日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS02_29PO1] Data Assimilation in Earth Sciences

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*石川 裕彦(京都大学防災研究所)、余田 成男(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、榎本 剛(京都大学防災研究所)、パク ソンキ(梨花女子大学)、呉 俊傑(国立台湾大学)、宮崎 真一(京都大学理学研究科)、石川 洋一(海洋研究開発機構)

18:15 〜 19:30

[AAS02-P02] TRMM PRブライトバンド高度データの同化実験

*榎本 剛1山本 宗尚2 (1.京都大学防災研究所、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:融解層, 曇天域衛星データ同化,, 観測システム実験

熱帯降雨観測衛星TRMMのPRセンサのデータセット2A23に含まれる,ブライトバンド高度を気温の直接観測と見なした同化実験を行った。ブライトバンドは,融解層付近からの強いレーダーエコーを指す。ブライトバンド高度は,再解析との比較から0C高度の数百m下に位置することが知られている (Harris et al. 2000)。TRMM PRのアルゴリズム (Awaka et al. 2009) において,ブライトバンド高度は衛星・地球楕円体間の距離と衛星・ブライトバンド頂間の距離との差の天底方向への投影として計算される 。ブライトバンドの検出には再解析や現業解析の0C高度が使われているが,ブライトバンド高度自体は直接観測である。ブライトバンド高度は,海洋上の少ない直接観測を補完する貴重なデータであり,これを同化すれば解析精度が向上する可能性がある。衛星の放射輝度は主に晴天域のデータが利用され,水物質の同化は難易度が高い。これに対し,ブライトバンド高度は層雲に対応した曇天域データであり,放射計算が不要で同化は容易である。
本研究で用いたデータ同化システムALEDAS2 (Enomoto et al. 2013) は,地球シミュレータ用大気大循環モデルAFESに局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)を適用したものである。AFESの解像度はT119L48(水平1度,鉛直48層)で,解析アンサンブル数は63である。このシステムを利用して作成されたデータセットALERA2をブライトバンド高度観測を同化していない参照実験とした。ブライトバンド高度には以下のような処理を施した。まず,各データはブライトバンド高度に500 mを加えた高度における0Cの気温観測と見なした。次に,観測間の過度の水平相関を避け,計算負荷を減らすため,水平方向に半径0.5度に含まれるデータを距離の重みつきで平均した超観測を作成し,1時間毎のウィンドウにまとめた上でLETKFの入力形式に変換した。
2010年1月の1か月間のブライトバンド高度データの観測数は2572986,超観測数は61905である。データは,35N--35Sの熱帯及び亜熱帯に広く分布している。冬季である北半球は多くのデータが30N付近の海洋上に分布しており,ストームトラック上の低気圧に伴う層雲に対応することを示唆している (Yamamoto et al. 2006)。赤道から25N付近の亜熱帯高圧帯では,データは少ない。夏季である南半球では,海洋上では熱帯収束帯や亜熱帯収束帯付近に分布している。陸上では,アフリカ大陸南部,オーストラリア東部,アマゾンにも多数分布している。ALEDAS2では6時間毎の解析時刻に対し,前後3時間のウィンドウが設定されている。ラジオゾンデ観測が行われる0, 12UTCでは気温の観測数は数%増加するだけであるが,6, 18UTCでは1.5--2倍にもなる。
2010年1月3日0UTCから4日間の予備的な同化実験の結果,解析誤差の指標となる解析アンサンブル・スプレッドは,1月7日0UTCにおける地表面気圧でみると参照実験に対して全球で0.51 Pa,南半球35--0S平均で0.94 Pa低下した。解析インクリメントの二乗平均平方根は,全球で2.4%,南半球35S--0で5.9%それぞれ増加している。