第58回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[S-6] 企画セミナー6
日本ハンドセラピィ学会

2024年11月9日(土) 18:10 〜 19:10 F会場 (201・202)

司会:越後 歩(札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター ハンドセラピィ部門)

[S-6-1] 手の機能評価の活用 ―評価マニュアルと新しい評価表の紹介-

野中 信宏1, 越後 歩2, 大森 みかよ3, 飯塚 照史4 (1.愛野記念病院, 2.札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター ハンドセラピィ部門, 3.聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーションセンター, 4.奈良学園大学 保健医療学部)

 本企画では手の機能評価マニュアルと新しい評価表を紹介し,開発経緯や使用上の注意点,活用方法について概説する.
 機能評価は対象者の障害像やデマンドを把握する手段,リハビリテーションの効果判定などに活用される.手外科分野の作業療法では可動域,筋力測定などの客観的評価やDASH,Hand20などの患者立脚型評価が使用されている.日本ハンドセラピィ学会では,手の機能評価について,再現性や妥当性を担保するために評価マニュアルの開発と新しい評価表の作成に取り組んできた.
 評価マニュアルは,精密知覚検査,関節可動域測定,握力測定について作成した.精密知覚検査マニュアルは信頼性,妥当性が確認されたSemmes Weinstein Monofilament setを用いた知覚検査について記した.関節可動域測定マニュアルは前腕・手関節・指・母指の測定について豊富な図やQRコードを使用した動画で解説した.握力測定はJamar型油圧ダイナモメーターを使用した測定の意義,測定肢位,留意点について解説した.これらのマニュアルは米国ハンドセラピィ学会が推奨した方法を参考に国際標準的な視点に留意して作成している.
 機能評価については疾患特異型(橈骨遠位端骨折)のQOL評価(HRQOL for DRF-JHTS)と両手動作に着目した15項目のADL評価(Both Hands ADL15)を開発し,論文化した.手外科作業療法の治療効果として健康関連QOLを測定する患者立脚型評価は重要な指標であり,対象疾患として上位を占める橈骨遠位端骨折,肘部管症候群,手・母指疾患について信頼性,妥当性を有し,かつ高い反応性を示すQOL評価の開発を行った. HRQOL for DRF JHTSは,対象者の語りから抽出された項目【精神的負担感】【手の使用に対する負担感】を含み作業療法士の視点が反映されている.また肘以遠の手外科疾患に対する新たなADL評価表Both Hands ADL15は両手動作に着目した食事,更衣,排泄,整容,入浴領域を含み,内的整合性および基準妥当性が確認された.
 本セミナーを通じて正確な手の機能評価を理解することで,臨床実践における良質なデータ収集につながり,結果的に良質な作業療法研究に資することが期待できる.