第58回日本作業療法学会

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ポスター

教育

[PR-6] ポスター:教育 6

2024年11月9日(土) 16:30 〜 17:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-6-6] 実践報告 インストラクショナルデザインを活用した作業療法管理学の授業設計

西村 慈子1,2 (1.医療法人 弘仁会 熊本総合医療リハビリテーション学院 非常勤講師, 2.熊本大学大学院 社会文化科学教育部 教授システム学専攻 博士前期課程 大学院生)

【はじめに】
 Society5.0で活躍できる作業療法士を養成できる実務家教員を目指し,文部科学省「Society5.0に対応した高度技術人材育成事業」の1つである,産学連携教育イノベーター育成プログラム2020 を修了させた.インストラクショナルデザイン(以下ID)を通して,作業療法士としての実践知や経験知に基づいた授業設計を考案した.病院勤務であった作業療法士がIDと出会い実務家教員になり,考案した授業設計を作業療法管理学に活かしている.その概要を報告する.
【目的】
 1)IDとは熊本大学大学院社会文化科学教育部教授システム学専攻で学ぶ事ができる,教育の効果・効率・魅力を高めるために研究された学術知であり,学習成果のエビデンスに基づく効果的な教育実践法をその特徴としている.2)本研究の目的は,医学教育や学校教育でも活用されているIDを作業療法教育において活用することでの有用性について考察することである.
【方法】
 対象は本校の作業療法学科3年次生.方法は作業療法管理学においてIDを活用した授業設計を実施した.学習目標・評価方法については学習成果の5分類,カークパトリックの4段階評価モデルを使用した.学習方法はIDの第1原理,ガジェの9教授事象を使用.授業全体にARCSモデルを使用.設計の手順はADDIEモデルを使用.設計思想は時間モデル,アンドラゴジーを使用.
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に沿った研究であり,所属機関には口頭にて本報告の目的と内容の説明を行い,同意を得た.また,発表に際し,事前に主催者の承諾を得ている.開示すべきCOIはない.
【結果】
 ID活用による作業療法教育に及ぼす「効果・効率・魅力的に」に着目した.
(1)効果 学習方法はIDの第1原理,ガジェの9教授事象を,設計の手順はADDIEモデルを,設計思想は時間モデル,アンドラゴジーを使用することにより,学びたさや学びやすさを追求する授業設計ができた.未来のヘルスケア,海外の作業療法,地方創生プログラム演習,デジタルを融合させた社会・地域課題に解決に向けての成果発表会,パブリックコメント提出,国試対策と,内容豊富な授業設計であるが学生にとって個性発揮の場になっている.(2)効率 学習目標・評価方法については学習成果の5分類,カークパトリックの4段階評価モデルを使用することにより無駄のない授業設計ができた.また,テキストで使用の「大庭潤平編著:作業療法管理学入門 第2版.医歯薬出版,2021」は学習課題も明確に表記されており効率的に授業設計が出来ている.(3)魅力的に 授業全体にARCSモデルを使用することにより学習意欲を高める授業設計ができた.90分の講義は①講義30分②反転授業,ディスカッション,グループワーク40分③学習ポートフォリオ,川柳の作成20分で構成.学生は眠ることができない授業設計である.
【考察】
 大庭は,これから期待させる作業療法の領域について「まだまだ可能性は無限である.あなたのアイデアや行動が,作業療法の領域を開発・拡大させることを期待したい」と述べている.私は,大学院での学びを継続し大庭が述べているようにIDを融合させ作業療法の領域の開発・拡大を目指している.今回,医学教育や学校教育でも活用されているIDを,作業療法教育に活用することの有用性が示唆された.
【引用文献】1.大庭潤平編著:作業療法管理学入門 第2版.医歯薬出版,2021