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[AAS01-04] 積乱雲発生に先立つ局地前線の事例解析とJMA-NHMの再現性検証
キーワード:対流雲, 局地前線, 数値シミュレーション
2013年7月23日の東京都心部に発生した積乱雲観測事例を対象に、孤立積乱雲の発生に先立ち関東平野で観測された局地前線を解析した。また、JMA-NHMを用いた数値シミュレーションを行い、その再現性を検証した。 局地前線と積乱雲の形成に関する解析は、羽田空港に設置されたドップラーレーダー(DRAW)と東京工業大学(大岡山キャンパス)のドップラーライダー、そして地上に展開する気象観測データを含む、複数の観測測器で構築した稠密観測網によって得られたデータを用いた。数値シミュレーションの検証では、気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)を解像度500mで計算した結果を用いた。計算の初期値・境界値には2013年7月22日15UTCの気象庁メソ解析を用い、解像度5kmの計算を東日本を広く覆うスケールで計算し、関東平野を覆う領域を1km,500mの解像度でネスティングし、2013年7月23日02UTCからの10時間について解析を行った。尚、解像度500mの境界層過程の計算にはdeardorff(1980)を用いた。 夏の関東平野では一般に、日本の南にある高気圧や海風前線の影響で、東京湾や相模湾から南寄りの暖かく湿った空気が流入する。それらと関東平野東部の相模湾から流入する東風とが東京都心部周辺で収束することで積乱雲が発生するという説明がしばしばなされる。観測データの解析の結果、2013年7月23日の注目した孤立積乱雲の発生には海風前線同士の収束がトリガーとなっていることがわかった。さらに、そこにはガストフロントも重要な役割を果たしていることがわかった。この日は東京湾や相模湾では日中に海風前線が形成され、およそ1m/sで内陸に進入した。海風前線の後面では複数の孤立積乱雲が発生し、消失とともにガストフロントを形成した。ガストフロントはおよそ3m/s程度で海風前線の後面で広がった。海風前線の一部はガストフロントの前方にあって、次第に進行方向を変え、北東方向に進行した。この海風前線はもともとの東京湾から吹く南東の風と収束する点で積乱雲が発生した。 一方、現業の数値予報ではこの日の関東平野に強い降水を予想していたが、必ずしも全ての現象は再現していなかった。解像度500mのJMA-NHMのシミュレーションを羽田DRAWと比較した結果、東京湾や相模湾から発生する海風前線は表現していた。その水平分布は実況の位置に近かった。また海風前線通過後には一部の孤立積乱雲を表現していた。しかし、シミュレーションでは、積乱雲からのガストフロントは計算されていたが、その広がりは実況のガストフロントの進入に比べて小さかった。ドップラーライダーは海風前線とガストフロントの水平・鉛直構造も捉えていたため、モデルが表現する同じ現象と比較することが出来る。モデルの再現性を検証し問題点を把握することは予報精度の改善につながる。そのため、今後は解像度500mのJMA-NHMが表現する海風前線とガストフロントを調査し、実況との共通点・相違点について検証する。