第58回日本作業療法学会

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教育

[PR-2] ポスター:教育 2 

2024年11月9日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-2-1] リハビリスタッフの患者に対する言葉遣いと患者の呼び方についての意識調査

近藤 大暉, 村瀬 政信 (医療法人清水会 相生山病院 リハビリテーション科)

【背景】
障害者基本法では障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し共生する社会の実現に資することと述べられている.患者への言葉遣いは障害や年齢などで変えるものではなく偏りが出ないよう均一にするべきである.本研究は当院の患者に対する言葉遣いと呼び方の実態把握,患者側の捉え方を明らかにすることを目的とした.
【方法】
Ⅰ.当院に入院している65歳以上の患者にアンケート調査を行った.質問①医療スタッフが患者を下の名前で呼ぶ(以下患①)②リハビリスタッフ(以下リハ)が患者を下の名前で呼ぶ(以下患②)③声のかけられ方(以下患③)④医療スタッフがため口で話す(以下患④)⑤リハが患者に対して「ため口」で話す(以下患⑤).
Ⅱ.リハを対象にアンケート調査を行った.質問①患者の呼び方(以下リ①)②リ①で「はい」を選んだ人の理由(以下リ②)③患者はどう感じるか(以下リ③)④下の名前で呼ぶことについて(以下リ④)⑤ため口で話したか(以下リ⑤)⑥リ⑤で「はい」を選んだ人の理由(以下リ⑥)⑦ため口で話した際に患者はどう感じるか(以下リ⑦)⑧ため口で話すことについてどう思うか(以下リ⑧)⑨患者への声のかけ方(以下リ⑨).アンケート調査の回答は選択式で主に5段階のリッカード尺度を使用した.なお患③リ⑨の質問は対等語,丁寧語,謙譲語の3項目から選択した.解析方法はΧ検定としクロス集計表の1つのセルの期待値が5以下の場合,Fisherの直接確率検定を用いた.なお選択式で5段階を使用した質問は肯定的な2項目を1つに,否定的な選択2項目を1つにまとめ3段階として解析した.データ解析には,改変Rコマンダー(Ver4.3.1)を使用し有意水準は5%未満とした.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき調査した内容を研究活動に使用する趣旨を事前に説明し同意を得た.
【結果】
患者のアンケート回答者は48名(男24名,女24名),平均年齢は85.4±6.3歳であった.アンケート項目を男女別,年齢別(准高齢者3人,高齢者31人,超高齢者14人)で統計を行い全ての項目で有意差がない結果となった.患①快48%,不快10%,どちらともいえない42%,患②適切35%,不適切17%,どちらともいえない48%,患③尊敬語21%,丁寧語42%,対等語38%,患④快46%,不快21%,どちらともいえない33%,患⑤適切38%,不適切25%,どちらともいえない38%.アンケート時「人による」「あまり硬い言葉よりは軽い言葉で話してくれた方が親しみがあって嬉しい」などの意見が挙げられた.リハのアンケート回答者は15名(男10名,女5名)であった.リ①はい27%,いいえ73%,リ②無意識73%,同じ名字の人がいるが7%,その他が20%,リ③快0%,不快27%,どちらともいえない73%,リ④適切が0%,不適切が40%,どちらともいえない60%リ⑤はい60%いいえ40%,リ⑥ リ⑤の理由として.患者の失語の有無,信頼関係,無意識が挙がった.リ⑦快0%,不快53%,どちらともいえない47%,リ⑧適切が0%,不適切が67%,どちらともいえない33%,リ⑨対等語0%,尊敬語40%,丁寧語60%となった.
【考察】
患者,リハ共にどちらともいえないという意見が多く挙がった.看護師の先行研究では丁寧語希望者が多かった(出羽ら2004).患者の意見では「人による」「軽い言葉の方が親しみがあって嬉しい」との声が挙がった.病前からの習慣,アンケートの返答を患者側が配慮した可能性も考えられる.しかし名前で呼ばれることやため口で話されることに対して否定的な意見もある.推測だけではなく実際に患者・家族から希望を聴取し治療に繋げる必要があると考える.