[PR-5-4] 人間作業モデルの実践経験がOTRに与える影響に関する探索的研究
SCATを用いた質的研究
【背景】社会情勢の変化により,作業療法士への要請は質・量ともに拡大傾向にある.それに伴い『作業療法士教育の最低基準』が改訂され,作業療法理論の教授と実践適応が必要であると明記された.しかし,OTRは理論を高く評価しても実践適応していないと報告されている.理論の実践適応の保証にはOTRの強力なコンピテンシーが重要であるとされる.また作業を中心とした実践は,他職種と差別化する特徴であるが,この実践には作業療法理論の教育がその中核に位置づけられる.一方で,これらの教育はエビデンスが不足している状態であり,学習者の経験に関する研究は教育プログラム内でどのように作業が教えられ,伝えられるかについて役立つとされている.代表的理論にはMOHOがあるが, OTRに与える影響は,職業同一性の形成,実践の質の向上といった影響がアンケート調査を中心に報告されている.一方で質的研究を用いた報告はされていない. 本研究の目的はMOHOの実践経験がOTRにどのような影響を与えているのかを探索することである.
【方法】◎研究デザイン:質的研究 ◎対象者: サンプル数6名◎ 選定基準:MOHOを学んだことがあり,かつ,日本作業行動学会の学会誌『作業行動研究』に研究報告を提出したことがある者 ◎データ収集:半構造化面接,インタビューガイドを使用,個別インタビュー90分間 ◎分析手法:SCAT,本研究は大学院の研究倫理審査委員会の承認を得ており,研究参加者に個人情報保護と倫理的配慮について説明し同意を得て実施した.
【結果】SCATの分析より得られた構成概念からカテゴリーを生成し, 138個の「小カテゴリー」21個の[中カテゴリ—]『5の大カテゴリー』が生成された.
①『職業同一性が揺らぐ経験』—OTRは自身の職業に[曖昧な内的期待]しか持たず,他職種からは[抑圧的な外的期待]がかけられていたため[専門職の存在意義への疑念]を感じていた.②『作業基盤の実践を振り返る経験』—OTRはMOHOに基づきながら[作業基盤の実践の成功体験]や[作業基盤の実践の失敗体験]について振り返っていた.[CLの語りに注目した実践の振り返り]を通して[作業基盤の実践の落とし穴]に気付き,また[作業療法実践効果の解釈]が可能となっていた.③『MOHOのリーズニングに基づく実践の経験』—OTRはMOHO評価法を用いて[CLとの現状認識の共有]をしながら[複雑な問題状況へ対峙]していた.そして[漸次的な変化していく実践状況の整理]をしながら[暫定的な目標設定]を行い,特定された問題に対しては[柔軟な問題解決]を行っていた.④『作業療法実践の正当性の承認を受ける経験』—OTRは講習会への参加を通して[言説を共有する同職種からの承認]を受けていた.また[他者に向けた作業療法実践の説明]を通して[外部からの承認]を受けていた.⑤『領域横断的な独自性の発見』−OTRは[実践モデルの内面化]を通して[認識論の転換]を起こしていた.そして[専門性の再定義]をし,所属領域に囚われない[領域横断の専門職観]を形成していた
【考察】OTRはクライアントの変化に対して「作業参加への原因帰属」を高め「作業と健康の関連の認識形成」をしていたが,これはMOHOのダイナミックな内的適応の視点(Wong,2016)が人間作業という複雑な現象理解を支援したためであると考えられた.またOTRは「人の見方の違い」や「理論に基づく臨床推論」に対して『領域横断的な独自性の発見』をしていたが,これはMOHOのリーズニング基づく省察的実践の経験(Schön,1983)によって実践の見た目の“具体性”から,作業療法哲学に基づく実践(Fisher,2013)という“抽象性”に対して専門職の独自性を見出したためであると考えられた.
【方法】◎研究デザイン:質的研究 ◎対象者: サンプル数6名◎ 選定基準:MOHOを学んだことがあり,かつ,日本作業行動学会の学会誌『作業行動研究』に研究報告を提出したことがある者 ◎データ収集:半構造化面接,インタビューガイドを使用,個別インタビュー90分間 ◎分析手法:SCAT,本研究は大学院の研究倫理審査委員会の承認を得ており,研究参加者に個人情報保護と倫理的配慮について説明し同意を得て実施した.
【結果】SCATの分析より得られた構成概念からカテゴリーを生成し, 138個の「小カテゴリー」21個の[中カテゴリ—]『5の大カテゴリー』が生成された.
①『職業同一性が揺らぐ経験』—OTRは自身の職業に[曖昧な内的期待]しか持たず,他職種からは[抑圧的な外的期待]がかけられていたため[専門職の存在意義への疑念]を感じていた.②『作業基盤の実践を振り返る経験』—OTRはMOHOに基づきながら[作業基盤の実践の成功体験]や[作業基盤の実践の失敗体験]について振り返っていた.[CLの語りに注目した実践の振り返り]を通して[作業基盤の実践の落とし穴]に気付き,また[作業療法実践効果の解釈]が可能となっていた.③『MOHOのリーズニングに基づく実践の経験』—OTRはMOHO評価法を用いて[CLとの現状認識の共有]をしながら[複雑な問題状況へ対峙]していた.そして[漸次的な変化していく実践状況の整理]をしながら[暫定的な目標設定]を行い,特定された問題に対しては[柔軟な問題解決]を行っていた.④『作業療法実践の正当性の承認を受ける経験』—OTRは講習会への参加を通して[言説を共有する同職種からの承認]を受けていた.また[他者に向けた作業療法実践の説明]を通して[外部からの承認]を受けていた.⑤『領域横断的な独自性の発見』−OTRは[実践モデルの内面化]を通して[認識論の転換]を起こしていた.そして[専門性の再定義]をし,所属領域に囚われない[領域横断の専門職観]を形成していた
【考察】OTRはクライアントの変化に対して「作業参加への原因帰属」を高め「作業と健康の関連の認識形成」をしていたが,これはMOHOのダイナミックな内的適応の視点(Wong,2016)が人間作業という複雑な現象理解を支援したためであると考えられた.またOTRは「人の見方の違い」や「理論に基づく臨床推論」に対して『領域横断的な独自性の発見』をしていたが,これはMOHOのリーズニング基づく省察的実践の経験(Schön,1983)によって実践の見た目の“具体性”から,作業療法哲学に基づく実践(Fisher,2013)という“抽象性”に対して専門職の独自性を見出したためであると考えられた.