第58回日本作業療法学会

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教育

[PR-8] ポスター:教育 8

2024年11月10日(日) 09:30 〜 10:30 ポスター会場 (大ホール)

[PR-8-1] 卒前卒後教育の中でMTDLPを通した学びと経験

志方 友香, 大坪 建, 北川 智恵 (医療法人和仁会 和仁会病院)

【はじめに】
 日本作業療法協会は,作業療法教育ガイドライン2019の中で卒前教育の到達目標として「自ら学ぶ力を育て,作業療法の基本的な知識と技能を習得すること」と述べている.到達目標を効率よく達成する為のツールとして生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)が推奨されている.MTDLPは「OTを見える化」「目標を共有できる」ツールとして知られ,MTDLPを活用した作業療法参加型臨床実習は利点が多いとして多数の報告がされている.卒後も「MTDLPの研修制度」の基礎研修から実践研修と研鑽を積むことで,臨床力を高めキャリアアップを意識した卒後教育へ繋げることが出来ると述べられている.今回は卒前卒後教育3年間の中でMTDLPを通して得た知見を<学内教育><新人教育><実践教育>と区分してまとめ,考察を交え報告する.
【内容と経過】
<学内教育>基礎知識構築の為のMTDLPの講義(90分×4コマ)と8週間の作業療法参加型臨床実習であった.臨床実習では臨床実習指導者(以下,CE)が予め作成したスケジュールに沿って対象者に対してのシートを筆者とCEが一緒に作成し学びを深めた.
<新人教育>応用知識(トップダウンアプローチと臨床思考過程)の修学に向けて,県士会主催の現職者研修会MTDLP基礎研修に参加した.また,当院で行われている1~3年目を対象としたMTDLP勉強会に参加した.当院で行われている勉強会では各シートの作成を行い,先輩OTRによるフィードバックが行われ,最終的に事例登録を目標として取り組んだ.
<実践教育>高位脊髄損傷の患者に対してMTDLPを用いて介入を行い,院内でのOTミーティング,PT/OT/STの若年者勉強会,県士会主催の勉強会で報告し修正を重ね,県士会学会にて発表を行うことで臨床思考過程の理解を深めていった.
【MTDLPを使用する利点と課題】
 MTDLPは,臨床思考過程を可視化できるツールである.対象者の目標を明確にすることができ,課題を抽出したうえで優先順位をつける為,より効率的な介入が可能となる.しかしその反面,卒前教育の学内学習のみでは臨床現場でどのように利用していけば良いのかが分かりにくい現状もある.MTDLPを使用した作業療法参加型実習を実施している病院・施設がまだ多くない為,MTDLPに触れる機会が少ない学生が多いと感じる.また,卒後教育である県士会主催の基礎研修ではMTDLPを十分に理解するには時間が不足しており,受講を終えると自己研鑽の場でしか学ぶ機会がない.
【考察・まとめ】
 筆者は,上記にある卒前教育の到達目標はMTDLPを使用した実習にて臨床思考過程を可視化し,CEや対象者との目標の共有が行いやすかったことで達成し,新人教育・実践教育を通して臨床思考過程の構築が出来たと考える.また課題に対しては,臨床実習や新人教育にMTDLPを導入する為に教育する側や各組織が意識向上し組織内変容を行っていく事も今まで以上に必要と考える.
先行報告(松本ら 2019)において,MTDLPシートを上手く活用することは学生の自己効力感や事例の満足度の向上にも繋がる可能性があるとしている.今回の経験は自身の自己効力感や対象者・他職種・OTRとの目標共有ができ,チームワークの構築による各方面の満足度の向上にも繋がったと考える.そして卒前卒後教育において,MTDLPを活用することは経験が浅いセラピストのトップダウンアプローチや臨床思考過程の構築に有用であり,臨床力を高めキャリアアップにも繋がると考える.