[PR-3-3] 作業療法士と理学療法士とのエンプロイアビリティの検討
【序論】
近年,採用を決める因子としてエンプロイアビリティが注目されているが,医療学生や医療従事者を対象としたエンプロイアビリティの報告はまだあまり多くない.先行研究では,神山によると新入職のエンプロイアビリティを因子分析した結果,「業務推進力」「対人関係力(共感・信頼)」「適応力(ストレス・環境)」「キャリア形成力」「課題分析力」「責任感(自覚・規律)」「論理力(文書表現力)」「リスク予測力」「柔軟力」の9つの因子に分けられたと述べられている(神山真美/作業療法士・理学療法士に必要とされるエンプロイアビリティの検討/2021年).しかし,作業療法士と理学療法士を同じ尺度で比較している先行研究はあまりない.
【目的】
当グループではリハビリスタッフ数が約4000人在籍しており,多くの実習生や新入職を受け入れている.急性期から回復期,在宅といった幅広いフィールドで仕事を行っており,多くのスタッフを今後も求人していく必要がある.今回の研究で,新入職員に対して必要なエンプロイアビリティの違いをみることで,今後の求人活動に生かすことを目的とした.
【方法】
九州8病院の作業療法士および理学療法士の副主任以上のスタッフで同意を得られた82名をWEBでのアンケート調査(Google Forms)を実施とした.
基本属性,労働政策研究・研究機構のCareer Development Competence(以下CDE)チェックリストを神山が一部改編し作成したCDEチェックリストの9因子を用いて,合計80項目を5件法で調査とした.作業療法士と理学療法士で2群間に分け,Mann-WhitneyU検定を実施し有意水準を5%とした.また,9つの因子の中で重要なものを上位3位まで回答してもらった.研究への参加は自由意志によるものとし,本研究への同意を確認した.また,本研究は小文字病院の倫理審査委員会より承認を得て実施した.(承認番号:2023005)
【結果】
課題分析力では,作業療法士群が3.43±0.71,理学療法士群が3.79±0.71であった.(p<0.05)リスク予測力では,作業療法士群が3.20±0.83,理学療法士群が3.74±0.83であった.(p<0.05)その他の項目では有意な差はなかった.9因子の優先順位は,OTでは,1位適応力,2位対人関係,3位責任感・柔軟力であった.PTでは1位対人関係,2位責任感,3位適応力であった.
【考察】
2022年の作業療法士,理学療法士の有資格者数は右肩上がり増加傾向にあり,今後の需給推計では,療法士の数は飽和状態になるおそれがある.そのため,患者さんにより良い医療を提供するために,作業療法士と理学療法士の職種間で新人に対して必要なエンプロイアビリティの差を見ることでより専門性を意識した求人活動をする必要があると考えた.
本研究の結果は,「課題分析力」と「リスク予測力」に有意な差があった.しかしながら,その他の項目では,有意な差がなかった.特に,医療従事者では,「対人関係力」,「適応力」が必要な場面が多く,そういった能力は欠如することにより,臨床でバーンアウトを生み出す傾向があるのではないかと考えた.9因子の中で作業療法士が高くなった項目は「責任感(自覚・規律)」であった.これは作業療法士が患者のADLや社会参加の治療領域を任される機会が多いため,そういった能力が求められるのではないかと考えた.優先順位に関しては同じような結果が見られ,リハビリテーションの職業では,対人関係をはじめとするコミュニケーションが求められる傾向があった.
近年,採用を決める因子としてエンプロイアビリティが注目されているが,医療学生や医療従事者を対象としたエンプロイアビリティの報告はまだあまり多くない.先行研究では,神山によると新入職のエンプロイアビリティを因子分析した結果,「業務推進力」「対人関係力(共感・信頼)」「適応力(ストレス・環境)」「キャリア形成力」「課題分析力」「責任感(自覚・規律)」「論理力(文書表現力)」「リスク予測力」「柔軟力」の9つの因子に分けられたと述べられている(神山真美/作業療法士・理学療法士に必要とされるエンプロイアビリティの検討/2021年).しかし,作業療法士と理学療法士を同じ尺度で比較している先行研究はあまりない.
【目的】
当グループではリハビリスタッフ数が約4000人在籍しており,多くの実習生や新入職を受け入れている.急性期から回復期,在宅といった幅広いフィールドで仕事を行っており,多くのスタッフを今後も求人していく必要がある.今回の研究で,新入職員に対して必要なエンプロイアビリティの違いをみることで,今後の求人活動に生かすことを目的とした.
【方法】
九州8病院の作業療法士および理学療法士の副主任以上のスタッフで同意を得られた82名をWEBでのアンケート調査(Google Forms)を実施とした.
基本属性,労働政策研究・研究機構のCareer Development Competence(以下CDE)チェックリストを神山が一部改編し作成したCDEチェックリストの9因子を用いて,合計80項目を5件法で調査とした.作業療法士と理学療法士で2群間に分け,Mann-WhitneyU検定を実施し有意水準を5%とした.また,9つの因子の中で重要なものを上位3位まで回答してもらった.研究への参加は自由意志によるものとし,本研究への同意を確認した.また,本研究は小文字病院の倫理審査委員会より承認を得て実施した.(承認番号:2023005)
【結果】
課題分析力では,作業療法士群が3.43±0.71,理学療法士群が3.79±0.71であった.(p<0.05)リスク予測力では,作業療法士群が3.20±0.83,理学療法士群が3.74±0.83であった.(p<0.05)その他の項目では有意な差はなかった.9因子の優先順位は,OTでは,1位適応力,2位対人関係,3位責任感・柔軟力であった.PTでは1位対人関係,2位責任感,3位適応力であった.
【考察】
2022年の作業療法士,理学療法士の有資格者数は右肩上がり増加傾向にあり,今後の需給推計では,療法士の数は飽和状態になるおそれがある.そのため,患者さんにより良い医療を提供するために,作業療法士と理学療法士の職種間で新人に対して必要なエンプロイアビリティの差を見ることでより専門性を意識した求人活動をする必要があると考えた.
本研究の結果は,「課題分析力」と「リスク予測力」に有意な差があった.しかしながら,その他の項目では,有意な差がなかった.特に,医療従事者では,「対人関係力」,「適応力」が必要な場面が多く,そういった能力は欠如することにより,臨床でバーンアウトを生み出す傾向があるのではないかと考えた.9因子の中で作業療法士が高くなった項目は「責任感(自覚・規律)」であった.これは作業療法士が患者のADLや社会参加の治療領域を任される機会が多いため,そういった能力が求められるのではないかと考えた.優先順位に関しては同じような結果が見られ,リハビリテーションの職業では,対人関係をはじめとするコミュニケーションが求められる傾向があった.