[PR-3-7] 臨床実習における作業に焦点を当てた実践の経験と客観的臨床能力試験との関連
【序論】作業療法士養成施設指定規則は2018年に改定され,臨床教育の在り方が見直された.理学療法士作業療法士養成施設ガイドラインにおいて,臨床実習の指導方法は診療参加型実習(clinical clerkship;以下,CCS)が推奨されていることから,現在の臨床実習はCCSが主流となっている.近年の臨床実習では,実際の作業療法を効率的に学ぶことを目的に,臨床技能の各項目に対して経験した事項を確認するためチェックリストを用いた取り組みが行われている.チェックリストは学生と実習指導者が学習の進捗状況を共有し,学習計画を立てるためのツールとして使用される.チェックリストの形式は,日本作業療法士協会による作業療法臨床実習の手引きで一部例が紹介されており,見学・模倣・実施の経験を記録していくものであるが,確立された形式はなく各養成校が検討して作成している.作業療法は作業に焦点を当てた治療・指導・援助を実践していくことであり,チェックリストにもこの点が含まれていることが重要である.また,実際に経験した内容や頻度と実習後の臨床技能に関連があるかを確認することは,チェックリストの内容の検討や実習の在り方を見直す上で重要と考える.そこで本研究は作業に焦点を当てた実践の経験ができるよう作成した臨床技能チェックリストの各項目の経験数と実習後に行われた客観的臨床能力試験の結果との関連を検討した.【目的】作業に焦点を当てた実践の経験ができるよう作成した臨床技能チェックリストの各項目の経験数と実習後に行われた客観的臨床能力試験の結果との関連を明らかにすること.【方法】対象は,本学作業療法総合実習に参加した作業療法学生40名とした.このうち身体障害領域の実習を実施し,研究の同意が得られた学生30名を解析対象とした.使用するデータは,本学で作成した臨床技能チェックリスト各項目の経験数と実習後に実施された客観的臨床能力試験の結果とした.臨床技能チェックリストは,26の作業療法評価に関する項目と17の作業療法介入に関する項目がある.このうち,本研究で使用する項目は作業に焦点を当てた介入に該当する7項目とした.各項目の経験数は,見学数,模倣数,実施数をそれぞれ算出した.客観的臨床技能試験の結果は,身体障害領域のおける課題の得点を用いた.分析は,臨床技能チェックリストの7項目の経験数と客観的臨床技能試験の得点との関連について,Spearmanの順位相関係数により検討した.なお,本研究は茨城県立医療大学倫理員会の承認を得て実施した.【結果】臨床技能チェックリストの経験数と客観的臨床技能試験の得点に関連が認められた項目は,作業に焦点を当てた介入のうち,作業をできるようにする代償手段に関する介入(自助具作成やその指導)の見学(r=.360,p=.025),模倣(r=.353,p=.028),実施(r=.301,p=.053),作業をできるようにする代償手段に関する介入(人的環境調整など)の見学(r=.500,p=.002),作業の知識を提供する教育指導の模倣(r=.372,p=.022)であった.【考察】本研究で使用した客観的臨床技能試験の内容は,脳卒中患者に対して作業を用いた介入を課題としており,介入に必要な道具の選定や使用方法を理解し,それを提供できる技術を要する課題であった.そのため客観的臨床技能試験の得点と作業をできるようにする代償手段に関する介入(自助具の作成やその指導)に関連を示したと考える.臨床実習において作業に焦点を当てた介入の経験が多いほど,実習後の技能修得に関連がある可能性が示された.本研究は対象者数が限られており,今後は対象者数を増やした検討が必要である.