日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC31_29AM1] 雪氷学

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:45 312 (3F)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部物質循環学科)、兒玉 裕二(国立極地研究所)、座長:鈴木 啓助(信州大学理学部物質循環学科)

10:30 〜 10:45

[ACC31-07] 新潟県における年最大積雪深および積雪期間の長期変動

柴田 有貴1、*河島 克久2鈴木 博人3 (1.新潟大学理学部、2.新潟大学災害・復興科学研究所、3.東日本旅客鉄道株式会社JR東日本研究開発センター)

キーワード:年最大積雪深, 積雪期間, 長期変化傾向, 新潟県

1.はじめに新潟県は冬季気温が0℃前後の温暖積雪地域であるため,わずかな気温の変動が積雪の変動に大きく影響すると考えられる。実際にNakamura and Shimizu (1995)は,長岡における年最大積雪深と冬季平均気温の間に負の相関があり,冬季気温が年最大積雪深の変動に大きく関係することを示した。同様な関係は県内の複数の山間部でも確認されている(飯倉ら,1997;Takeuchi et al.,2008)。一方,鈴木(2006)は,新潟県内10地点を対象にMann-Kendall法を用いたトレンド検定を行い,年降雪深,年最大積雪深などが有意な減少傾向にあることを明らかにした。これらの先行研究があるものの,これらは解析対象の地点数が少なく,特に山間部の観測点があまり含まれていない。また,積雪深や降雪深以外の解析を行った事例がほとんどない。そこで本研究では,新潟県内の年最大積雪深と積雪期間(積雪初日から積雪終日までの期間,期間内の無積雪日も含む)について長期変化傾向を明らかにすることを目的としてトレンド解析を行った。2.用いたデータと解析方法新潟県では気象台の他にも自治体や消防署,鉄道などで古くから積雪観測が行われているので,これらのデータを収集し,解析に用いた。収集したデータは新潟県内244地点に及んだが,観測期間の違いや欠測などのため解析期間を長くとるほど地点数が少なくなるため,本研究では1941/42~2012/13年(72年分)を解析対象とした。この期間では,新潟(標高4m),直江津(4m),相川(5m),柏崎(7m),村上(9m),三条(9m),高田(13m),長岡(緑町23m),長岡(城内町30m),下関(33m),小千谷(63m),小出(98m),十日町(170m),入広瀬(230m),湯沢(340m),越後湯沢(358m),妙高高原(507m)の17地点について年最大積雪深の解析が可能であった。なお,積雪期間は11地点の解析となった。解析では,まず一次回帰分析を行い,回帰直線を求めた。その傾きの有意性について,t検定とMann-Kendall法を用いて危険率5%で検定を行い,両者とも有意であるとみなされたものについて有意な傾向があるとした。3.解析結果年最大積雪深については,新潟,直江津,相川,村上,三条,高田,長岡(緑町)で有意な減少傾向が認められた。すなわち,例外はあるものの,標高30m付近を境に減少傾向の有無が分かれることが明らかになった。減少傾向がみられた7地点の長期変化傾向は-2.9~-12.8cm/10年であり,各地点の10年当りの減少率(年最大積雪深の平均に対する長期変化傾向の割合)を求めると,どの地点でも10%程度であった。一方,積雪期間については,新潟,相川,柏崎,高田,長岡,下関,小千谷,小出,十日町,入広瀬,湯沢のうち,十日町を除くすべての地点で有意な縮小傾向がみられた。このことから,新潟県では少なくとも標高400m以下の地点では積雪期間が短くなっていることが分かった。縮小傾向のみられた地点の長期変化傾向は-1.7~-7.5日/10年であった。積雪初日と終日のそれぞれについてもトレンドの検定を行った結果,11地点のうち新潟,相川,高田,長岡,小出,湯沢の6地点で積雪初日の遅れが有意であり,新潟,相川,柏崎,高田,長岡,下関,小千谷,小出,湯沢の9地点で積雪終日の早まりが有意であった。