第58回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-5] ポスター:教育 5

2024年11月9日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-5-1] 作業療法参加型臨床実習の利点・困難さ・課題の理解

経験豊富な臨床実習指導者の視点から

伊藤 文香, 佐々木 剛, 若山 修一 (茨城県立医療大学 保健医療学部作業療法学科)

【序論】近年,指定規則の改定により,作業療法参加型臨床実習(Clinical clerkship実習,以下;CCS実習)が推奨されており,本学においても令和5年度から4年次の実習システムを再構築した.成績判定の見直し(指導者評価項目の再編と指導者の評価は点数化せず,教員が総合的に最終判定),臨床技能チェックリストの導入(項目は日本作業療法士協会「作業療法教育の最低基準(改訂4.1版)」を参照,学生が『見学・模倣・実施』で経験した項目を色付き丸でチェックし,進捗を視覚的に確認できるようにした),実習2週目と6週目に実習の実施状況を指導者と学生双方に確認システムの導入など実習全体を再構築した.CCS実習については,指導者全員が臨床実習指導者講習会を受講しており,知識は得ているものの実際にCCS実習の形態で取り組むことの負担や戸惑いの声は少なくない.また,養成校の関与も重要視されており,学生・指導者と三位一体になって取り組む必要がある.【目的】CCS実習の形態での指導者の利点,困難さや課題を理解し,作業療法の専門性をより高める臨床教育のための知見を得ることが目的である.【方法】情報提供者は,本学の4年次実習を指導した経験があり,実習指導経験も15名以上と経験豊富な身体障害領域2名,精神障害領域で働く作業療法士3名であった.臨床経験22±2.1年であった.研究の目的や個人情報の保護などを説明し,研究同意を得た.手段は,CCS実習における利点や困難さや課題についてインタビューガイドに基づいてグループインタビューを行った.インタビューの総時間は,62分であった.分析は逐語録を作成し,少数データの分析に有効とされるSCAT(step cording and theorization) (大谷 2011)にて分析を行い,質的分析の経験のある作業療法教員2名で行った.なお,本研究は,本学の倫理委員会(承認番号1131)にて承認を得ている.【結果】指導者の利点は,《実習システム再構築による指導のしやすさ》,《学生の成績判定に関与することからの解放》が挙げられた.《事例レポートや文書作成ありきの実習からの脱却》により,《患者と触れ合う機会の増加》となり,《学生の負担軽減の確認》ができ,《自律的に学ぶ学生を認識》することにつながっていることが理解された.困難な点は《自己学習の把握》《臨床思考過程の文書表現指導》《学生に合わせた課題設定》《模倣段階の指導》《学生に対する評価基準の把握》《実習の学びの姿勢が乏しい学生の指導》が理解された.《学生の理解度を把握することが指導の中核》であることが理解され,それに関連して,《理解度を把握する手段の使い分け》が課題であり,《文書作成を伴う課題を課すこと》と《学生の経験の質を向上させること》を両立させることや,《受け入れ体制》《養成校が求める実習の質の把握》《指導者の臨床スキル》についても課題があることが理解された.また,《学生の文書作成能力向上》,学生が指導者と相互伝達を意識するなどの《実習に対する学びの姿勢》は実習の前提課題であり,事例を形式に沿ってまとめることと事例の真の理解には乖離することがあるという《臨床思考過程の文書化と理解度の乖離》があることも理解された.【考察】CCS実習では,《学生の理解度を把握することが指導の中核》であることを指導者・学生・教員ともに認識し,課題が解決できるような実習システムや連携の在り方を整える必要性が考えられた.今後,高齢者領域や経験の少ない指導者を情報提供者とした研究も必要である.