日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS22_1PM1] 大気化学

2014年5月1日(木) 14:15 〜 16:00 511 (5F)

コンビーナ:*竹川 暢之(東京大学先端科学技術研究センター)、澤 庸介(気象研究所地球化学研究部)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:矢吹 正教(京都大学生存圏研究所)

15:45 〜 16:00

[AAS22-28] BVOCsの変動が全球大気化学場に与える影響: CHASER・VISITのオフライン結合

*須藤 健悟1伊藤 昭彦2 (1.名古屋大学 大学院環境学研究科、2.国立環境研究所)

キーワード:植物起源揮発性有機化合物, 化学気候モデル, 陸域生態系モデル, 二次有機アエロゾル, 大気・陸面相互作用

植物起源の揮発性有機化合物(BVOCs)は対流圏オゾンの生成・破壊、OHラジカル濃度(大気酸化能)に影響し、二次有機エアロゾル(SOA)の全球生成量にも大きく寄与するため、全球規模の大気環境変動や気候変動の重要な要因の一つである。BVOCsの大気への放出は、陸域生態系プロセスに加えて、気候環境(気温・降水量)、大気CO2濃度、および窒素沈着量などと密接に関連している。このため、BVOCsの変動とその影響を考察するには、陸域生態系と大気化学過程を結合した枠組みが必要である。本研究では、大気化学モデルCHASER(Sudo et al., 2002, 2007)と陸域生態系・微量ガス交換モデルVISIT(Ito, 2008)を用い、全球大気化学過程と陸域生態系の結合シミュレーションの構築を進めている。CHASERモデルはMIROC地球システムモデル(MIROC-ESM-CHEM)の一貫としても開発が進められ、対流圏・成層圏化学やエアロゾルの同時オンライン計算が可能であり、SOAの化学的生成過程も考慮されている。VISITでは、陸域生態系からのCO2、CH4、N2O、や各種BVOCsの大気への放出量の推定が可能である。本発表では、VISITで計算されたBVOC放出量のうちイソプレン(isoprene)に着目し、これまでの放出量変動が大気化学場に与える影響についてCHASERを用いてオフライン的に評価した。VISITの計算では、20世紀前半(1900~1950年)から2011年までに、温暖化等の要因により、全球イソプレン放出量について、420 TgC a-1 から、520 TgC a-1の増加(24%)を計算している。CHASERによる計算では、このイソプレン放出量変動に対して全球対流圏オゾン生成が2%増加し、熱帯域の上部および中部対流圏のオゾン量が4%前後増加することが計算された。また、北半球全域で、5-10%のOHラジカルの減少がみられ、COは北半球全域で2-4%増加することが示された。SOAは、熱帯域を中心に対流圏全層で、30%以上の顕著な増加が見られた。