[PR-5-2] 医療系学生を対象とした「当事者参加型授業」に関する国内文献の検討
【はじめに】近年,日本の作業療法士養成教育では,従来からの医学モデルを中心とした作業療法教育だけではなく,作業を中心としたモデルを取り入れた作業療法教育を展開していく必要性が求められている.作業を中心とした作業療法を展開していくには,対象者のナラティブ(語り)から,当事者の視点や作業を理解することが重要である.当事者のナラティブに触れる教育方法の一つである当事者参加型授業は,当事者を授業に招き,当事者自身の体験の語りから学習を進めるものである.現在までに看護師養成教育においての実践が多く報告され,様々な教育効果も示されている.このように,作業療法士養成教育においても,当事者参加型授業を積極的に取り入れていく重要性が高まってきた.
【目的】本研究の目的は,医療系学生を対象とした当事者参加型授業に関する国内文献の検討を行い,授業の展開方法と教育効果についての内容を整理することである.
【方法】医中誌Web Ver.5およびCiNiiを使用し,2024年1月10日に検索を行った.検索対象期間は2011年以降とし,検索語は「当事者」,「参加」,「授業」,「講義」とした.対象論文は原著論文に限定し,医療系学生を対象とした当事者参加の授業であり,授業内容や教育効果等を見ているものとした.検索結果より,医中誌で58件,CiNiiで85件がヒットし,重複を除く117件をスクリーニングし,レビュー論文や研究目的に合致しないものを除外し,最終的に29件を分析対象とした.そして,分析対象文献を精読し,発表年,筆者名,表題,掲載誌名,対象学科,当事者の特徴,当事者数,授業目的,授業形態,結果に関する情報を抽出し,要約表を作成した.さらに,分析対象文献の「授業目的」,「授業形態」,「結果(教育効果)」については,意味のある文脈に区切ってコードを作成し,コードを意味内容の類似性に従って分類し,分類名をつけた.
【結果】対象学科は,看護学科が25件,作業療法学科が4件であった.当事者の特徴は,精神障害者が13件,神経難病者が5件,身体障害者が4件,産後・育児中の女性が2件,当事者の家族が2件,複数の当事者,トランスジェンダー,薬害被害者が各1件であった.当事者数は,1人が14件,2人以上が14件,記載なしが1件であった.授業目的は,当事者の理解が18件,当事者の理解と看護の検討が8件,作業療法技術の習得が3件であった.授業形態は,当事者の語りと質疑応答が10件,当事者の語りとグループワークが5件,当事者の語りのみが4件,当事者へのインタビューとグループワークが2件で,他に当事者による講義と質疑応答,当事者に対する作業療法介入等の組み合わせがあった.教育効果では,当事者理解の深まり,当事者に対する認識の変化,看護師としての役割の理解,知識面や技術面の修得等があった.
【考察】当事者参加型授業は,多様な背景を持つ当事者の理解を目的としたものが多く,それ以上の教育効果が得られていた.また,授業形態は,当事者の語りを主にしつつも,当事者とのグループワークを組み合わせる等,様々な工夫がなされていた.作業療法士養成教育においても,発達障害や神経難病等の当事者も対象とし,さらに,当事者の作業を語りから引き出すような場面設定等の工夫した授業展開も必要であると考える.本研究は国内文献に限定したため,今後は海外文献にまで範囲を広げ,国内外における当事者参加型授業の現状と課題を明らかにしていく.
【目的】本研究の目的は,医療系学生を対象とした当事者参加型授業に関する国内文献の検討を行い,授業の展開方法と教育効果についての内容を整理することである.
【方法】医中誌Web Ver.5およびCiNiiを使用し,2024年1月10日に検索を行った.検索対象期間は2011年以降とし,検索語は「当事者」,「参加」,「授業」,「講義」とした.対象論文は原著論文に限定し,医療系学生を対象とした当事者参加の授業であり,授業内容や教育効果等を見ているものとした.検索結果より,医中誌で58件,CiNiiで85件がヒットし,重複を除く117件をスクリーニングし,レビュー論文や研究目的に合致しないものを除外し,最終的に29件を分析対象とした.そして,分析対象文献を精読し,発表年,筆者名,表題,掲載誌名,対象学科,当事者の特徴,当事者数,授業目的,授業形態,結果に関する情報を抽出し,要約表を作成した.さらに,分析対象文献の「授業目的」,「授業形態」,「結果(教育効果)」については,意味のある文脈に区切ってコードを作成し,コードを意味内容の類似性に従って分類し,分類名をつけた.
【結果】対象学科は,看護学科が25件,作業療法学科が4件であった.当事者の特徴は,精神障害者が13件,神経難病者が5件,身体障害者が4件,産後・育児中の女性が2件,当事者の家族が2件,複数の当事者,トランスジェンダー,薬害被害者が各1件であった.当事者数は,1人が14件,2人以上が14件,記載なしが1件であった.授業目的は,当事者の理解が18件,当事者の理解と看護の検討が8件,作業療法技術の習得が3件であった.授業形態は,当事者の語りと質疑応答が10件,当事者の語りとグループワークが5件,当事者の語りのみが4件,当事者へのインタビューとグループワークが2件で,他に当事者による講義と質疑応答,当事者に対する作業療法介入等の組み合わせがあった.教育効果では,当事者理解の深まり,当事者に対する認識の変化,看護師としての役割の理解,知識面や技術面の修得等があった.
【考察】当事者参加型授業は,多様な背景を持つ当事者の理解を目的としたものが多く,それ以上の教育効果が得られていた.また,授業形態は,当事者の語りを主にしつつも,当事者とのグループワークを組み合わせる等,様々な工夫がなされていた.作業療法士養成教育においても,発達障害や神経難病等の当事者も対象とし,さらに,当事者の作業を語りから引き出すような場面設定等の工夫した授業展開も必要であると考える.本研究は国内文献に限定したため,今後は海外文献にまで範囲を広げ,国内外における当事者参加型授業の現状と課題を明らかにしていく.