第58回日本作業療法学会

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スペシャルセッション

[SS] スペシャルセッション SS

Sat. Nov 9, 2024 12:10 PM - 1:10 PM B会場 (中ホール)

座長:長尾 徹(神戸大学大学院保健学研究科)

[SS-1-1] 経カテーテル的大動脈弁置換術が施工された超高齢患者の予後を検討

内藤 喜隆1, 姫野 麻菜美1, 林田 晃寛2 (1.心臓病センター榊原病院 リハビリテーション室, 2.心臓病センター榊原病院 循環器内科)

【はじめに】
 医療技術の進歩により経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)や経皮的僧帽弁形成術(Mitra Clip)などの低侵襲手術が可能となり高齢者への手術適応が拡大している.高齢化が進む本邦においては急激に手術件数が増加,日本循環器学会が公表しているJROADでは2016年と比較し2020年時のTAVIの手術件数が約5倍に増加していることが報告されている.TAVIの手術適応は高齢(80歳以上),開胸手術が困難,もしくはリスクが高い患者をハートチームで議論し決定することが推奨されているが,超高齢者に対するTAVIの適切性については議論に上がることが多い.
【目的】本邦のTAVI registry(J-TVT: Japan Transcatheter Valve Therapies)では2018年までに14.7%の超高齢者にTAVIが施行されており,性別,糖尿病,albumin,STS scoreなどが生存に寄与することが報告されている.しかし,TAVIを施行される超高齢で開胸が困難な症例の多くはFrailtyが高いことが予測されるが,これらを踏まえた報告はまだ少なく議論の余地はまだある.そこで,今回TAVIが施行された高齢患者と超高齢患者の生存率を調査し,超高齢患者の生存因子をFrailty含めて検討を行っていく.
【方法】
2013年12月-2023年8月までに当院でTAVIが施行せれた875名(平均年齢85±5歳,男性286名(33%))を対象とした.術前に身体機能としてClinical Frailty Score,認知機能はMMSEで評価を行った.心臓超音波検査はハートチームカンファで使用されたdataをカルテより抽出した.
統計解析は超高齢者を90歳以上と定義し,高齢者と超高齢者群の2群間で患者背景を比較した.生存はカルテより全死亡をEndpointして調査し,生存曲線を用いて比較した.また,超高齢者群における死亡因子をCox比例ハザード分析を用いて検討した.
【結果】
超高齢者群は慢性腎不全,心房細動を併存している患者が多かった.STS scoreも(3.6±0.4 vs 14±9 P=0.001)超高齢者群で有意にhigh-riskな患者が多く,身体(Frailty:4±1 vs 5±1 P=0.001),認知(MMSE: 24±5 vs 22±5P=0.001)フレイルの合併も多かった.手術のアプローチ場所やデバイスは差が見られなかった.高齢者群と超高齢者群の5年生存率は(61% vs 44% P=0.011)超高齢者群で有意に低かった.特に術後3年を過ぎてからの生存率の低下が大きかった.死亡因子の検討では多変量解析の結果男性(HR4.38 CI95%1.57-12.57,P=0.005),COPD(HR4.68 CI95%1.05 -2.08 P=0.049,Clinical Frailty Score(HR11.73 CI95%1.06-2.81 P=0.028)が抽出された.
【考察】
超高齢者は高齢者に比較し生存率が低下していたが,これは先行研究と同様の結果であった.超高齢者における生存因子の検討では,男性,慢性閉塞性肺疾患,Clinical Frailty Scoreが抽出された.先行研究では糖尿,albuminやSTS Scoreなどの関連が報告されているが今回はFrailtyの影響が強く認められた.Clinical Frailty Scoreは歩行状況やADL/IADLを含めた総合的なFrailty評価ツールである.つまり超高齢者において,いかに日常生活が拡大できているかが重要であると考えられる.高齢者を含むTAVI患者では術後の管理面からも認知機能の重要性が多く報告されている.しかし超高齢者において認知機能は抽出されなかった.この事からも超高齢者においては,ADL/IADLの維持・拡大,それに対応できる運動耐容能がより重要であることが示唆された.また超高齢者は術後3年目より大きく生存率を低下させている.超高齢者のADLをいかに長期的に維持することができるか介護保険などを含めた検討が今後は必要であると考える.
【結語】
超高齢TAVI患者はADL/IADLの維持・拡大が重要である.