[PR-6-5] 当院の回復期病棟における上肢機能班の役割について
【はじめに】
近年,脳卒中後の麻痺側上肢機能への訓練は,有効とされる治療方法が数多く報告されている.その為,セラピストは経験値に関わらず,症例に応じた最適な治療手技の選択が求められる.2021年より,当院では上肢機能班を発足し,回復期リハビリテーション病棟に入棟する脳卒中片麻痺患者を対象に同班によるラウンドと検討会を行っている.その活動では,患者とセラピストが共有した目標を達成するため適切な治療選択や,治療の難易度設定等の具体的な介入方法を検討している.今回,Fugl-Meyer Assessment for Upper Extremity(以下,FMA-UE)の予測値を上回り目標を達成した一例を通し,上肢機能班の役割について考察する.本発表に際し,本人の承諾を得ている.
【当院における上肢機能班の活動内容】
対象:担当セラピストが治療の選択や具体的な介入方法で悩んでいる脳卒中片麻痺患者
検討会前準備:①担当セラピストが,対象者と共有している上肢機能における目標,FMA-UE,Action Research Arm Test (以下ARAT),Motor Activity Log(以下MAL) ,FIMの評価結果を専用の記録用紙に記載する.②①の結果を上肢機能班員と担当療法士にて共有する.③FMA-UEは予測値を確認する.④ラウンドとして,上肢機能班員2名が対象者の診療場面を確認し動画撮影する.検討会内容:担当セラピストを中心に,上肢機能班員と目標設定や治療選択,具体的な介入方法について検討する.頻度:1~2回/月
【事例紹介】
事例は,被殻出血で入院した40代の男性.急性期病院で加療後,リハビリテーション目的で当院に転院した.発症から4週目のFMA-UEは30点,1ヵ月後の予測値は61点,ARATは22点,MALはAmount of Use(以下AOU)は1.00点,Quality of Movement(以下QOM)は1.14点であった.本人より「髪を洗う時に手に力が入りづらい」との発言が聞かれていた.肩甲骨の可動性は低下しており肩の外旋を伴った挙上動作が不十分であった.経験年数3年目の担当セラピストは,上記の目標を達成する為の具体的な治療選択について上肢機能班に検討を依頼した.
【経過】
発症4週目に上肢機能ラウンドを実施し,目標を達成する為の具体的な治療選択について検討した.検討した内容は①治療方法は課題指向型訓練を中心に組み立てる.具体的な例として,座位にて麻痺手で把持したブロックを肩外転,2nd肢位による外旋位で背部へリリースする運動を実施する.②洗髪の指導は,頭頚部を前屈させ指先に力が入りやすい姿勢にて実施するよう促す.③ラウンド以前まで実施していた電気治療と肩装具の使用は一旦終了する.左記3項目が列挙された.検討会後より,上記の介入方法を実施した.8週目には麻痺手による頭頂部までのリーチが可能となり,本人の希望した力強い洗髪動作を獲得した.
【結果】
最終評価はFMA-UEは65点であり,ラウンド実施前の予測値を上回った.ARATは57点,MALのAOUは4.1点,QOMは4.3点と改善を認めた.洗髪時には「手に力が入るようになりました」と発言が聞かれ「両手で力強く洗髪できる」という目標を達成した.
【考察】
上肢機能班では,電気刺激療法や課題指向型訓練等の有効とされる訓練方法について効果的なプログラムの立案や訓練量,介入期間などを検討している.今回,本事例に上肢機能班によるラウンドと検討会を実施し,上肢機能の改善と目標達成を図ることができた.同班の活動は,経験の浅いスタッフへのon-the-job trainingによる実践的な指導の機会になっている.また,多くの事例を共有することで上肢機能班だけでなくスタッフ全体の治療技術の向上にも寄与している.
近年,脳卒中後の麻痺側上肢機能への訓練は,有効とされる治療方法が数多く報告されている.その為,セラピストは経験値に関わらず,症例に応じた最適な治療手技の選択が求められる.2021年より,当院では上肢機能班を発足し,回復期リハビリテーション病棟に入棟する脳卒中片麻痺患者を対象に同班によるラウンドと検討会を行っている.その活動では,患者とセラピストが共有した目標を達成するため適切な治療選択や,治療の難易度設定等の具体的な介入方法を検討している.今回,Fugl-Meyer Assessment for Upper Extremity(以下,FMA-UE)の予測値を上回り目標を達成した一例を通し,上肢機能班の役割について考察する.本発表に際し,本人の承諾を得ている.
【当院における上肢機能班の活動内容】
対象:担当セラピストが治療の選択や具体的な介入方法で悩んでいる脳卒中片麻痺患者
検討会前準備:①担当セラピストが,対象者と共有している上肢機能における目標,FMA-UE,Action Research Arm Test (以下ARAT),Motor Activity Log(以下MAL) ,FIMの評価結果を専用の記録用紙に記載する.②①の結果を上肢機能班員と担当療法士にて共有する.③FMA-UEは予測値を確認する.④ラウンドとして,上肢機能班員2名が対象者の診療場面を確認し動画撮影する.検討会内容:担当セラピストを中心に,上肢機能班員と目標設定や治療選択,具体的な介入方法について検討する.頻度:1~2回/月
【事例紹介】
事例は,被殻出血で入院した40代の男性.急性期病院で加療後,リハビリテーション目的で当院に転院した.発症から4週目のFMA-UEは30点,1ヵ月後の予測値は61点,ARATは22点,MALはAmount of Use(以下AOU)は1.00点,Quality of Movement(以下QOM)は1.14点であった.本人より「髪を洗う時に手に力が入りづらい」との発言が聞かれていた.肩甲骨の可動性は低下しており肩の外旋を伴った挙上動作が不十分であった.経験年数3年目の担当セラピストは,上記の目標を達成する為の具体的な治療選択について上肢機能班に検討を依頼した.
【経過】
発症4週目に上肢機能ラウンドを実施し,目標を達成する為の具体的な治療選択について検討した.検討した内容は①治療方法は課題指向型訓練を中心に組み立てる.具体的な例として,座位にて麻痺手で把持したブロックを肩外転,2nd肢位による外旋位で背部へリリースする運動を実施する.②洗髪の指導は,頭頚部を前屈させ指先に力が入りやすい姿勢にて実施するよう促す.③ラウンド以前まで実施していた電気治療と肩装具の使用は一旦終了する.左記3項目が列挙された.検討会後より,上記の介入方法を実施した.8週目には麻痺手による頭頂部までのリーチが可能となり,本人の希望した力強い洗髪動作を獲得した.
【結果】
最終評価はFMA-UEは65点であり,ラウンド実施前の予測値を上回った.ARATは57点,MALのAOUは4.1点,QOMは4.3点と改善を認めた.洗髪時には「手に力が入るようになりました」と発言が聞かれ「両手で力強く洗髪できる」という目標を達成した.
【考察】
上肢機能班では,電気刺激療法や課題指向型訓練等の有効とされる訓練方法について効果的なプログラムの立案や訓練量,介入期間などを検討している.今回,本事例に上肢機能班によるラウンドと検討会を実施し,上肢機能の改善と目標達成を図ることができた.同班の活動は,経験の浅いスタッフへのon-the-job trainingによる実践的な指導の機会になっている.また,多くの事例を共有することで上肢機能班だけでなくスタッフ全体の治療技術の向上にも寄与している.