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[AAS23-07] ヘリ搭載サーモカメラにより観測された東京都心エリアの地表面温度分布とヒートアイランド対策効果の検証―2013年と2007年の比較
キーワード:ヘリコプター観測, サーモカメラ, 地表面温度, 東京都心エリア, ヒートアイランド対策効果検証, 猛暑日
東京ではヒートアイランド現象と地球温暖化の進行により、過去100年間に平均気温が3℃上昇し、熱中症等さまざまな形で都民生活に影響を及ぼしている。このため、東京都環境科学研究所では、この高温化の実態を正確に把握するとともに、これまでに実施されてきた東京都におけるヒートアイランド対策事業の効果を検証することで、都の施策に資する調査研究を行っている。都市のヒートアイランドに関する数値シミュレーションは数多くの先行研究によって行われてきたが、その重要な検証材料となる、高い空間解像度かつ都市部を広域にカバーする観測データが不足している。本研究では、2013年8月19日と2007年8月7日に、大丸有地区を中心とした東京都心エリアを対象として、ヘリコプターによる地表面温度水平分布の稠密観測を実施した。ロビンソンR22ヘリコプターにサーモトレーサ(NEC三栄社製の熱画像監視カメラTS7302;測定波長帯:8~14マイクロメートル)を搭載し、約610メートルの高度から、昼間(12時頃)と夜間(21時頃)に地表面温度を計測した。熱画像の解像度は約2メートルである。気象条件は両観測実施日で類似しており、最高気温は33℃前後、昼間は南寄りの海風が卓越していた。また、観測実施日前において、2013年の方が2007年よりも高温な状態が続いていた。なお、観測対象エリアの一部は、2020年の東京オリンピックにおけるマラソンコース(予定)になっている。観測から得られた2013年と2007年の昼間の地表面温度分布を解析した結果、全体的には2013年の方が2007年に比べて地表面温度が高いものの、東京駅周辺の再開発地区等、新規にビルが建設された場所付近においては、逆に地表面温度の低下が認められた(下図参照)。ただし、地表面の射出率の違いが影響している可能性もあり、今後慎重に分析する必要がある。また、観測結果をGoogle Earthに投影するなどして詳しく調べた結果、街区の交差点で地表面温度が特に高いなどの特徴がみられた。さらに、夜間における地表面温度分布の特徴や、昼間と夜間の地表面温度の差異、それに、場所ごとの地表面温度の高低と天空率との関係を調査し、それらの結果についても発表したい。その他、東京都が展開している高密度気象観測網について紹介する予定である。