日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21_30AM1] 成層圏過程とその気候への影響

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 313 (3F)

コンビーナ:*宮崎 和幸(独立行政法人 海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、田口 正和(愛知教育大学)、河谷 芳雄(独立行政法人海洋研究開発機構)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、座長:河谷 芳雄(独立行政法人海洋研究開発機構)

10:00 〜 10:15

[AAS21-05] 地形が対流圏界面付近の気温変動に与える影響に関する研究

*久保川 陽呂鎮1藤原 正智2那須野 智江3三浦 裕亮4山本 真之5佐藤 正樹1 (1.東京大学 大気海洋研究所、2.北海道大学 大学院環境科学院、3.独立行政法人 海洋研究開発機構、4.東京大学 大学院理学研究科、5.京都大学 生存圏研究所)

対流圏界面領域(Tropical Tropopause Layer: TTL)は、対流圏の水蒸気を含んだ空気塊が成層圏に流入する前に通過する領域である。この領域は、平均的に極めて低温であることから、圏界面付近で水蒸気の凝結が生じ、気候学的にも大きな影響をもつ、巻雲が生成されていると考えられる。この領域で、ケルビン波などの波が観測される時には、更なる大きな気温変動が生じ、巻雲の生成がおこると期待される。全球非静力学大気モデル Non-hydrostatic ICosahedral Atmospheric Model (NICAM)の2006年12月実験 (Miura et al. 2007)を用いて、圏界面付近の気温変動を調べたところ、インドネシア山岳上で、ケルビン波の通過に伴い、圏界面付近の気温が大きく変動していた。興味深い点は、その変動が、同緯度の海洋上に比べ2倍程度の振幅を持っていたことである。こういった現象は、モデルの問題かもしれないが、仮に現実に存在するならば、面白い発見である。また、モデルの問題ならばどういった要因に伴っているかは重要な課題となろう。本件研究では、NICAMの出力データ、Constellation Observing System for Meteorology, Ionosphere, and Climate (COSMIC)衛星データ、いくつかの再解析データ、現地観測データといった様々なデータを用いて、インドネシア海洋大陸上の標高の高い山岳が、TTLの気温変動に与える影響を調べた。COSMIC衛星データを用いて、2006年から2010年における冬季の圏界面付近の気温の変動を調べたところ、山岳付近で分散値が高くなっていることが見られた。統計的には有意ではあるが、山岳付近で得られるデータ数は少ないといった問題点はある。再解析データを用いたところ、モデルの水平解像度が上がるにつれ、山岳付近での気温の分散値は大きくなっていった。特に、水平解像度が0.125°のEuropean Centre for Medium-Range Weather Forecasts (ECMWF)のYear of Tropical Convection (YOTC)データを用いたところ、ケルビン波が通過した時、山岳上と海洋上で気温の振幅が2 Kほど異なっていることがわかった。実際、山岳上の気温の7-12日のパワースペクトルは、海洋上に比べ大きくなっていた。2001年11月のインドネシアのJambiとKototabang (より山岳付近)の観測データも比較してみた。しかし、2つの観測所の気温変動に明確な違いは見られなかった。気温の分散は、日変動などの局所的な影響に伴い、Kototabangの方がわずかに大きいが、波の活動度の変化によるものではなかった。本研究では、モデルや衛星観測データで、山岳上において気温の変動が大きいことが観測されたが、より明確な証拠を示すための更なるデータや解析が必要である。当日の発表では、以上のような点について報告するとともに、本研究の今後の可能性についても議論したい。