日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS22_1PM2] 大気化学

2014年5月1日(木) 16:15 〜 18:00 511 (5F)

コンビーナ:*竹川 暢之(東京大学先端科学技術研究センター)、澤 庸介(気象研究所地球化学研究部)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:竹川 暢之(東京大学先端科学技術研究センター)

16:15 〜 16:30

[AAS22-P01_PG] ヨウ化物イオンを含む凍結した水溶液からのヨウ素分子と一酸化ヨウ素の放出

ポスター講演3分口頭発表枠

奥村 将徳1、*薮下 彰啓1 (1.京都大学)

キーワード:ヨウ素, 一酸化ヨウ素, 氷, オゾン, 不均一反応, キャビティーリングダウン分光法

南極においてハロゲンガスが生成・拡散する現象が確認されている。ハロゲンの中でもヨウ素原子,I,は微量ながら触媒サイクルにより対流圏オゾン濃度を減少させたり、一酸化ヨウ素, IO, が反応してできるOIOとIOが再結合反応してエアロゾルを生成したりして気候に影響を与えている。近年、ウエッデル海(南極大陸の南極半島とクイーンモードランドに挟まれた大湾)の海氷上と氷棚近傍で地上観測が行われ、生物放出のような既往の研究のみでは説明できない高濃度のI2(g)とIO(g)が測定されている。この観測結果は、無機化学反応など別のI2(g)とIO(g)生成源があることを示唆している。そこで、I2(g)とIO(g)の放出源の候補の一つとして気体オゾン,O3(g),とヨウ化物イオン,I-,の不均一反応に着目した。O3(g)は極域でも観測されており、また微量ながらI-も海氷に含まれている。そこで本研究では、I-を含む凍結した水溶液表面とO3(g)の反応によって氷表面から放出されるI2(g)とIO(g)の計測を行った。
ガラス製二重管の内側にNaI水溶液を入れた後、外側に冷媒を循環させて、冷媒の温度を下げることでNaI水溶液を凍結させた。NaI氷の状態を同じにするため、凍結させる時の冷媒の温度は毎回同じ温度に固定した。毎回同じ条件でNaI氷を作成した後、冷媒の温度を変化させてO3(g)と反応させる目的の温度(-1 ~ -25℃)に設定した。O3(g)をセル内に導入し、I-との反応により生成したI2(g)とIO(g)をキャビティーリングダウン分光法を用いて測定した。用いたNaI 水溶液の濃度は1 mM、もしくは5 mMである。導入し続けたO3(g)濃度は(0.5-4.2)×1015 molecules cm-3であり、生成したIO(g)とI2(g)の濃度はそれぞれ、〜1011 molecules cm-3と〜1014 molecules cm-3である。NaI水溶液の濃度、pH、温度などを変化させて実験を行った。温度計はできるだけ氷表面付近の温度を測定するように設置した。
凍結したNaI水溶液表面とO3(g)を反応させるとすぐにI2(g)とIO(g)が生成した。O3(g)濃度に依存して、導入後数秒~数十秒以内に[I2(g)]、[IO(g)]は最大となりその後徐々に減少した。-1℃において、凍結したNaI水溶液から放出された[I2(g)]、[IO(g)]の最大値は、凍結していない過冷却状態のNaI水溶液と比較して数倍以上になった。これはI-を含む水溶液が凍結する際に、I-が氷表面に濃縮したためである。このようなことは実際の海氷でも起こりうると考えられる。また、[I2(g)]放出量はpH4以下で増加し、温度を下げるに従って減少した。本研究により、0℃以下の氷表面上でもO3(g)によるI-の酸化が起こり、IO(g)とI2(g)が気相中に放出されることが明らかになった。