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[AAS23-02] 準天頂衛星システムを用いたメソγスケールの可降水量分布測定についてのシミュレーション
キーワード:可降水量, 準天頂衛星システム, 雷雨, 非静力学モデル
準天頂衛星 (Quasi-Zenith Satellite System: QZSS)とGPS衛星(Global Positioning System)の位置情報と数値モデルの出力を用い、メソγスケールの可降水量(Precipitable Water Vapor: PWV) 分布測定のシミュレーションを行った。空間分解能の評価では、従来のGNSS気象学と同様にQZSSとGPSの仰角10°以上の全視線データを用いる手法、QZSS衛星の最も仰角の高い視線データを用いる手法、GPS衛星の最も仰角の高い視線データを用いる手法の3手法で得られたPWVを比較した。数値モデルの格子点上にGPS受信機があると仮定し、その直上の水蒸気量の鉛直積算値であるPWVの真値と、上記の3つの手法で求めたPWV(PWVG、PWVQ及びPWVHG)とのRMSEを比較すると、雨が降り始める5分前では、PWVG,PWVQ及びPWVHGのRMSEはそれぞれ2.78 mm, 0.13 mm, 0.59 mmであった。PWVHGでは、最も仰角の高いGPS衛星の入れ替わりの時刻に約2 mmの値の不連続が生じるのに対し、PWVQの場合では、QZSS衛星の入れ替わりが天頂付近で起きるため不連続が小さかった。また、GPSの衛星配置がQZSSよりも短時間で大きく変動するため、PWVGとPWVHGの標準偏差もPWVQの標準偏差よりも大きくなる事が分かった。PWVG,PWVQの水平分布をPWVの真値と比較すると、真値の分布に見られる豪雨に伴うメソγスケールの細かな分布が、PWVGでは平滑化されてしまうのに対し、PWVQではメソγスケールの特徴をとらえていた。以上の結果は、稠密なGNSS受信機網を用いて、最も高い仰角にある測位衛星の視線遅延量を使ってPWVを解析する事で、雷雨に伴うメソγスケールの水蒸気変動が表現できる事を示しており、この高分解能のデータをメソモデルに同化すれば雷雨等の予報精度を改善できると考えられる。特に、準天頂衛星が高仰角に長時間滞在する日本域では、将来的にQZSSを利用する事で分散が小さいデータを連続的に解析できる事が示された。