[PR-1-4] 臨床実習における臨床実習指導者と学生の双方に対してクリニカルリーズニングの視点を用いた作業療法教育の実践報告
【はじめに】今回,作業療法のクリニカルリーズニングの自己評価尺度(以下:SA-CROT)を用い,臨床実習指導者(以下:CE)と作業療法士学生(以下:OTS)に共通した学習目標を整理した.その上で,CEにはクリニカルリーズニング(以下:CR)の指導に関する教育を行い,OTSには,CEと共にCRを考慮した臨床実習指導を行った.その結果,双方のCRの自己評価に変化があったため報告する.報告にあたり,対象者から同意を得ている.
【対象者】OTSは大学3年生の20歳代前半の男性, CEは20歳代後半の女性の作業療法士(臨床経験5年)であった.今回は,CEの補佐として9年目作業療法士(以下:OTR)がCEへの教育を行った.
【方法】今回の実習は臨床実習Ⅱで,回復期リハビリテーション病院での3週間のクリニカルクラークシップであった.本実習は,対象者の課題の整理,目標設定からプログラム立案などの評価能力の学習を目的としている. 養成校の課題は,デイリーノートと担当事例の治療計画立案までのレジュメ作成である.OTSの臨床実習の内訳は,6時間の臨床見学,1時間のレポート作成,1時間のOTSとの意見交換であった.本報告では,SA-CROTを用いて,OTSとCEのCRの自己評価が低い課題を特定した.その上で,CEには資料を用いてOTRと課題の整理をした.その後,OTSに対して意見交換を行い臨床実習の疑問に応じた課題解決を支援した.
CEとOTSで学習目標を整理するために,SA-CROTを用いた.得点は,CE:45/70点であり,自己評価の発言は「OTSに分かりやすく自分の思考を伝えられるかが不安,根拠に基づいて評価や治療選択の説明ができるか不安」などが挙がった.OTS:24/70点であり,自己評価の発言は「OTRの人たちがどのように作業を考えているか分からない,対象者に合わせて作業をどう利用すればいいか分からない」などが挙がった.SA-CROTで共有する中で明らかになった共通した課題は「科学的リーズニング」に含まれる「対象者の状態に関する変化の予測(以下:項目4)であり,CE :2点,OTS:1点であった.
【教育内容】今回の教育は,双方の課題であるSA-CROT項目4を中心にCEやOTSの教育の工夫をした. CEに対しては,作業中心のEBPにおけるコンピテンシー(廣瀬ら/2022)を参考に,様々なエビデンスを実践に統合するために,作業に関連した疑問の特定,作業の課題を捉えるための評価の選定や解釈に関する知識を共有した.CEとOTSの双方に対しては,尺度を活用した新人教育における学習者と教育者の経験分析(丸山ら/2022)を参考に,実習中の作業の疑問や課題の振り返り学習を意識した意見交換を行った.具体的には,養成校の課題であるデイリーノートや治療立案を考えるにあたり,対象者の今後の生活の予測を中心に双方の視点の意見を出し合った.OTRは必要に応じてCEの説明の援助を行った.
【結果】実習終了時のSA-CROTはCE:56/70点,OTS:37/70点となった.共通課題であった項目4の得点はCE:3点,OTS:2点となった.SA-CROT の実習前後の変化は,OTSはlogits3.83>SE1.08,CEはlogits2.66>SE1.02となり,双方とも実習前後における誤差範囲以上の変化を認めた. CEの自己評価の発言は「根拠をもって自分の考えを学生さんに伝えられた,教えることは自分の成長にも繋がることを感じた」.OTSの自己評価の発言は「重症例の方の生活の予測と作業提供の考え方が自分なりに考えられた」とポジティブな発言が聞かれた.
【考察】SA-CROTを用いた自己評価から明らかになった共通の課題に基づく教育は,双方のCRの自己評価の向上に繋がることが考えられる. 今後は自己評価の程度や低いCRの要因に合わせた教育方法の検討が必要と考えられる.
【対象者】OTSは大学3年生の20歳代前半の男性, CEは20歳代後半の女性の作業療法士(臨床経験5年)であった.今回は,CEの補佐として9年目作業療法士(以下:OTR)がCEへの教育を行った.
【方法】今回の実習は臨床実習Ⅱで,回復期リハビリテーション病院での3週間のクリニカルクラークシップであった.本実習は,対象者の課題の整理,目標設定からプログラム立案などの評価能力の学習を目的としている. 養成校の課題は,デイリーノートと担当事例の治療計画立案までのレジュメ作成である.OTSの臨床実習の内訳は,6時間の臨床見学,1時間のレポート作成,1時間のOTSとの意見交換であった.本報告では,SA-CROTを用いて,OTSとCEのCRの自己評価が低い課題を特定した.その上で,CEには資料を用いてOTRと課題の整理をした.その後,OTSに対して意見交換を行い臨床実習の疑問に応じた課題解決を支援した.
CEとOTSで学習目標を整理するために,SA-CROTを用いた.得点は,CE:45/70点であり,自己評価の発言は「OTSに分かりやすく自分の思考を伝えられるかが不安,根拠に基づいて評価や治療選択の説明ができるか不安」などが挙がった.OTS:24/70点であり,自己評価の発言は「OTRの人たちがどのように作業を考えているか分からない,対象者に合わせて作業をどう利用すればいいか分からない」などが挙がった.SA-CROTで共有する中で明らかになった共通した課題は「科学的リーズニング」に含まれる「対象者の状態に関する変化の予測(以下:項目4)であり,CE :2点,OTS:1点であった.
【教育内容】今回の教育は,双方の課題であるSA-CROT項目4を中心にCEやOTSの教育の工夫をした. CEに対しては,作業中心のEBPにおけるコンピテンシー(廣瀬ら/2022)を参考に,様々なエビデンスを実践に統合するために,作業に関連した疑問の特定,作業の課題を捉えるための評価の選定や解釈に関する知識を共有した.CEとOTSの双方に対しては,尺度を活用した新人教育における学習者と教育者の経験分析(丸山ら/2022)を参考に,実習中の作業の疑問や課題の振り返り学習を意識した意見交換を行った.具体的には,養成校の課題であるデイリーノートや治療立案を考えるにあたり,対象者の今後の生活の予測を中心に双方の視点の意見を出し合った.OTRは必要に応じてCEの説明の援助を行った.
【結果】実習終了時のSA-CROTはCE:56/70点,OTS:37/70点となった.共通課題であった項目4の得点はCE:3点,OTS:2点となった.SA-CROT の実習前後の変化は,OTSはlogits3.83>SE1.08,CEはlogits2.66>SE1.02となり,双方とも実習前後における誤差範囲以上の変化を認めた. CEの自己評価の発言は「根拠をもって自分の考えを学生さんに伝えられた,教えることは自分の成長にも繋がることを感じた」.OTSの自己評価の発言は「重症例の方の生活の予測と作業提供の考え方が自分なりに考えられた」とポジティブな発言が聞かれた.
【考察】SA-CROTを用いた自己評価から明らかになった共通の課題に基づく教育は,双方のCRの自己評価の向上に繋がることが考えられる. 今後は自己評価の程度や低いCRの要因に合わせた教育方法の検討が必要と考えられる.