[PR-4-6] 臨床実習中に作業療法学生が経験する「困りごと」に関する共起ネットワーク分析
【緒言】近年の臨床実習(以下,実習)は,「診療参加型実習」の推奨や「臨床実習指導者講習会」の義務化により,指導内容の差が減少し,より画一的になりつつあると思われる.しかしながら,学生(以下,OTS)は実習中に様々な障壁を感じその対処に難渋している.教員はこれらの問題を詳細に聴取し,改善に向けた取り組みを行ってきたが,OTSは,実習が不合格になることへの不安や,残りの実習期間に自分の立場が悪くなること等を恐れ,正直に語ることが難しい.今後,実習をより望ましいものにしていくためには,臨床実習指導者講習会等の体制整備と並行して,学生が直面している具体的な「困りごと」を明らかにし,解決することが重要であると考える.
【目的】作業療法学生が実習中に経験した「困りごと」について記述・考察することである.このプロセスは,実習教育の質の向上を図るために有益な視点を提供すると考える.
【対象】本研究は,ありのままの状況を正直に語ることが難しい臨床実習中に経験した「困りごと」を明らかにすることを目的としているため,合目的的で匿名性が担保されたサンプリングを行う必要がある.そこで,日本作業療法学生連盟(以下,JAOTS)に協力を依頼し,JAOTSのメーリングリストに登録された98名を対象とした.メールを介して研究の目的と概要,調査への回答をもって研究参加への同意を得たこととする旨を説明した.
【研究デザイン】Google Formにて作成したWebアンケート(以下,質問紙)を用いた質的研究とした.質問項目は,個人の特定に至らない一般情報と,臨床実習中に経験した困りごとに関する質問とした(アンケート回答期間:2023年6月1日〜6月30日).なお,実施に際しては質的研究報告ガイドラインであるStandards for Reporting Qualitative Research(SRQR)に準拠した.
【分析方法】一般情報は記述統計を実施した.困りごとについての回答は,研究者の恣意性を極力排除しつつ,データの傾向を客観的に捉えることを目的に,樋口が開発したKH-Coder(Mac用2.00e 安定版)を用いた共起ネットワーク分析を実施した.パラメーターの設定については,共同研究者と共に設定範囲を変更しながら文章全体の主要テーマを探索し,最終的にデフォルト設定(最小出現数2,上位60)を採用した.類似性の評価には,Jaccard係数(Jaccard index)を用いた.
【倫理的配慮】本研究は,仙台青葉短期大学研究倫理審査委員会にて,審査非該当(No.0506)との回答を得た.また,COI関係にある企業等はない.
【結果】JAOTSの会員16名より回答を得た.「実習中の困りごと」についての共起ネットワーク図を作成したところ,9つのサブグラフが示された.KWICコンコーダンスを参照しながら検討した結果,臨床実習中には,①教員とのやり取り,②対象者との会話の継続,③記録に要する時間,④対象者とのコミュニケーション,⑤対象者の生活や作業についての情報の把握,⑥指導者の視線,⑦評価の相談,⑧指導者以外のOTRからの指導内容や方法,⑨対象者の声の聞き取りにくさ,についての困りごとが生じていることが推察された.
【結語】今回,作業療法学生が臨床実習中に経験した「困りごと」について,9つのサブグラフを抽出することができたが,共起ネットワーク分析は,データの傾向を客観的に捉えることが可能であるものの,テキストデータを深く読み込んで潜在的な意味を見いだし,その意味を表すような新たな概念を案出する分析は不十分である.今後は,SCAT(Steps for Coding and Theorization)等の分析を組み合わせながら,客観・主観の両面から相補的な分析を行う必要がある.
【目的】作業療法学生が実習中に経験した「困りごと」について記述・考察することである.このプロセスは,実習教育の質の向上を図るために有益な視点を提供すると考える.
【対象】本研究は,ありのままの状況を正直に語ることが難しい臨床実習中に経験した「困りごと」を明らかにすることを目的としているため,合目的的で匿名性が担保されたサンプリングを行う必要がある.そこで,日本作業療法学生連盟(以下,JAOTS)に協力を依頼し,JAOTSのメーリングリストに登録された98名を対象とした.メールを介して研究の目的と概要,調査への回答をもって研究参加への同意を得たこととする旨を説明した.
【研究デザイン】Google Formにて作成したWebアンケート(以下,質問紙)を用いた質的研究とした.質問項目は,個人の特定に至らない一般情報と,臨床実習中に経験した困りごとに関する質問とした(アンケート回答期間:2023年6月1日〜6月30日).なお,実施に際しては質的研究報告ガイドラインであるStandards for Reporting Qualitative Research(SRQR)に準拠した.
【分析方法】一般情報は記述統計を実施した.困りごとについての回答は,研究者の恣意性を極力排除しつつ,データの傾向を客観的に捉えることを目的に,樋口が開発したKH-Coder(Mac用2.00e 安定版)を用いた共起ネットワーク分析を実施した.パラメーターの設定については,共同研究者と共に設定範囲を変更しながら文章全体の主要テーマを探索し,最終的にデフォルト設定(最小出現数2,上位60)を採用した.類似性の評価には,Jaccard係数(Jaccard index)を用いた.
【倫理的配慮】本研究は,仙台青葉短期大学研究倫理審査委員会にて,審査非該当(No.0506)との回答を得た.また,COI関係にある企業等はない.
【結果】JAOTSの会員16名より回答を得た.「実習中の困りごと」についての共起ネットワーク図を作成したところ,9つのサブグラフが示された.KWICコンコーダンスを参照しながら検討した結果,臨床実習中には,①教員とのやり取り,②対象者との会話の継続,③記録に要する時間,④対象者とのコミュニケーション,⑤対象者の生活や作業についての情報の把握,⑥指導者の視線,⑦評価の相談,⑧指導者以外のOTRからの指導内容や方法,⑨対象者の声の聞き取りにくさ,についての困りごとが生じていることが推察された.
【結語】今回,作業療法学生が臨床実習中に経験した「困りごと」について,9つのサブグラフを抽出することができたが,共起ネットワーク分析は,データの傾向を客観的に捉えることが可能であるものの,テキストデータを深く読み込んで潜在的な意味を見いだし,その意味を表すような新たな概念を案出する分析は不十分である.今後は,SCAT(Steps for Coding and Theorization)等の分析を組み合わせながら,客観・主観の両面から相補的な分析を行う必要がある.