第58回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[S-7] 企画セミナー7
日本CIセラピー研究会

2024年11月9日(土) 18:10 〜 19:10 G会場 (206)

司会:田邉 浩文(湘南医療大学大学院)

[S-7-1] 未来の作業療法を支援するロボット開発のあるべき姿を考えよう

田邉 浩文1, 森田 良文2, 奥田 正作3, 高田 雄一4, 新泉 一美5, 近藤 昭彦6 (1.湘南医療大学大学院, 2.名古屋工業大学大学院, 3.明治国際医療大学, 4.北海道文教大学大学院, 5.湘南医療大学, 6.令和健康科学大学)

日本CIセラピー研究会(以下,研究会)は、中枢神経疾患に対して作業遂行と行動変容に焦点を当てた効果的な介入方法に関する研究に取り組んでまいりました。研究会は、2009年から現在までに、名古屋工業大学と共同して中枢神経疾患に対する作業療法の実践をアシストするロボット(デバイス)を多数開発しました。作業遂行の準備として、「痙縮や筋短縮を改善」する痙縮減弱デバイス(ピストンデバイス)、「麻痺手の指伸筋筋出力を増強」するトレーニングデバイス(PARKO)、滑らかな握り動作を可能にするための手指協調運動トレーニングデバイス「iWakka」、左右対称的な立位・移動をアシストするロボット(起立ロボット)などを開発して有効性について学術論文に多数発表してきました。現在は、PCゲーム性能を有する手の協調運動デバイス、麻痺手の指伸展運動トレーニングデバイスなどを企画し試作品を製作しています。
AIの普及や工学技術の発展に伴い、今後、リハビリテーション関連ロボットの開発は、加速するものと思われますが、作業療法関連ロボットの開発と商品化に至るまでには複雑な工程と法の規制があります。そのため、作業療法士が工学研究者、そして企業と協働して開発に取り組む必要があります。この医工・産学官連携による作業療法支援機器のイノベーションには、いくつかの課題があります。たとえば、専門用語をはじめ、お互いの専門性が理解できないこと。医療者側の開発ニーズが工学者に伝わらないこと。試作の効果判定と修正を繰り返す必要があり、高額な開発費と時間がかかること。薬機法をはじめ、法の規制があることなどです。
現在、国内に普及しているリハビリテーション機器の多くが、企業が企画開発をされていますが、作業療法の臨床実践をアシストするロボットの開発は、現場のニーズを反映したものでなければならず、療法士が企画する医・工・産学連携によるロボットの開発が理想的であると考えています。
企画セミナーでは、これまで開発したロボットの紹介と開発に至った過程を紹介し、多くの作業療法協会員の皆様に、作業療法に関連した機器開発のいろはについて理解していただくとともに、作業療法を支援するロボット開発が加速する近未来を見据えて、リハビリテーションロボット開発のあるべき姿をフロアの皆様と共に考えてみたいと思います。