日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21_30PM1] 成層圏過程とその気候への影響

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 313 (3F)

コンビーナ:*宮崎 和幸(独立行政法人 海洋研究開発機構 地球環境変動領域)、田口 正和(愛知教育大学)、河谷 芳雄(独立行政法人海洋研究開発機構)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、座長:宮崎 和幸(独立行政法人 海洋研究開発機構 地球環境変動領域)

15:30 〜 15:45

[AAS21-19] リオ・ガジェゴス(アルゼンチン)上空における2009年11月の長期間のオゾン全量低下について-化学輸送モデルによる計算と解析-

*秋吉 英治1門脇 正尚1中村 東奈2杉田 考史1中村 哲3水野 亮4 (1.国立環境研究所、2.富士通FIP、3.国立極地研究所北極観測センター、4.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:アルゼンチン, オゾンホール, 化学輸送モデル, 極渦, 地球規模課題対応国際科学技術協力事業, 2009年11月

科学技術振興機構(JST) および国際協力機構(JICA)の地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS)「南米における大気環境リスク管理システムの開発」(代表:水野亮)では、先端的観測施設の空白域である南米地域での地上大気観測網を、アルゼンチンおよびチリの研究者らと協力しながら整備し、その観測結果から迅速に地域社会へのアラート(警報・注意喚起)を発信するための社会システムを構築することを目指している。この課題の中で、南米地域へのオゾンホールの影響についての研究を開始した。アルゼンチンおよびチリ南部のパタゴニア地区は南極の極渦の通り道にあり、オゾンホール直下の紫外線被害にさらされる危険性が高い。本研究では、国立環境研究所で開発を行ったMIROC3.2ナッジング化学輸送モデルを用いて、2009年11月に南米で観測された比較的長期間にわたるオゾン全量減少(de Laat et al., Geophys. Res. Lett., 2010)の再現計算を行い、そのようなオゾン減少が続いた時の大気の力学場および化学場の解析を行った。アルゼンチンのリオ・ガジュゴス(51S, 69W)では、ライダーによるオゾン濃度の鉛直分布の観測が行われており(Wolfram et al, 5th SPARC General Assembly, Queenstown, New Zealand, 2014)、2009年11月13~14日頃に675K付近の温位面でオゾン濃度が低下、その後の11月22~23日頃にはそれより下層の475K付近でオゾン濃度が低下したことが報告されている。675Kおよび475Kのそれぞれの温位面おいて、10日程度異なる日付でオゾンホールの影響を受けた極渦がリオ・ガジュゴスの上空あるいはその近辺に位置したことが2009年11月の比較的長い期間のオゾン全量低下をもたらしたと考えられる。環境研の化学輸送モデル(MIROC3.2大循環モデルをベースに構築)を用いたオゾン全量や渦位の計算からもこれを裏付ける結果が得られた今後は、2009年以外の年についての解析を進め、2009年の南極周辺大気の力学場および化学場の特異性を明らかにしていく予定である。