日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC32_29PM2] 氷床・氷河コアと古環境変動

2014年4月29日(火) 16:15 〜 18:00 419 (4F)

コンビーナ:*川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、竹内 望(千葉大学)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、小端 拓郎(国立極地研究所)、座長:池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)

16:45 〜 17:00

[ACC32-10] 大気海洋大循環モデルと陸域生態系モデルを用いた古植生分布再現とその不確実性評価

*大石 龍太1チャン ウィンリー2阿部 彩子2 (1.国立極地研究所、2.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:D-Oサイクル, 古気候, 古植生, モデリング

ネアンデルタールと現生人類の交替が起きた20 万~3万年までのうち、最終氷期の後期にあたる6 万~3万年前は、ダンシュガード・オシュガーサイクルと呼ばれる数千年スケールでの気候変動が頻発した時代でもあった。この時期のネアンデルタールと現生人類の遺跡の分布は、当時の古植物相および古動物相と相関があることが示唆されている。この結果は、当時の変動する気候のもとで実現した植生分布と対応した動物種を、食料資源として適切な方法で狩ることが可能だったかどうかという点で、ネアンデルタールと現生人類の環境適応能力の差異を反映していると考えられる。従って、ネアンデルタールと現生人類の交替時期を通して、動物相、植物相、気候の変化を面的に時系列に沿って再現・推定することが、交替劇を解明するためには重要な課題となる。一方で、過去における動物の分布を正しく推定するには、当時の植生分布状況、気候変動に由来する環境の変化を定量化する必要があるが、それらは直接的には特定地点の湖底や海底の堆積物等から得られた花粉の構成比率や、酸素同位体比などの古環境指標から情報を得ており、堆積物等の発掘だけでこれらの古環境情報に面的な広がりを持たせるのは非常に困難である。本研究では大気大循環モデルによる古気候再現実験結果と、植生分布を再現可能な全球動態植生モデルを用いることで、アフリカ北部~地中海沿岸~ヨーロッパにかけての植物相変動の面的な再現を6 万~3万年前を対象として試みた。大気大循環モデルは大量の計算機資源を必要とするため、通常は低解像度で行う。しかし、低解像度では人類学の研究資料としては不十分である。そこで本研究では、手法として差分法を用いた高解像度化を行い、大気大循環モデルの再現する古気候情報を反映しつつ、比較的高解像度で植生分布を得ることができた。しかし、技術的には古植生分布の再現は可能になったものの、現時点では地質学的証拠から得られている当時の古植生情報とどのように比較できるかを判断できていない。今後は、植生モデルの入力に用いる古気候実験が適切であるかどうか、また、植生モデルの出力結果をどのように地質学証拠と比較し、意味のある結果として提供することが可能かを検討してゆく。