第58回日本作業療法学会

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教育

[PR-3] ポスター:教育 3 

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-3-2] 作業療法実技教育の反転学習と反復学習の効果

コロナ禍中における実技教育を経験して

作田 浩行, 古賀 誠, 青木 啓一郎, 増山 英理子 (昭和大学保健医療学部 リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【序論】 2020年からのコロナ禍では学生の登校日を限定するなど感染対策が講じられた.オンラインでの授業が導入され知識教育は早急に整備されたが,実技教育には制約が残ったままの実践となった.本学では2019年から一部の実技教育において動画教材を活用した反転学習などを導入しており成果(作田, 2019・2020)を上げていた.登校が制限される中,2020年にも動画教材を用いた反転学習が実施できたので,これらの結果を比較することで作業療法の実技教育の方略について検討する.
【方法】 比較を行ったのは作業療法学科2年次に履修する関節可動域測定(以下,ROM)の実技学習であった.2018年21名は教員によるデモンステレーション後に授業内や時間外に練習を行う従来型の学習,2019年26名と2020年19名は動画教材を用いた反転学習であった.反転学習では学生は動画教材を事前に視聴した上で授業に参加し学生同士で実技演習を行った.2020年はコロナ禍による感染対策のため放課後等の自主練習が困難であった.2019年は,学生は放課後等に自由に反復学習を行っていた.解析は2018年(従来群)・2019年(コロナ前群)・2020年(コロナ渦中群)学生のROM実技と筆記の試験結果を3群間でクラスカル-ウォリス検定と多重比較(Steel-Dwass検定)にて比較した.また各群間の効果量を算出した.解析ソフトはJMP pro 17を使用した.なお本研究は本学部倫理委員会で承認を得ている.
【結果】 実技の試験結果(Median(IQR)・平均±SD)は従来群90.0(60.0-90.0)・74.3±25.41,コロナ前群95.0(95.0-100.0)・95.8±5.23,コロナ禍中群95.0(85.0-97.5)・90.8±8.38であった.3群間に有意差があった(χ2=17.33, p=.000).多重比較では従来群と比べコロナ前群が有意に高かった(Z=4.03, p=.000).群間における効果量(r)は従来群-コロナ前群.59(大),従来群-コロナ禍中群.34(中),コロナ前群-コロナ禍中群.31(中)であった.筆記の試験結果は(表記同様)は従来群68.4(57.9-79.0)・70.0±13.1,コロナ前群75.6(64.1-84.7)・73.7±13.5,コロナ禍中群81.7(72.5-87.5)・78.4±13.9であった.3群間に有意差はなかった(χ2=4.24, p=.120).群間における効果量(r)は従来群-コロナ前群.12(小),従来群-コロナ禍中群.32(中),コロナ前群-コロナ禍中群.20(小)であった.
【考察】 筆記の結果に有意差がないことから各学年の学生の質には差はなかったと言える.実技の結果では従来群と比べ,コロナ前群は仮説検定で有意に高くなり効果量では(大)の差が,コロナ渦中群では仮説検定では有意差はなかったが効果量で(中)の差があった.これは実技教育での動画教材を用いた反転学習の効果を示している.またコロナ前群とコロナ禍中群の間にも効果量(中)の差があった(コロナ前群>コロナ禍中群).これは対面での反復学習に取り組んだ時間数の差が反映したと考える.コロナ前群の学生は授業時間外にも動画教材を用いて反復学習を行っていた.一方,コロナ渦中群の学生は対面での実技演習は授業時間に限られていた.反転学習に加え動画教材等を活用した質の高い反復学習も作業療法実技教育における重要な方略の一つであると言えるだろう.