日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS22_1PM1] 大気化学

2014年5月1日(木) 14:15 〜 16:00 511 (5F)

コンビーナ:*竹川 暢之(東京大学先端科学技術研究センター)、澤 庸介(気象研究所地球化学研究部)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:矢吹 正教(京都大学生存圏研究所)

14:15 〜 14:30

[AAS22-22] バイオマス燃焼からの揮発性有機化合物の放出量の燃焼状態依存性に関する室内実験

*猪俣 敏1谷本 浩志1潘 小楽2竹谷 文一2駒崎 雄一2宮川 拓真2金谷 有剛2 (1.国立環境研究所、2.海洋研究開発機構)

キーワード:バイオマス燃焼, 揮発性有機化合物, 農作物残渣, 燃焼効率, PTR-MS, SP2

バイオマス燃焼は、大気中への粒子状およびガス状有機化合物の大きなソースとなっている。1 我々のグループでは、2010年5-6月に中国長江デルタから北に約180kmの地点(如東)で大気観測を行い、観測期間に農作物残渣の野焼き由来と考えられる気塊を何度にもわたって観測した。粒子に関しては、元素炭素(EC)、有機炭素(OC)ともに、都市大気由来の気塊よりもバイオマス燃焼由来の気塊でCOに対して高い増大比が観測された。2 ガス状有機化合物に関しては、バイオマス燃焼時には、特に含酸素揮発性有機化合物(OVOC)の占める割合がかなり大きいことがわかった。3 これらの観測事実を検証するため、中国観測地点付近の農作物残渣を持ち帰り、室内で燃焼実験を行った。実験では、麦わらとアブラナの2種類の試料を用いた。ガス状成分としては、CO2とCOを1秒間隔で、揮発性有機化合物(VOC)に関しては陽子移動反応質量分析計を用いて約2秒間隔で、OVOC、芳香族炭化水素を中心に測定した。粒子に関しては、個数密度をOPCで、黒色炭素(BC)および有機粒子の数密度をSP2(Single Particle Soot Photometer)を用いて計測した。本発表では、ガス状VOCの結果を主に発表する。燃焼の状態は、flamingとsmolderingとその中間状態に大きく分けられる。燃焼状態の指標として、MCE(modified combustion efficiency, ΔCO2/(ΔCO2+ΔCO))が用いられ、0.99付近がflaming、0.65~0.85 がsmolderingとされている。1 実験では、MCEが0.8から1での燃焼状態を作ることができ、VOCの放出量の燃焼状態依存について調べることができた。測定したVOCのうち、ベンゼンのみ、MCE依存が顕著にはみられず、このことからベンゼンは燃焼時の一次生成物と考えられる。一方、他のVOCに関しては、MCEの値が小さくなるにつれ、COに対する放出量が増大する傾向がみられ、smoldering時に二次生成していることが示唆された。そのため、COに対するVOCの放出量の比は、燃焼状態の違いで大きく変動することが、本室内実験でわかった。References1) Akagi et al., Atmos. Chem. Phys. 11, 4039-4072, 2011.2) Pan et al., J. Geophys. Res. 117, D22304, 2012.3) Kudo et al., submitted to J. Geophys. Res., 2013.