[PR-5-5] 3Dプリンタを活用した作業療法教育プログラムの2年間の効果
【はじめに】
自助具の作製では,対象者に合わせた自助具を考案する必要がある.そのためには対象者の疾患を理解し,課題となる生活行為を把握し,自助具を作製し,効果を検証するプロセスがある.
近年,作業療法養成校では,3Dプリント自助具に関する教育が始まっている.しかし,先行研究の教育プログラムは,WEBに公開されている3Dデータをダウンロードすること,独自のソフトウェアを用いてデータを改変して3Dプリンタを使用する内容であり,本来の自助具作製の思考と実践のプロセスは含まれていない.そこで,我々は3Dプリンタが常時設置され,学生の空き時間に自由に使用できるファブスペースを整備し,自助具作製の思考と実践を含んだ教育プログラムを開発した.本研究の目的は,開発した教育プログラムの効果と,プログラムの工夫による学びの変化を明らかにすることである.
【方法】
対象は本研究に同意が得られた作業療法学生で,欠損値のない2022年度3年生37名,2023年度2年生39名,およびの3年生37名の計113名を分析対象とした.
教育プログラムは,(1) 3Dプリンタでの自助具作製に関する内容を講義と演習で学ぶ,(2)対象疾患や課題となる生活行為の設定,自助具の構想,3Dデータ作製(以下,モデリング),3Dプリントの実施,効果検証をグループで行い,発表会で共有することから構成される.さらに2022年度の調査結果から,対象者の困っている生活行為を解決するための自助具の提案やモデリングの技術が難しいことがわかったため,2023年度では高齢者が困っている生活行為を教員から例示することや,モデリング練習の時間数を増やすなどの対応を加えた.
教育プログラムの効果を評価するために,藤井ら(2002)の職業的アイデンティティ尺度(以下,PI)と澤田ら(2021)を参考に作成した3Dプリンタでの自助具作製の知識・技術の習得度に関するアンケート(以下,アンケート)を実施した.なお,本研究は所属機関の倫理委員会により承認された.
【結果】
PIでは,「医療職観の確立(p<.01)」「医療職として必要とされることへの自負(p<.05)」の項目が有意に向上し,「医療職の選択と成長への自信」の項目得点の増加傾向がみられた.アンケートでは,「3Dプリンタは作業療法で活用できると思うか」の項目で肯定的な考えが有意に増加し(p<.05),「3Dプリント自助具は障害者,高齢者の生活の質の向上に役立つか」「3Dプリント自助具づくりを学びたい」の項目得点の増加傾向がみられた.2022年と2023年の教育プログラムの比較では,3Dモデリングの難易度を聞く項目の得点が有意に増加した.「対象者に合せた3Dプリント自助具を考えることは難しかったか」については,難しかったとする回答が多いものの,2023年度では少数であるが簡単であったとする回答がみられた.
【考察】
3Dプリンタでの自助具作製の知識・技術の習得,対象者をイメージし,困難となる生活行為に思いを巡らせ苦心しながらも,イメージした自助具が形となる経験は,学生が将来作業療法士として必要とされる自分を信じる気持ちを高め,作業療法士を選択したことを正しいと信じることを強くしていると考えられる.このことから,本教育プログラムは有効であったことが明らかとなった.また,2023年度のプログラムの工夫は,少なからず「対象者の困っている生活行為を解決するための自助具の提案」,「モデリングの技術」が難しいと考える度合いを弱めることに繋がった.しかし,引続きプログラムの工夫や修正が必要と考えられた.
自助具の作製では,対象者に合わせた自助具を考案する必要がある.そのためには対象者の疾患を理解し,課題となる生活行為を把握し,自助具を作製し,効果を検証するプロセスがある.
近年,作業療法養成校では,3Dプリント自助具に関する教育が始まっている.しかし,先行研究の教育プログラムは,WEBに公開されている3Dデータをダウンロードすること,独自のソフトウェアを用いてデータを改変して3Dプリンタを使用する内容であり,本来の自助具作製の思考と実践のプロセスは含まれていない.そこで,我々は3Dプリンタが常時設置され,学生の空き時間に自由に使用できるファブスペースを整備し,自助具作製の思考と実践を含んだ教育プログラムを開発した.本研究の目的は,開発した教育プログラムの効果と,プログラムの工夫による学びの変化を明らかにすることである.
【方法】
対象は本研究に同意が得られた作業療法学生で,欠損値のない2022年度3年生37名,2023年度2年生39名,およびの3年生37名の計113名を分析対象とした.
教育プログラムは,(1) 3Dプリンタでの自助具作製に関する内容を講義と演習で学ぶ,(2)対象疾患や課題となる生活行為の設定,自助具の構想,3Dデータ作製(以下,モデリング),3Dプリントの実施,効果検証をグループで行い,発表会で共有することから構成される.さらに2022年度の調査結果から,対象者の困っている生活行為を解決するための自助具の提案やモデリングの技術が難しいことがわかったため,2023年度では高齢者が困っている生活行為を教員から例示することや,モデリング練習の時間数を増やすなどの対応を加えた.
教育プログラムの効果を評価するために,藤井ら(2002)の職業的アイデンティティ尺度(以下,PI)と澤田ら(2021)を参考に作成した3Dプリンタでの自助具作製の知識・技術の習得度に関するアンケート(以下,アンケート)を実施した.なお,本研究は所属機関の倫理委員会により承認された.
【結果】
PIでは,「医療職観の確立(p<.01)」「医療職として必要とされることへの自負(p<.05)」の項目が有意に向上し,「医療職の選択と成長への自信」の項目得点の増加傾向がみられた.アンケートでは,「3Dプリンタは作業療法で活用できると思うか」の項目で肯定的な考えが有意に増加し(p<.05),「3Dプリント自助具は障害者,高齢者の生活の質の向上に役立つか」「3Dプリント自助具づくりを学びたい」の項目得点の増加傾向がみられた.2022年と2023年の教育プログラムの比較では,3Dモデリングの難易度を聞く項目の得点が有意に増加した.「対象者に合せた3Dプリント自助具を考えることは難しかったか」については,難しかったとする回答が多いものの,2023年度では少数であるが簡単であったとする回答がみられた.
【考察】
3Dプリンタでの自助具作製の知識・技術の習得,対象者をイメージし,困難となる生活行為に思いを巡らせ苦心しながらも,イメージした自助具が形となる経験は,学生が将来作業療法士として必要とされる自分を信じる気持ちを高め,作業療法士を選択したことを正しいと信じることを強くしていると考えられる.このことから,本教育プログラムは有効であったことが明らかとなった.また,2023年度のプログラムの工夫は,少なからず「対象者の困っている生活行為を解決するための自助具の提案」,「モデリングの技術」が難しいと考える度合いを弱めることに繋がった.しかし,引続きプログラムの工夫や修正が必要と考えられた.