日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS23_28PM2] 稠密観測によるマイクロ・スケール大気現象研究の新展開

2014年4月28日(月) 16:15 〜 18:00 424 (4F)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、坪谷 寿一(NTTドコモ ライフサポートビジネス推進部)、座長:山口 弘誠(京都大学防災研究所)

16:15 〜 16:40

[AAS23-16] フェーズドアレイ気象レーダー・ドップラーライダー融合システムの開発

*佐藤 晋介1安井 元昭1前野 英生1花土 弘1高橋 暢宏1岩井 宏徳1川村 誠治1児島 正一郎1雨谷 純1田中 健二1落合 啓1久保田 実1井口 俊夫1 (1.情報通信研究機構)

キーワード:フェーズドアレイ気象レーダー, ドップラーライダー, ネットワークデータシステム, リモートセンシング, 局地的大雨

情報通信研究機構(NICT)では、局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)や竜巻・突風等による突発的局所的災害の予測と軽減を目指して、最先端リモートセンシング技術の研究開発を進めている。東芝、大阪大学、NICTの産学官連携チームで開発した1次元フェーズドアレイ気象レーダー(PAWR)は10~30秒間で隙間のない3次元降水分布を観測することができ2012年6月から大阪大学吹田キャンパスで実証実験を開始した。試験観測で得られた孤立した対流性エコーでは、ファーストエコーが発生してから地上に落下するのに約10分の時間がかかったが、その前に積乱雲発生場所を推測したりエコーの成長程度を予測したりするためには気象レーダー以外のデータが必要である。降水発生前の風速分布を観測できるドップラーライダーは積乱雲発生の前兆現象を捉えることが期待されるし、水蒸気分布やエアロゾルに関する情報も豪雨予測には重要と考えられる。そこで、我々はPAWRにドップラーライダー等のセンサーを融合させたシステムを開発し、NICT未来ICT研究所(兵庫県神戸市西区岩岡町)およびNICT沖縄電磁波技術センター(沖縄県国頭郡恩納村)に設置し、大阪大学に設置したPAWRとの連携オペレーションなどによるネットワーク融合データ処理システムをNICT本部(東京都小金井市)内に設置する。本システムは、高さ20mの鉄塔の最上部に直径4m、高さ4.5mのレドームを設置して、その中にフェーズドアレイ気象レーダーのアンテナ部(送受信機を含む)を収納する。鉄塔の5階 (高さ15m) 部分のデッキには、仰角 -10~190°、方位角360°のスキャンが可能で、最大観測レンジ10 kmのドップラーライダー(Leosphere 400s)を設置する。同じ鉄塔階の別テラスには、水蒸気分布を測定する多波長マイクロ波放射計、エアロゾルを測定するスカイラジオメータを設置し、他に放射収支計、温湿度計・超音波風速計、全天カメラ・雲監視カメラ(4方向)を鉄塔に設置する。地上には風向風速計、気圧計、雨量計を設置する。すべてのセンサーは常時リモート運用を行うためにネットワーク接続され、総合運用監視画面からの制御や全ての電源操作等が可能である。NICT神戸とNICT沖縄の観測データは基幹回線速度10Gbps以上のJGN-X回線を通してNICT小金井にリアルタイム転送される。そこでレーダー・ライダー合成マップ、気象センサーの時系列表示、気象レーダーの3次元データ表示などを行うための処理を行う。また、大阪大学とNICT神戸のPAWRによるデュアルドップラー解析をリアルタイムで行い風速ベクトルマップの表示も行う。これらの処理データはNICT小金井・神戸・沖縄に設置する大型4Kディスプレイに表示され、解析研究やデモンストレーションに用いられると同時に、NICT小金井のWebサーバーを通して公開される。本システムは2014年3月の完成後、速やかに観測実験を開始する予定であり、できるだけ早期にデータ公開を行いたい。NICTでは、大規模データ処理・伝送・可視化を行う最新ICTを融合的に駆使することで、最先端センシング情報ネットワークシステムの研究開発を進めており、本システムで処理するデータも社会に役立つソーシャル・ビッグデータとして情報発信していく予定である。本システムは PANDA ― Phased Array weather radar and Doppler Lidar Network fusion DAta system―という愛称を用いて、http://panda.nict.go.jp/ にてデータ公開などを行っていく予定である。