[PR-2-3] 臨床実習後の効果的な強化型教育
実技指導動画教材作成による学習
【背景・目的】我が国におけるリハビリテーション領域の臨床実習教育は過渡期を迎えている.PT・OTの養成教育の根幹となる「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」が約20年ぶりに改正され,臨床実習を含めた単位数の増加や臨床実習指導者要件の制定,診療参加型実習の推進などが規定された.併せて,「作業療法臨床実習の手引き」も2020年に第6版が発行され,より効果的な臨床実習教育の構築が行われている.しかしながら,臨床実習教育では実習施設の指導者による教育が主であり,養成校の教育者による関りが乏しく,臨床実習後にその経験や知識・技術を促進するような教育の実施は少ないのが現状である.そこで,本研究では,Problem-based Learning(以下PBL)を活用した新たな臨床に則した教育方法を考案し,その効果を検証することを目的とした.
【方法】2021年度4年次(28名)および2021年度3年次(51名)の臨床実習(8週間)において学内実習に参加した学生79名を対象とした.PBLを活用した教育方法として実技指導動画教材を作成する演習を臨床実習前もしくは臨床実習後に学内実習として行った.学習効果の判定には,臨床的内省と臨床推論の主観的な評価法であるSelf-Assessment of Clinical Reflection and Reasoning(以下SACRR)を用いた.SACRRは26項目の質問から成り,5(非常にそう思う)から1(非常にそう思わない)までの5段階尺度で評価した.統計解析にはSPSS(IBM)を用い,臨床実習前に本演習を実施した群(以下,実習前実施群)と臨床実習後に実施した群(以下,実習後実施群)の各群それぞれの演習前後のSACRRの比較を行うためWilcoxonの順位和検定を,各群のSACRRの各変化量を比較するためMan-Whiteny U testを実施した.有意水準は5%未満とした.
【結果】本演習によって実習前実施群では本演習の前後でSACRR26項目のうち10項目において改善が認められ,3項目において改善傾向であった.一方,実習後実施群ではSACRR26項目のうち19項目において改善が認められ,3項目において改善傾向であった.また,各SACRR項目の変化量の群間の比較では,「実際にどのように,何を,なぜ行うのかを疑問に思っている」(p<0.001),「提案された介入結果について,オープンマインド(受け入れる姿勢)を保つようにしている」(p=0.004),「理論的に治療技術を理解する」(p=0.047),「介入戦略を計画するときに,さまざまな選択肢について“もしも”と想定する」(p=0.018),「同僚の考えや視点を求める」(p=0.004)の5つの項目において実習後実施群が実習前実施群よりも有意に高値となっていた.
【考察】本研究の結果,本演習の前後によってSACRRの多数の項目が改善していた.Willisら(2018)はPBLを活用した学習が臨床推論スキルの発達に寄与すると報告している.PBLを活用した本演習においても,設定した疾患に合わせた検査測定結果や介入方法および介入結果になるかを想定することによって臨床的内省と臨床推論のスキル向上につながったと考える.さらに,本演習の効果は,臨床実習後に実施することによって効果的なものとなった.臨床実習において,養成校で学修した知識や技術が臨床経験や臨床実習指導によって統合され,臨床的内省と臨床的推論能力の向上につながったと考える.PBLを活用した本演習は臨床的内省や臨床推論といったセラピストに必要なコンピテンシーを強化でき,臨床実習の事後学習として有効であることが示唆された.
【研究倫理】本研究は所属施設倫理委員会の承認を得て実施した.(SKE2020-22)
【利益相反】本研究は東京家政大学教育改革推進(学長裁量)経費予算による助成を受け実施した.
【方法】2021年度4年次(28名)および2021年度3年次(51名)の臨床実習(8週間)において学内実習に参加した学生79名を対象とした.PBLを活用した教育方法として実技指導動画教材を作成する演習を臨床実習前もしくは臨床実習後に学内実習として行った.学習効果の判定には,臨床的内省と臨床推論の主観的な評価法であるSelf-Assessment of Clinical Reflection and Reasoning(以下SACRR)を用いた.SACRRは26項目の質問から成り,5(非常にそう思う)から1(非常にそう思わない)までの5段階尺度で評価した.統計解析にはSPSS(IBM)を用い,臨床実習前に本演習を実施した群(以下,実習前実施群)と臨床実習後に実施した群(以下,実習後実施群)の各群それぞれの演習前後のSACRRの比較を行うためWilcoxonの順位和検定を,各群のSACRRの各変化量を比較するためMan-Whiteny U testを実施した.有意水準は5%未満とした.
【結果】本演習によって実習前実施群では本演習の前後でSACRR26項目のうち10項目において改善が認められ,3項目において改善傾向であった.一方,実習後実施群ではSACRR26項目のうち19項目において改善が認められ,3項目において改善傾向であった.また,各SACRR項目の変化量の群間の比較では,「実際にどのように,何を,なぜ行うのかを疑問に思っている」(p<0.001),「提案された介入結果について,オープンマインド(受け入れる姿勢)を保つようにしている」(p=0.004),「理論的に治療技術を理解する」(p=0.047),「介入戦略を計画するときに,さまざまな選択肢について“もしも”と想定する」(p=0.018),「同僚の考えや視点を求める」(p=0.004)の5つの項目において実習後実施群が実習前実施群よりも有意に高値となっていた.
【考察】本研究の結果,本演習の前後によってSACRRの多数の項目が改善していた.Willisら(2018)はPBLを活用した学習が臨床推論スキルの発達に寄与すると報告している.PBLを活用した本演習においても,設定した疾患に合わせた検査測定結果や介入方法および介入結果になるかを想定することによって臨床的内省と臨床推論のスキル向上につながったと考える.さらに,本演習の効果は,臨床実習後に実施することによって効果的なものとなった.臨床実習において,養成校で学修した知識や技術が臨床経験や臨床実習指導によって統合され,臨床的内省と臨床的推論能力の向上につながったと考える.PBLを活用した本演習は臨床的内省や臨床推論といったセラピストに必要なコンピテンシーを強化でき,臨床実習の事後学習として有効であることが示唆された.
【研究倫理】本研究は所属施設倫理委員会の承認を得て実施した.(SKE2020-22)
【利益相反】本研究は東京家政大学教育改革推進(学長裁量)経費予算による助成を受け実施した.