[PR-2-4] CISAを作業療法士に適用した1事例報告
【はじめに】 近年,理学療法士等のセラピストの増加に反し,新卒者の質の悪化が指摘され,より良い教育の必要性が強く訴えられている.本研究の目的は,作業療法士を対象に「臨床リハビリテーション場面におけるクライアントとより良い関係を形成するためのコミュニケーションと介入技能評価(以下,CISA)」を適用した結果と課題の取り組みを明らかにし,作業療法士の技能に対する影響とCISAの有用性を検討することである. 本報告により,CISAがセラピストの人材教育に役立つかを検討できる.本報告は対象者の承諾を得ており,開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】 1.対象者 回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟所属の臨床経験2年目の作業療法士1名であった.2.手続き 属性記入票,CISA,課題取り組み・指導内容質問紙(以下,質問紙)を対象者に提供した.対象者には,初回とその3か月後にCISAの実施を依頼した.CISAは「リハを行う基本的な姿勢とコミュニケーション技能(質問1から6)」「リハ開始時の介入技能(質問7から9)」「リハ過程における評価,計画,治療の介入技能(質問10から27)」の3領域27項目の質問に「非常に問題あり(1点)」から「非常に良い(5点)」で回答する自己評価ツールである.初回のCISAで明らかになった技能の不足や課題に対する対象者の取り組みと上司などから受けた指導内容を質問紙に記入するよう依頼した.属性記入票,CISA,質問紙の結果を返却してもらった.3.分析方法 初回とその3か月後のCISAの得点の増減を求め,対象者の技能に対する影響とCISAの有用性を検討した.また,質問紙の結果から,課題の取り組みや対象者が経験した指導内容を明らかにした.本研究はA大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:2023-002H).
【結果】 1.CISAの結果 初回は「リハを行う基本的な姿勢とコミュニケーション技能」が23点,「リハ開始時の介入技能」が7点,「リハ過程における評価,計画,治療の介入技能」が38点であった.3か月後は「リハを行う基本的な姿勢とコミュニケーション技能」が27点,「リハ開始時の介入技能」が10点,「リハ過程における評価,計画,治療の介入技能」が50点であった.2.対象者が取り組んだこと 患者に対する治療中のフィードバック(声掛け等)の増加.日々の目標設定と患者との共有.他職種に対する患者の変化の伝達や共有.上司との相談による福祉機器の導入.患者の日々の様子と家族からの情報収集をふまえた治療の提供.声掛けの工夫や傾聴の心がけ.3.指導内容 接し方等の良好な関わりに対する称賛.情報収集はできているが,実際の関わりに結びついていないことへの指導.導入する福祉機器と導入後の予測に関する助言.ケアマネジャー等への情報伝達の工夫.妥当な目標設定.
【考察】 3か月後のCISAの得点は全領域(22項目)で増加した.従って,CISAの適用により,作業療法士はコミュニケーションや介入の技能を改善できたと考える.なお,本報告では,研究者から対象者や指導者に計画的かつ実験的な介入は一切行っていない.従って,対象者はCISAの適用から技能の不足を自己評価し,指導等をもとに自発的に課題を組み立て,働きかけることにより成果をもたらしたと考えられる.
【結論】 本報告から,CISAはリハの技能の自己評価と自己学習に有用であり,技能を改善させるセラピストの人材教育に役立つことが明らかとなった.
【方法】 1.対象者 回復期リハビリテーション(以下,リハ)病棟所属の臨床経験2年目の作業療法士1名であった.2.手続き 属性記入票,CISA,課題取り組み・指導内容質問紙(以下,質問紙)を対象者に提供した.対象者には,初回とその3か月後にCISAの実施を依頼した.CISAは「リハを行う基本的な姿勢とコミュニケーション技能(質問1から6)」「リハ開始時の介入技能(質問7から9)」「リハ過程における評価,計画,治療の介入技能(質問10から27)」の3領域27項目の質問に「非常に問題あり(1点)」から「非常に良い(5点)」で回答する自己評価ツールである.初回のCISAで明らかになった技能の不足や課題に対する対象者の取り組みと上司などから受けた指導内容を質問紙に記入するよう依頼した.属性記入票,CISA,質問紙の結果を返却してもらった.3.分析方法 初回とその3か月後のCISAの得点の増減を求め,対象者の技能に対する影響とCISAの有用性を検討した.また,質問紙の結果から,課題の取り組みや対象者が経験した指導内容を明らかにした.本研究はA大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認番号:2023-002H).
【結果】 1.CISAの結果 初回は「リハを行う基本的な姿勢とコミュニケーション技能」が23点,「リハ開始時の介入技能」が7点,「リハ過程における評価,計画,治療の介入技能」が38点であった.3か月後は「リハを行う基本的な姿勢とコミュニケーション技能」が27点,「リハ開始時の介入技能」が10点,「リハ過程における評価,計画,治療の介入技能」が50点であった.2.対象者が取り組んだこと 患者に対する治療中のフィードバック(声掛け等)の増加.日々の目標設定と患者との共有.他職種に対する患者の変化の伝達や共有.上司との相談による福祉機器の導入.患者の日々の様子と家族からの情報収集をふまえた治療の提供.声掛けの工夫や傾聴の心がけ.3.指導内容 接し方等の良好な関わりに対する称賛.情報収集はできているが,実際の関わりに結びついていないことへの指導.導入する福祉機器と導入後の予測に関する助言.ケアマネジャー等への情報伝達の工夫.妥当な目標設定.
【考察】 3か月後のCISAの得点は全領域(22項目)で増加した.従って,CISAの適用により,作業療法士はコミュニケーションや介入の技能を改善できたと考える.なお,本報告では,研究者から対象者や指導者に計画的かつ実験的な介入は一切行っていない.従って,対象者はCISAの適用から技能の不足を自己評価し,指導等をもとに自発的に課題を組み立て,働きかけることにより成果をもたらしたと考えられる.
【結論】 本報告から,CISAはリハの技能の自己評価と自己学習に有用であり,技能を改善させるセラピストの人材教育に役立つことが明らかとなった.