[PR-1-3] 作業療法で用いられる理論や実践手法に関する養成教育と卒後の作業を基盤とした実践との関連性
【序論】作業を基盤とした実践(以下,OBP)とは,クライエントの大切な作業を実際に行うことによって評価し,介入する方法の総称である(Fisher,2013).わが国では,脳卒中患者を対象としたランダム化比較研究によって,OBPの効果が報告されている(長山,2017).OBPの理論である人間作業モデル(以下,MOHO)や作業療法介入プロセスモデル(以下,OTIPM) などは,作業療法(以下,OT)独自の理論や実践手法(以下,OT独自の理論等)であり,佐々木ら(2024)は,OBPの知識の程度がその実践に影響を与えることを報告している.したがって,OBPを行うためにはOT独自の理論等に関する教育を行う必要があるが,その重要性を明らかにした研究はほとんどない.
【目的】OTで用いられる理論と実践手法に関する養成教育と卒後のOT実践経験との関連性について明らかにする.
【方法】対象は,養成校の教員と臨床経験が1~3年目の卒業生で,実践領域は,わが国のOTの主要領域である身体障害領域,および高齢者領域とした.なお,本研究は倫理審査委員会の承認を得た.理論と実践手法は,Stevensの理論の分類における広範囲理論,または中範囲理論に含まれるものとし,発表者らの先行研究に基づく9つの理論や実践手法を選定した.そのうち,MOHO,作業遂行と結びつきのカナダモデル,OTIPM,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)をOT独自の理論等とし,川平法(または促通反復療法),Constraint-Induced Movement Therapy,ボバース概念,認知神経リハビリテーション,認知行動療法(以下,CBT)は他領域でも用いられる実践手法(以下,共通実践手法)として分類した.教育内容の調査では,教員に対し,9つの理論や実践手法の教育内容について「教えていない」「概念(構成要素)のみ」「評価方法まで」「実践的な適用方法」の中より回答を求めた.理論や実践手法を用いたOT実践経験では,卒業生に対し,それぞれを「ある」「少しある」「ない」で回答を求めた.教育内容の調査結果は,OT独自の理論等と共通実践手法に分けて中央値を比較して群分し,群間比較やカテゴリカル相関分析を実施した.統計解析には,R version 4.3.2を使用した.
【結果】14校の教員とその卒業生207名(男性81名,女性126名,平均年齢24.7±4.1歳)より回答が得られた.養成校での教育内容について,実践的な適用方法まで教えているのは,最も多い順からMTDLP,CBTが8校(57.1%),次いでMOHOが6 校(42.8%)であった.また,理論や実践手法を用いたOT実践経験は,MTDLPで「ある」が38名(18.1%),「少しある」が43名(20.8%),ボバース概念で「ある」が31名(15.0%),「少しある」が50名(24.2%)と他より多い結果となった.教育内容の調査結果より,MOHOなどのOT独自の理論等を重視している養成校7校(50.0%),共通実践手法を重視している養成校4校(28.5%),どちらも同等の養成校が3校(21.4%)であった.これら3群で多重比較を行った結果,OT独自の理論等を重視している養成校の卒業生は,他の2群に比べOT独自の理論等の実践経験が有意(p=.009~.036)に高く,小程度の効果量(ES=.048~.032)があった.
【考察】OT独自の理論等を重視している養成校の卒業生は,OT独自の理論等の実践をする経験が多いことについて,梅津(2010)らは,新人の作業療法士(以下,OTR)は全体論であるMOHOを用いることで効果的なOTを展開できる可能性を報告している.そのため,養成校におけるOT独自の理論等の教育を実践的な適用方法まで教育することで,若手のOTRが卒後にOBPを展開できるという関連性が示唆される.
【目的】OTで用いられる理論と実践手法に関する養成教育と卒後のOT実践経験との関連性について明らかにする.
【方法】対象は,養成校の教員と臨床経験が1~3年目の卒業生で,実践領域は,わが国のOTの主要領域である身体障害領域,および高齢者領域とした.なお,本研究は倫理審査委員会の承認を得た.理論と実践手法は,Stevensの理論の分類における広範囲理論,または中範囲理論に含まれるものとし,発表者らの先行研究に基づく9つの理論や実践手法を選定した.そのうち,MOHO,作業遂行と結びつきのカナダモデル,OTIPM,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)をOT独自の理論等とし,川平法(または促通反復療法),Constraint-Induced Movement Therapy,ボバース概念,認知神経リハビリテーション,認知行動療法(以下,CBT)は他領域でも用いられる実践手法(以下,共通実践手法)として分類した.教育内容の調査では,教員に対し,9つの理論や実践手法の教育内容について「教えていない」「概念(構成要素)のみ」「評価方法まで」「実践的な適用方法」の中より回答を求めた.理論や実践手法を用いたOT実践経験では,卒業生に対し,それぞれを「ある」「少しある」「ない」で回答を求めた.教育内容の調査結果は,OT独自の理論等と共通実践手法に分けて中央値を比較して群分し,群間比較やカテゴリカル相関分析を実施した.統計解析には,R version 4.3.2を使用した.
【結果】14校の教員とその卒業生207名(男性81名,女性126名,平均年齢24.7±4.1歳)より回答が得られた.養成校での教育内容について,実践的な適用方法まで教えているのは,最も多い順からMTDLP,CBTが8校(57.1%),次いでMOHOが6 校(42.8%)であった.また,理論や実践手法を用いたOT実践経験は,MTDLPで「ある」が38名(18.1%),「少しある」が43名(20.8%),ボバース概念で「ある」が31名(15.0%),「少しある」が50名(24.2%)と他より多い結果となった.教育内容の調査結果より,MOHOなどのOT独自の理論等を重視している養成校7校(50.0%),共通実践手法を重視している養成校4校(28.5%),どちらも同等の養成校が3校(21.4%)であった.これら3群で多重比較を行った結果,OT独自の理論等を重視している養成校の卒業生は,他の2群に比べOT独自の理論等の実践経験が有意(p=.009~.036)に高く,小程度の効果量(ES=.048~.032)があった.
【考察】OT独自の理論等を重視している養成校の卒業生は,OT独自の理論等の実践をする経験が多いことについて,梅津(2010)らは,新人の作業療法士(以下,OTR)は全体論であるMOHOを用いることで効果的なOTを展開できる可能性を報告している.そのため,養成校におけるOT独自の理論等の教育を実践的な適用方法まで教育することで,若手のOTRが卒後にOBPを展開できるという関連性が示唆される.