第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

教育

[PR-4] ポスター:教育 4

2024年11月9日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-4-4] 作業療法士養成機関で学ぶ学生のエンプロイアビリティと自尊感情

古田 翔太, 栗原 健司郎, 柿本 将平 (学校法人同志舎リハビリテーションカレッジ島根)

【序論】
2024年には作業療法士の需要と供給のバランスは崩れ,雇用に関する競争率が高まり病院施設等の雇用主,また対象者から作業療法士が選ばれる時代になると言われている.今後は,養成校から就職先への円滑な移行が課題となり,社会および雇用側のニーズにあった作業療法士を育成することが必要とされている.エンプロイアビリティは,「労働市場価値を含んだ職業能力,即ち,労働市場における能力評価,能力開発目標の基準となる実践的な就業能力と捉えることができる.」(厚生労働省,2001)と意義づけられている.また,自尊感情は「ひとつの特殊な対象,すなわち自己 (the self) に対する肯定的または否定的な態度.」(Rosenberg,1965)とされている.これらは作業療法士のキャリア形成や職業定着において重要な要因であり,養成教育の中で意識的に教育を行うことが必要(神山,2020)とされているが,研究蓄積が少ないのが現状である.
【目的】
作業療法士養成機関で学ぶ学生のエンプロイアビリティと自尊感情の関係を調査することを目的とした.
【方法】
本校の作業療法学科に在籍している学生44名(男性21名,女性23名,平均年齢22±2.3歳)を対象にEmployability Check Sheet簡易版(以下,ECS)(厚生労働省作成)とRosenberg’s Self Esteem Scale(以下,RSES)を調査した.
ECSとRSESはそれぞれ正規性の検定を行った後,ECSとRSESの相関をspearman順位相関係数検定にて危険率5%で実施した.
研究の内容,趣旨,データの取り扱いについては紙面及び口頭にて説明し,同意を得た.
なお,本研究はリハビリテーションカレッジ島根倫理委員会の審査を経て,リハビリテーションカレッジ島根学校長より承認を得ている.
【結果】
ECSとRSESの間に有意に正の相関を認めた(rs=0.31,p=0.047).
【考察】
ECSとRSESに正の相関を認めた.自尊感情は自己の感情的評価に関連し,日常の肯定的・否定的ライフイベントに影響を受ける(高比良,1998).また,エンプロイアビリティは責任感や向上心,探求心をもった主体的な行動が,自己と他者から評価されるといったポジティブな経験を受けた場合に向上するとされている.したがって,養成校教育の中で主体的に行動し,肯定的なライフイベントの経験を多く重ねている学生は自尊感情とエンプロイアビリティが高くなっていることが考えられた.
大学で修得した専門能力の高さが,学業についての充実感を高かめることを促進する(寿山,2012)ことや,社会人基礎力に自信をもっている学生は夢や目標(キャリアデザイン)を重視している(寿山,2012)とされており,作業療法士養成教育の課程でキャリアデザインに関する教育を実施することや専門能力を身に着けて自尊感情が高まるように指導を行うことでエンプロイアビリティが高まることが示唆された.