第58回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-1] ポスター:教育 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PR-1-1] エビデンスに基づく実践自己評価尺度EBPSAの再検査信頼性に関する検討

増田 雄亮1, 廣瀬 卓哉2, 八重田 淳3, 丸山 祥2, 會田 玉美4 (1.湘南医療大学 保健医療学部リハビリテーション学科, 2.湘南慶育病院 リハビリテーション部, 3.筑波大学大学院 人間総合科学学術院, 4.目白大学大学院 リハビリテーション学研究科)

【序論】
 アジア圏の作業療法分野においてEvidence-Based Practice(以下,EBP)は概念としての普及に留まっており,EBPを促進する方策に関する実証的な研究は,未だに乏しい現状である.そこでわれわれは先行研究において,疫学的な調査を可能にするためのEBP自己評価尺度(以下,EBPSA)を開発した.EBPSAは,高い内的整合性と構造的妥当性が確認されている(増田ら,2023).しかし,再検査信頼性の検討は行われていない.
【目的】
 本研究は,EBPSAの再検査信頼性を検討することを目的とした
【方法】
 EBPSAは,職場環境5項目,内発的動機3項目,自己効力感3項目,結果予期3項目の4因子14項目で構成され,各質問に対して7段階尺度(1. 全くそう思わない~7. とてもそう思う)で回答する自己評価尺度である.本研究は,A病院の回復期リハビリテーション病棟に勤務している作業療法士31名を対象として,3週間の期間を設けてEBPSAへの回答を2回依頼した(2023年7月~8月).再検査信頼性の指標としては,Spearmanの順位相関係数rと級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficients (1,2):以下,ICC)を採用した.統計解析は,Python 3.11.5およびIBM SPSS 26.0J for Windowsを使用し,有意水準は5%未満とした.なお,本研究は,T大学人間系研究倫理委員会東京地区委員会の承認(第東2019-76号)およびS大学研究倫理委員会の承認(第23-009号)を得ている.
【結果】
 31名全員から回答が得られた.職場環境尺度は,r=.67 (95%CI=.41–.83, p<.001),ICC=.86 (95%CI=.70–.93, p<.001),内発的動機尺度は,r=.66 (95%CI=.40–.82, p<.001),ICC=.76(95%CI=.50–.88, p<.001),自己効力感尺度は,r=.76(95%CI=.56–.88, p<.001),ICC=.88(.75–.94, p<.001),結果予期尺度は,r=.60(95%CI=.31–.79, p<.001),ICC=.70(95%CI=.39–.86, p=.001),EBPSA全体では,r=.74(95%CI=.52–.87, p<.001),ICC=.86(.70–.93, p<.001)であった.
【考察】
 小塩(2016)は,心理尺度構成における再検査信頼性係数について,メタアナリシスを実施している.これによれば,Spearmanの順位相関係数rを実測値として,母相関係数の推定値ρを算出した結果,項目数が5項目未満の尺度では,ρ=.70(95%CI=.59–81),5~9項目ではρ=.72(95%CI=67–78),10項目以上ではρ=.83(95%CI=.69–.97)であったと報告されている.本研究におけるr値はいずれもρ値の95%CIに含まれていることから,許容範囲の相関係数を示したものと考えられる.また,Landis JR & Koch GG(1977),Portney LG & Watkins MP(1993)は,ICCについては.70以上が良好な値であると報告している.本研究では,いずれの尺度についてもICCは.70以上であることから,良好な尺度特性を有しているものと考えられる.本研究により,EBPSAの再検査信頼性が示された.今後は,EBPを促進するための卒前・卒後教育や職場環境整備が課題であり,EBPSAはこれらの効果判定を行うために有用なアウトカムとなる可能性が示唆される.