[PR-8-3] 多職種における国家試験対策の有効性に関する報告
異なる専門性が融合することで生まれる国家試験支援の新たな可能性
【はじめに】
第57回作業療法士国家試験の合格率は新卒者が91.3%で,既卒者は44.2%と既卒者の合格率は低い.筆者らはこれまで既卒者に対し,通信と通学で国家試験の学習支援を行ってきたが,学生が合格水準まで成績を高めるために,学習の理解度を深める必要性を感じていた.今回,既卒者でも多職種による講義は学生の理解度を深め,成績が向上すると考え,多職種による講義を増やすことができた.本研究では多職種による授業の効果を20xx年度と20xx+1年度を比較して評価することを目的とする.
【方法】
20XX+1年度の授業は5月より全51回(4080分間)行った.このうち多職種(臨床検査技師,放射線技師,義肢装具士,言語聴覚士,理学療法士)の講義は計37回,2960分間で昨年と比較し7回(560分間)増加した.20XX年度,20XX+1年度とも,授業の後は,アクティブラーニングにより定着を促した.対象は昨年度,当校を利用した学生及び本年度利用している学生とし,同意が得られた学生のうち,模試のデータが提供された51人についてXX年受験群とXX+1年受験群に分けた.入学時の学力評価及び,11月以降の模試を用いて成績を評価し,授業の感想について提出された内容も分析した.
【倫理的配慮】
模試やアンケートの結果について,個人を特定できない状態で使用することを説明し同意を得た.
【結果】
入学時の学力は初回(5月まで)と2回目(7月まで)の成績を平均し比較した結果,XX年受験群が146.9(95%cl:130.4-163.4),XX+1年度受験群が162.8(95%cl:155.9-169.7)で有意差はない.また,11月に実施した1回目の模試の結果は170.2(95%cl:134.3-206.1)でXX+1年受験群が147.0(95%cl:139.0-155.0)でXX+1年受験群が低い傾向があるが,有意差なかった.1月後に行った2回目の模試の結果はXX年受験群が145.4(95%cl:133.7-157.1)でXX+1年受験群158.7(95cl:150.9-166.5)で有意差が認められなかった.模試について2回目と1回目の差を従属変数として回帰すると年度による差は優に高く,入学時の成績によって調整しても,XX+1年度受験生の方が,得点が増えていることが認められた.学生のアンケートより理解が深まったと答えたのは言語聴覚士85.4%,義肢装具士70.8%,放射線技師83.3%,臨床検査技師97.9%となっており,得点と理解度も関連した.
【考察】
入学時の学力はXX年度受験群とXX+1年度受験群に有意差がなく,XX+1年度受験群の方が入学時の成績で調整しても点数差があったことは,多職種による講義が全体の得点を向上させる効果があったことが推測される.これは多職種が共同して講義を行うことで知識と技術を相互に補完した可能性がある.奈良らは医学部の教育について,カナダやドイツでも多職種が連携しているとし,国家試験でも多職種との連携を重視した内容に変化させることで医療の質を高める取り組みが推進されている.今後日本においても多職種が連携して教育することは必要であり,国家試験の視点からも,学習の理解を深める可能性がある.多職種が協力して国家試験支援を行うことで,現場での実務でも役立つ知識や視点を獲得する事も可能であり,学習者にとっても貴重な経験となると考える.本研究は限られた学生数で行っているため,十分な検討ができていない可能性がある.また,2年間のデータ比較であるため,今後学生数及び観察期間を増やし行きたい.
第57回作業療法士国家試験の合格率は新卒者が91.3%で,既卒者は44.2%と既卒者の合格率は低い.筆者らはこれまで既卒者に対し,通信と通学で国家試験の学習支援を行ってきたが,学生が合格水準まで成績を高めるために,学習の理解度を深める必要性を感じていた.今回,既卒者でも多職種による講義は学生の理解度を深め,成績が向上すると考え,多職種による講義を増やすことができた.本研究では多職種による授業の効果を20xx年度と20xx+1年度を比較して評価することを目的とする.
【方法】
20XX+1年度の授業は5月より全51回(4080分間)行った.このうち多職種(臨床検査技師,放射線技師,義肢装具士,言語聴覚士,理学療法士)の講義は計37回,2960分間で昨年と比較し7回(560分間)増加した.20XX年度,20XX+1年度とも,授業の後は,アクティブラーニングにより定着を促した.対象は昨年度,当校を利用した学生及び本年度利用している学生とし,同意が得られた学生のうち,模試のデータが提供された51人についてXX年受験群とXX+1年受験群に分けた.入学時の学力評価及び,11月以降の模試を用いて成績を評価し,授業の感想について提出された内容も分析した.
【倫理的配慮】
模試やアンケートの結果について,個人を特定できない状態で使用することを説明し同意を得た.
【結果】
入学時の学力は初回(5月まで)と2回目(7月まで)の成績を平均し比較した結果,XX年受験群が146.9(95%cl:130.4-163.4),XX+1年度受験群が162.8(95%cl:155.9-169.7)で有意差はない.また,11月に実施した1回目の模試の結果は170.2(95%cl:134.3-206.1)でXX+1年受験群が147.0(95%cl:139.0-155.0)でXX+1年受験群が低い傾向があるが,有意差なかった.1月後に行った2回目の模試の結果はXX年受験群が145.4(95%cl:133.7-157.1)でXX+1年受験群158.7(95cl:150.9-166.5)で有意差が認められなかった.模試について2回目と1回目の差を従属変数として回帰すると年度による差は優に高く,入学時の成績によって調整しても,XX+1年度受験生の方が,得点が増えていることが認められた.学生のアンケートより理解が深まったと答えたのは言語聴覚士85.4%,義肢装具士70.8%,放射線技師83.3%,臨床検査技師97.9%となっており,得点と理解度も関連した.
【考察】
入学時の学力はXX年度受験群とXX+1年度受験群に有意差がなく,XX+1年度受験群の方が入学時の成績で調整しても点数差があったことは,多職種による講義が全体の得点を向上させる効果があったことが推測される.これは多職種が共同して講義を行うことで知識と技術を相互に補完した可能性がある.奈良らは医学部の教育について,カナダやドイツでも多職種が連携しているとし,国家試験でも多職種との連携を重視した内容に変化させることで医療の質を高める取り組みが推進されている.今後日本においても多職種が連携して教育することは必要であり,国家試験の視点からも,学習の理解を深める可能性がある.多職種が協力して国家試験支援を行うことで,現場での実務でも役立つ知識や視点を獲得する事も可能であり,学習者にとっても貴重な経験となると考える.本研究は限られた学生数で行っているため,十分な検討ができていない可能性がある.また,2年間のデータ比較であるため,今後学生数及び観察期間を増やし行きたい.