモート家屋調査)の導入,事業所との連携研修会の開催を行った.これにより患者・業者・病院それぞれに利点があったため,取組みの紹介に今後の展望を加えて報告する.
【目的】事業所と院内レンタル等での連携を通して,各患者へ個別性の高い支援を実施する.
【方法】①院内レンタル:一定数の普通型車いすや馬蹄型歩行車は購入して貸出し,それとは別に患者個々に適合性の高い福祉用具を必要とするケースに対してレンタルする,ハイブリット方式を採用した.また,サブスクリプションによるコスト運用を行うことで,リハビリテーション部の裁量でレンタルを依頼できるようにした.
②リモート家屋調査:事業所スタッフが患者宅へ赴き,ビデオ会議アプリを用いて院内のセラピストと繋がり,生活環境を調査する取り組みを行った.後日,事業所からの画像を含むレポートを受け取り,カルテ等に反映させた.
③事業所との連携研修:福祉用具の紹介や取扱い,シーティング,リモート家屋調査の院内でのロールプレイング等を,事業所からセラピスト向けに行った.
なお,上記取り組みについて当院の倫理審査を経て調査を実施した.
【結果】2022年10月~2024年1月までの入院患者888名に対して,院内レンタルの利用件数は151件であった.うち,途中で福祉用具を交換するなどして複数のレンタルを行ったのが17件であった.また,貸出しが多かったのが歩行補助具で74件,次いで車椅子の45件であった.
①患者の利点:適宜適合性の高い福祉用具を使用することができた.また,退院後の生活環境に近い形での入院生活を送ることができた.
②事業所の利点:サブスクリプションによる定額収益を得られる.退院後の支援継続の機会が増加した.
③病院の利点:福祉用具のメンテナンスにかかる負担が軽減された.また,リモート家屋調査により早期に情報収集が行う機会が増えた.患者宅への往復に要す時間や報告書作成の手間を省くことができ,業務の効率化に繋がった.
【考察】今回集計した期間中に院内レンタルを利用した患者は全体の約17%と少なく見える.しかし,院内レンタルでなく病院が購入したものを貸し出した場合,その割合はさらに小さくなり,適合性の高い福祉用具を利用したケースはもっと少なくなっていたと考える.今回の取り組みによりこれまでより多くの患者に対し,ニーズに応じた個別性の高い支援が行えたと考える.
コスト面ではサブスクリプションでの運用が行えていることで,短期的には低コストで福祉用具の利用が行えている.しかし中長期的にみると,レンタルと購入でコストが逆転することも想定される.今後も院内レンタルシステム等,業者との連携を継続するために,費用対効果についてアウトカムを用いて分析する必要がある.継続した評価,報告を行いたい.