第58回日本作業療法学会

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企画セミナー

[S-1] 企画セミナー1
Review Circle on Rehabilitation for Dementia(RCRD)

Sat. Nov 9, 2024 6:10 PM - 7:10 PM A会場 (特別会議場)

司会:久米 裕(秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻作業療法学講座)

[S-1-1] 認知症の人とその家族に作業療法が貢献できること -行動心理症状を解決し生活の質向上に貢献する-

久米 裕1, 永田 優馬2, 河合 晶子3 (1.秋田大学/秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻作業療法学講座, 2.大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室, 3.藤田医科大学 七栗記念病院 地域包括支援センター)

我々Review Circle on Rehabilitation for Dementia(RCRD)に所属する臨床家・研究者らは, 認知症作業療法について様々な臨床経験・研究結果に基づいたアプローチ方法を模索してきた。本セミナーでは, 学会のテーマに沿うように 認知症の作業療法の「効果を最大化する知識・技術・環境」について考えたい。認知症の作業療法は, 主に本人の視点と家族の視点の両側面に対してアプローチする。その両者に大きな影響を与えるのが妄想や幻覚, 興奮などといった行動心理症状である。行動心理症状は本人を苦しめるだけでなく家族など周囲の支援者に対しても影響を与え生活の質を低下させる要因にもなりえる。
 これまで, 認知症ケア・リハビリテーションは支援者の経験値によるところが大きかったように思うが, 今回のセミナーではこれまでの臨床実践の知見をまとめ, 介入の効果を最大化するためにはどのような知識や技術, 環境作りが必要か, エビデンスとそれを応用した臨床実践を紹介したい。
 第一演者の久米 裕氏は, 行動心理症状の基礎と, これまで用いられてきた治療介入法の本人や周囲の人への介入について簡単に紹介する。これまでの介入は, 音楽療法や回想法などさまざまな治療介入法があるが万能なものはなく, それぞれの介入のもたらされる効果の特性があり, それらの適応と限界について概観する。第二演者の永田優馬氏は、行動心理症状に対して、根拠に基づいた評価・介入の実施を目的に提唱されたマネジメントモデルを紹介する。マネジメントモデルでは,症状がいつ,どこで発生したかなどの文脈を緻密に評価することで,改善方法の検討に繋がることが期待されており、このモデルと通して行動心理症状の介入までの道筋を紹介する。第三演者の河合晶子氏は, 行動心理症状に対応するために理解しておくべき基本的姿勢である「パーソンセンタードケア」と、それを臨床現場で効果的に実践するために必要な「医療・介護従事者支援」のあり方について、臨床実践を含めて説明する。
 これまでのRCRDのセミナーでは, 近年の国の施策と作業療法士協会の重点課題について企画してきた。今回は作業療法が認知症を有する人とその支援者が抱える課題の解決の糸口になる内容を発表したい。