第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-3] ポスター:教育 3 

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-3-4] 初年次教育での「障害者とバリアフリー」を意識する取り組み

車椅子ユーザーと“推し”を楽しむ企画を通して

五十嵐 千代子1, 三代 達也2 (1.日本リハビリテーション専門学校 作業療法学科, 2.日本リハビリテーション専門学校 非常勤講師)

【背景】
 初年次教育とは文部科学省によると「高等学校から大学への円滑な移行を図り,大学での学問的・社会的な諸条件を成功させるべく,主として大学新入生を対象に作られた総合的教育プログラム.高等学校までに習得しておくべき基礎学力の補完を目的とする補習教育とは異なり,新入生に最初に提供されることが強く意識されたもの.」とされる.当校で入学して間もない作業療法学科1年生に対し,体験実習の授業を通して学習への意欲向上や障害者やバリアフリーに意識が向くよう障害者の方に協力いただき,授業後にバリアフリーに対するアンケート等をとった.以下にその詳細を報告する.
【方法】
 作業療法学科昼間部1年生の前期の「障害体験」の授業で入学間もない4月に車椅子ユーザーの方にzoomで協力いただいた.事前課題としてYouTube やInstagramで受傷からの回復や日常生活の様子を視聴しイメージを持ってもらった.その上で車椅子ユーザーとともに自分の“推し”を楽しむ企画をバリアフリー情報についてグループで調べながら考え,発表しフィードバックをいただいた.またその後に意識の変化などについてのアンケートを実施した.
【結果】
 発表ではグループごとに良い点と課題についてフィードバックをいただいた.授業後のアンケートの回答率は70%であった.グループワークの感想では入学して1か月もたっていない時期だったため「意外と案を出すのが難しかった」というものもあったが,「友達同士でのチームワーク力やコミュニケーション能力が上がった事が良かったと思う」「〇〇さんを楽しませる為に色々考えながらパワポを作るのがとても楽しかった」「私達が気軽に食べに行く所や遊びに行くところには車椅子の方が行きにくい場所も多々あったことを改めて知った」など授業意図に沿ったものも得られた.「講義後の変化」では「車椅子を利用されている方や杖をついている方などが目にとまるようになった」「自分自身の障害者に対する心のバリアが少なくなった」で50%強を占め ,他にも「飲食店の出入り口のスロープが目にとまるようになった」「電車内の車椅子専用スペースに気づくようになった」など全員に良い変化が見られた.障害者当事者から直接話を聞くことのメリットについては約70%が「教科書では学べないことが学べる」と回答しており,全体の感想では「身近に身体障害者がいないため,お話を聞く機会がない.そんな中,一年生の内に体験できてこれからの勉強に一層価値を見いだせます.」など学習の効果を得られた内容が多かった.
【考察】
 初年次教育は「新入生に最初に提供されることが強く意識されたもの」とされるが,今回報告した授業の意図や展開は,初年次教育として「高等学校から大学への円滑な移行を図り,大学での学問的・社会的な諸条件を成功させる」一助になったのではないかと考える.翌年度も初年次教育で同様のことをしていくが,事前に障害像など理解できるような工夫を盛り込んだうえで効果の向上を図っていきたい.