[SS-3-1] 作業療法実践におけるClinical Reasoning Occupational Therapy Tool-Resume(CROT-R)の有用性の検討
はじめに
作業療法士の卒前・卒後教育において,Clinical Reasoning(以下CR)の学習は重要なテーマである(日本作業療法士協会,2022).そこで藤本は,CRに基づく臨床実践と解釈を深めるためのツールとしてClinical Reasoning Ot Tool-Resume(以下CROT-R)を作成した.作業療法の専門性に焦点を当て,教育の手段として有効に活用するためには,尺度の有用性の検討として,作業療法実践に与える影響を明らかにすることが重要である.そこで本研究では,CROT-Rを用いた臨床経験に着目し,作業療法実践にどのような影響を及ぼすのかを分析し,CROT-Rの有用性を検討することを目的とした.なお,本研究は実施機関の倫理委員会の承認を得ている.
方法
対象者は,CROT-Rを活用した事例報告を院内研修として実施している総合病院(199床)のリハビリテーション課に所属するOTR6名であり,質的研究経験のあるサブインタビュアー1名を加えた計7名でFocus Group Interview(以下FGI)を実施した.①CROT-Rの使用感や聴講の感触,②CROT-Rを使用,聴講したことで学んだ経験,③CROT-Rの使用方法や課題について,インタビューガイドを用いて約90分間行った.得られた内容は逐語録に起こし,KH Coder (Ver.3)にて計量テキスト分析を実施し,頻出語と共起ネットワーク図を出力した.出力後は,質的研究経験のある研究協力者2名とKWICコンコーダンスを用いて語の文脈を確認し妥当性の検討を行い,サブグラフごとにラベル付けを実施した.
結果
計量テキスト分析の結果,逐語録からの総抽出語数は11,285語であった.頻出語は多い順に,「思う(109),感じ(69),自分(55),部分(51),CROT-R(45),リーズニング(36),介入(35),書く(34),使う(33),専門(27)」であった.共起ネットワーク図からは,実践をまとめる利点を示すカテゴリーが3つ,作成に関する困難さを示すカテゴリーが1つ,その他付随する項目が4つ,計8つのカテゴリーが作成され,使用上の利点と困難さに関するものに分けられた.
考察
本結果より,CROT-Rを使用する利点として<CR能力の向上>,<作業療法の専門性向上>が挙げられた. 作業療法におけるCRは,「臨床実践を導く思考の道筋であり,専門職としての思考の技能」と定義(Maruyama, et al. 2021)されている.本研究では,「物語」「科学」「相互交流」「倫理・実践」など各CR項目に焦点を当てることで,対象者に即した作業療法実践が促進されていた.以上より,CROT-RはCRに基づく臨床実践の省察を促し,作業療法の専門性や枠組みを認識させることでCR能力を向上する可能性が示唆された.一方,CROT-Rの使用における困難さとして<全体像の把握>が抽出され,「難しい,時間,項目」といった言葉が示す通り,適宜経験者が作成や実践の省察を促す必要があり,項目の調整も検討事項として考えられた.また,近年のOT教育の研究では効果的な学習を可能とするような方略とその科学的根拠が求められ(WFOT,2021)ており,CRの各思考プロセスにより学習・教育の方略が異なる可能性が指摘されている(Neistadt ME,1996)ことから,今後も縦断研究を含めた継続した研究が必要である.
作業療法士の卒前・卒後教育において,Clinical Reasoning(以下CR)の学習は重要なテーマである(日本作業療法士協会,2022).そこで藤本は,CRに基づく臨床実践と解釈を深めるためのツールとしてClinical Reasoning Ot Tool-Resume(以下CROT-R)を作成した.作業療法の専門性に焦点を当て,教育の手段として有効に活用するためには,尺度の有用性の検討として,作業療法実践に与える影響を明らかにすることが重要である.そこで本研究では,CROT-Rを用いた臨床経験に着目し,作業療法実践にどのような影響を及ぼすのかを分析し,CROT-Rの有用性を検討することを目的とした.なお,本研究は実施機関の倫理委員会の承認を得ている.
方法
対象者は,CROT-Rを活用した事例報告を院内研修として実施している総合病院(199床)のリハビリテーション課に所属するOTR6名であり,質的研究経験のあるサブインタビュアー1名を加えた計7名でFocus Group Interview(以下FGI)を実施した.①CROT-Rの使用感や聴講の感触,②CROT-Rを使用,聴講したことで学んだ経験,③CROT-Rの使用方法や課題について,インタビューガイドを用いて約90分間行った.得られた内容は逐語録に起こし,KH Coder (Ver.3)にて計量テキスト分析を実施し,頻出語と共起ネットワーク図を出力した.出力後は,質的研究経験のある研究協力者2名とKWICコンコーダンスを用いて語の文脈を確認し妥当性の検討を行い,サブグラフごとにラベル付けを実施した.
結果
計量テキスト分析の結果,逐語録からの総抽出語数は11,285語であった.頻出語は多い順に,「思う(109),感じ(69),自分(55),部分(51),CROT-R(45),リーズニング(36),介入(35),書く(34),使う(33),専門(27)」であった.共起ネットワーク図からは,実践をまとめる利点を示すカテゴリーが3つ,作成に関する困難さを示すカテゴリーが1つ,その他付随する項目が4つ,計8つのカテゴリーが作成され,使用上の利点と困難さに関するものに分けられた.
考察
本結果より,CROT-Rを使用する利点として<CR能力の向上>,<作業療法の専門性向上>が挙げられた. 作業療法におけるCRは,「臨床実践を導く思考の道筋であり,専門職としての思考の技能」と定義(Maruyama, et al. 2021)されている.本研究では,「物語」「科学」「相互交流」「倫理・実践」など各CR項目に焦点を当てることで,対象者に即した作業療法実践が促進されていた.以上より,CROT-RはCRに基づく臨床実践の省察を促し,作業療法の専門性や枠組みを認識させることでCR能力を向上する可能性が示唆された.一方,CROT-Rの使用における困難さとして<全体像の把握>が抽出され,「難しい,時間,項目」といった言葉が示す通り,適宜経験者が作成や実践の省察を促す必要があり,項目の調整も検討事項として考えられた.また,近年のOT教育の研究では効果的な学習を可能とするような方略とその科学的根拠が求められ(WFOT,2021)ており,CRの各思考プロセスにより学習・教育の方略が異なる可能性が指摘されている(Neistadt ME,1996)ことから,今後も縦断研究を含めた継続した研究が必要である.