日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC31_29AM2] 雪氷学

2014年4月29日(火) 11:00 〜 12:45 312 (3F)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部物質循環学科)、兒玉 裕二(国立極地研究所)、座長:兒玉 裕二(国立極地研究所)

11:00 〜 11:15

[ACC31-08] UAV撮影画像のSfM処理による積雪環境の数値表面モデル (DSM) の取得

*内山 庄一郎1井上 公1上石 勲1鈴木 比奈子1 (1.独立行政法人防災科学技術研究所)

キーワード:UAV (unmanned aerial vehicle), SfM (structure from motion), DSM (digital surface model), オルソ画像, 積雪環境

近年、Structure from Motion (SfM)とmulti-view stereo (MVS) 技術を統合したソフトウェアが開発され、デスクトップPCで簡易かつ低コストに三次元モデルの構築が可能となった。SfM、MVSともに、コンピュータビジョンの分野で開発された技術である。SfMにより複数の画像からカメラの位置を推定し、MVSにより三次元モデルを生成する。本稿では、小型UAV (unmanned aerial vehicle) に搭載した民生用コンパクトデジタルカメラで低高度から積雪環境の垂直写真を撮影し、SfMによって数値表面モデル (DSM: digital surface model) を生成することを試みた。本研究の目的は次の2点である。1) 輝度が高く表面テクスチャーに乏しい積雪環境においてSfMの適用可能性を検証する。2) 複数時期の画像を用いた積雪深の変化抽出を試みる。小型UAVによる画像の取得は、数cmの積雪が観察された晴天の2014 (平成26) 年2月5日に茨城県つくば市の防災科学技術研究所 (標高26 m) において実施した。小型UAVにはマルチコプターのDJI F450を用いた。撮影は対地高度を50 m、100 m、150 mの3段階と、研究所敷地内にて3箇所の撮影を実施した。図は微起伏のあるエリアにおいて、対地高度50 mから1秒インターバルで128枚の垂直写真を撮影したものである。カメラにはRicoh GR (APS-C CMOS, 16Mピクセル) を用いた。これらの画像をSfMで処理し、ポイントクラウド (点群データ) を生成した。SfMソフトウェアにはAgisoft PhotoScan 1.0.1を用いた。また、Laser Technology TruPulse 360Bを用いて3点のGCPを測定した。SfMソフトウェア上でポイントクラウドに対しGCPを設定することにより、地上解像度1.2 cmのオルソ画像、および地上解像度4.8 cmのDSMを生成した。さらに、DSMをベースにGISソフトウェア上で等高線間隔0.2 mの詳細地形図を作成した。ここで、積雪環境特有の技術的な課題について述べる。直射日光下の積雪環境は反射光が強く、通常のカメラ設定では雪面が白飛びするために表面のテクスチャーが得られず、画像間のマッチングができないため、SfM処理が不可能であった。そこで、カメラの設定をf=5.6、シャッタースピード1/640、露出補正-1.3 EV、ISO自動とし、白飛びを抑えた。しかし、この設定では建物の影などが黒潰れするため、12 bit RAW画像からシャドウ補正を行い、暗部の階調を復元した。これにより、強烈な直射日光下の表面テクスチャーに乏しい積雪環境であっても、SfMで処理が可能な画像を得ることができた。以上のことから、雪氷調査におけるUAVおよびSfM活用の可能性が示された。積雪環境においてSfM処理によるDSM作成が可能であれば、積雪深の調査のほか、UAVとの併用により、雪崩調査等での活用も期待される。今後は、複数時期の画像を用いた積雪深の変化抽出と、雪崩等の自然斜面における計測を実施する。