第58回日本作業療法学会

講演情報

スペシャルセッション

[SS] スペシャルセッション SS

2024年11月9日(土) 12:10 〜 13:10 B会場 (中ホール)

座長:長尾 徹(神戸大学大学院保健学研究科)

[SS-4-1] 担任教員が捉える特別支援学級在籍児童の食に関する困難さ

~作業療法士による学校コンサルテーションの観点~

池田 千紗1, 中島 そのみ2, 仙石 泰仁2 (1.北海道教育大学札幌校, 2.札幌医科大学保健医療学部作業療法学科 作業療法学第二講座)

【はじめに】
学校支援を行う作業療法士(以下,OT)は給食に関して教員から助言を求められることも多い.「食に関する指導の手引き」(文部科学省2008)では,偏食に対しては保護者と連携しながら児童生徒の特性と家庭環境を十分考慮すること,偏食の原因を軽減するための取り組みを段階的に行うことなどが重要とされている.教員の多くは保護者から児童生徒の食事について相談を受けるが,教員も給食指導について困り感を抱えていると報告されている(中嶋,2019).そこで本研究は,特別支援学級の担任教員を対象にアンケート調査を行い,偏食への対応方法や家庭・他機関連携の実際について明らかにし,OTが学校コンサルテーションを行う際の観点を検討することを目的とする.
【方法】
 A市立小学校特別支援学級(544学級)担任教員に調査依頼し,質問紙と回答を送信できるGoogleフォーム情報を郵送した(調査期間2023年10月から12月末).本研究は筆者所属施設の研究倫理委員会の承認を得て実施した.研究協力者には研究の趣旨・方法,質問紙への回答は自由意志によること,個人情報保護に関することを書面で説明し,研究協力への同意が得られた場合のみ無記名で回答してもらった.質問項目は,属性,給食指導について学ぶ方法,給食指導を行う際の課題,偏食の改善に向けた対応,偏食についての考え,偏食のある児童の捉え方と効果を感じた対応方法,家庭・他機関連携とし,選択式(一部,複数回答可)と自由記述式で回答を求めた.選択式の質問項目は回答の割合を算出した.記述式の質問項目は研究者2名で生成したカテゴリー数を集計し,本研究では上位3カテゴリーを示した.
【結果】
 544学級の担任教員196人から有効回答が得られた(回収率36%).回答者の教員歴は1~10年未満47%,10~20年未満34%,20年以上20%で,幅広い年代から回答が得られた.給食指導について学ぶ方法は,同僚の指導方法(79%),栄養士からの助言(52%)が主だった.給食指導を行う際の課題(回答115件)10カテゴリー中の上位は,家庭との連携(33件),少量摂取という指導方法への迷い・難しさ(14件),指導観の違い(11件)だった.偏食の改善に向けた対応を取っていない教員は24%で,理由(回答28件)8カテゴリー中の上位は,保護者の理解を得られない(6件),強制できない・したくない(5件),児童の気持ちを考えて(4件)だった.偏食の背景(回答135件)13カテゴリー中の上位は,感覚過敏(42件),発達障害の特性(13件),強いこだわり(11件)だった.教員は偏食のある児童を捉える際,こだわり(79%),感覚過敏(64%),食具の操作(59%),口腔機能(50%)について情報収集していた.効果を感じた対応方法(回答242件)17カテゴリー中の上位は,少量摂取(58件),食事量の自己決定(47件),提供方法の変更(19件)だった.家庭・他機関連携では,情報交換をしているのは家庭93%,他機関13%,同じ方針で指導を実施しているのは家庭42%,他機関11%だった.
【考察】
 特別支援学級の担任教員は,児童の食に関する困難さについて家庭と情報交換を行い同じ方針で指導を実施しているが,他機関との連携は少なく,同僚の指導方法を参考にている実態が明らかとなった.教員は偏食の背景について様々な情報を収集しているが,その情報を活かし個別に指導プログラムを立てることは行われておらず,指導方法への迷いが示された.OTが学校コンサルテーションを行う際,他機関連携とOT評価に基づく個別の指導プログラムの提案が教員の助けとなると考えられた.