日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS22_1PO1] 大気化学

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*竹川 暢之(東京大学先端科学技術研究センター)、澤 庸介(気象研究所地球化学研究部)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)

18:15 〜 19:30

[AAS22-P10] エアロゾル質量分析計で測定される二次有機エアロゾルの質量スペクトルに占める高質量数イオン信号の比率

*佐藤 圭1藤谷 雄二1田邊 潔1森野 悠1伏見 暁洋1高見 昭憲1今村 隆史1疋田 利秀2下野 彰夫2 (1.国立環境研究所、2.汀線科学研究所)

キーワード:二次有機エアロゾル, オリゴマー生成, エアロゾル質量分析計, エアロゾル質量濃度, 化学構造

揮発性基底関数(VBS)のさらなる精度向上のため、オリゴマー生成を考慮したモデルが検討されるようになった1)。オリゴマー化の速度やSOAの質量スペクトルに高質量数の成分が占める割合を調べるため、スモッグチャンバー実験で生成したSOAをエアロゾル質量分析計(AMS)によって分析した。α-ピネン、イソプレン、トルエン、1,3,5-トリメチルベンゼン(TMB)の光酸化をNOx存在下で調べた。α-ピネンおよびイソプレンのオゾン分解も調べた。AMSの捕集管にステンレス管を用いた。AMSによってm/z = 10~675の領域で測定した有機エアロゾル(OA)の質量スペクトルを7つの質量数領域に分け各領域の全信号強度の時間変化を調べた。いずれの実験でも質量数500以下の領域にOAの生成に伴う信号の増加が見られた。オリゴマーは核形成から1時間以内に生成した。オリゴマーの生成後には、全OAの信号に占める各質量領域の信号の寄与率の時間変化はなかった。次に、OAの質量スペクトルのうちm1よりも高い質量数の信号が全OAの信号に占める割合(φ)を評価した:

φ = OA (m/z > m1)/OA(total)
m1 = n mC (OM/OC)

ここでnはSOA前駆物質の炭素数、mCは炭素の原子量、OM/OCはAMSで測定された有機物有機炭素比を表す。α-ピネン、イソプレン、トルエン、およびTMBのm1は、それぞれ217、147、180、および204と決定された。m1よりも高い質量数ではモノマー由来の信号の寄与が小さいとみなした。AMSの電子イオン化によって測定される信号は有機物の親イオンによる信号だけでなく分解イオンによる信号も含む。φはSOAに占めるオリゴマーの比率の指標であり、オリゴマーの比率の絶対値でないことに注意が必要である。同じ前駆物質から生成したSOAのφは粒子濃度が増加するほど減少した(Fig. 1)。この結果は高濃度であるほどオリゴマーを形成しにくいことを示している。10~100 μg m-3の濃度領域で比較するとφはトルエン由来SOAの場合に一番高く、α-ピネン由来SOAの場合に一番低かった。酸化方法(光酸化またはオゾン酸化)による違いはなかった。
【謝辞】本研究は文部科学省の科学研究費補助金(No. 25340021, FY2013-2015)および国立環境研究所の分野横断型研究(No. 1214AO001, FY2012-2014)によって支援された。
【参考文献】1) Trump and Donahue, Oligomer formation within secondary organic aerosol: equilibrium and dynamic considerations. Atmos. Chem. Phys. Discuss., 13, 24605-24634 (2013).