[PR-4-1] 作業療法学生のレジリエンスが作業機能障害や不安に与える影響
【背景】作業療法学生は,実習や学業的なストレスなど,多くのストレスを抱えており,不安を抱えている.不安は作業機能障害と中等度の相関があることを報告されており1),作業機能障害とは,生活行為に従事することに関連する否定的な経験として定義されており,明らかな医学的疾患を持ち合わせていなくても発現する可能性がある.また,上記のように様々なストレス・不安がある中,向き合い,適応し,例え失敗してもそこから回復することが大切であり,そのためにはレジリエンスが大切であると言われている.レジリエンスとは,精神的な柔軟性や回復力を意味している.本研究では,レジリエンスと不安や作業機能障害との関連について明らかにすることを目的とした.
【方法】倫理的な配慮や研究についての説明を行ったのち,同意を得られた当校作業療法学専攻1年生と2年生を研究参加者とした.使用した尺度は,状態-特性不安検査日本語版(STATE-TRAT ANXIETY INVENTORY:以下STAI),作業機能障害の種類と評価(Classification and Assessment of Occupation Dysfunction :以下CAOD),ブリーフ・レジリエンス尺度日本語版(以下BRS-J)であった.使用する試料については,授業の一環として収集しているGoogle Formの結果とし,本報告にて使用するデータをデータベースから抽出した.Chavezの報告2)と同様に,BRS-Jの総合スコアを6で割ったBRS score を抽出し,そのスコアが1.00~2.99の場合低いレジリエンス(LR),3.00~4.30の場合普通レベルのレジリエンス(NR),4.31~5.00は高いレジリエンス(HR)とし,群間でMann–WhitneyのU検定を実施した.また,BRS-J得点と他項目の得点をspearmanの順位相関係数を使用し検証した.使用した統計ソフトはR version 4.2.3であった.
【結果】Google Formに収集できたのは1年生23名,2年生17名であった.HRに属する対象者は本研究では確認できず,NRは19名,LRは21名であった.そのため,Mann–WhitneyのU検定にてLR群とNR群の群間差を確認した.学年間ではCAODの「作業不均衡」とSTAIの「状態不安」の項目のみ有意な群間差が確認できたが,LR群とNR群の2群間では,CAODとSTAIの全ての項目で有意な差が確認できた(p<0.01).Spearmanの順位相関係数については,BRS-Jの得点とCAOD,STAIの全ての下位項目との有意な負の相関が確認できた(p<0.05).
【考察】学年間の影響を差し引いても,作業療法学生のレジリエンスが不安や作業機能障害を軽減する方向へ影響を与えている可能性が高い.そのため,レジリエンスの程度を念頭に踏まえた上で作業療法学生への教育指導を行なっていく必要性が示唆された.今後,レジリエンスが作業機能障害や不安とどのような構造で関連し,また,他心理尺度とも関連しているのか,追加研究を行う必要がある.
【文献】
1) Yasuaki Kusumoto, Rieko Higo, Kanta Ohno: Differences in college students’ occupational dysfunction and mental health considering trait and state anxiety during the COVID-19 pandemic. PeerJ 10: e13443,2022.
2) Tyler J Chavez, Kirsten D Garvey, Jamie E Collins, Natalie A Lowenstein, Elizabeth G Matzkin: Resilience as a Predictor of Patient Satisfaction With Nonopioid Pain Management and Patient-Reported Outcome Measures After Knee Arthroscopy. Arthroscopy36(8): 2195-2201,2020.
【方法】倫理的な配慮や研究についての説明を行ったのち,同意を得られた当校作業療法学専攻1年生と2年生を研究参加者とした.使用した尺度は,状態-特性不安検査日本語版(STATE-TRAT ANXIETY INVENTORY:以下STAI),作業機能障害の種類と評価(Classification and Assessment of Occupation Dysfunction :以下CAOD),ブリーフ・レジリエンス尺度日本語版(以下BRS-J)であった.使用する試料については,授業の一環として収集しているGoogle Formの結果とし,本報告にて使用するデータをデータベースから抽出した.Chavezの報告2)と同様に,BRS-Jの総合スコアを6で割ったBRS score を抽出し,そのスコアが1.00~2.99の場合低いレジリエンス(LR),3.00~4.30の場合普通レベルのレジリエンス(NR),4.31~5.00は高いレジリエンス(HR)とし,群間でMann–WhitneyのU検定を実施した.また,BRS-J得点と他項目の得点をspearmanの順位相関係数を使用し検証した.使用した統計ソフトはR version 4.2.3であった.
【結果】Google Formに収集できたのは1年生23名,2年生17名であった.HRに属する対象者は本研究では確認できず,NRは19名,LRは21名であった.そのため,Mann–WhitneyのU検定にてLR群とNR群の群間差を確認した.学年間ではCAODの「作業不均衡」とSTAIの「状態不安」の項目のみ有意な群間差が確認できたが,LR群とNR群の2群間では,CAODとSTAIの全ての項目で有意な差が確認できた(p<0.01).Spearmanの順位相関係数については,BRS-Jの得点とCAOD,STAIの全ての下位項目との有意な負の相関が確認できた(p<0.05).
【考察】学年間の影響を差し引いても,作業療法学生のレジリエンスが不安や作業機能障害を軽減する方向へ影響を与えている可能性が高い.そのため,レジリエンスの程度を念頭に踏まえた上で作業療法学生への教育指導を行なっていく必要性が示唆された.今後,レジリエンスが作業機能障害や不安とどのような構造で関連し,また,他心理尺度とも関連しているのか,追加研究を行う必要がある.
【文献】
1) Yasuaki Kusumoto, Rieko Higo, Kanta Ohno: Differences in college students’ occupational dysfunction and mental health considering trait and state anxiety during the COVID-19 pandemic. PeerJ 10: e13443,2022.
2) Tyler J Chavez, Kirsten D Garvey, Jamie E Collins, Natalie A Lowenstein, Elizabeth G Matzkin: Resilience as a Predictor of Patient Satisfaction With Nonopioid Pain Management and Patient-Reported Outcome Measures After Knee Arthroscopy. Arthroscopy36(8): 2195-2201,2020.