日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG04_1PO1] Hydroclimate in Asian monsoon region

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、里村 雄彦(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、鼎 信次郎(東京工業大学大学院情報理工学研究科)、高橋 洋(首都大学東京大学院都市環境科学研究科)

18:15 〜 19:30

[ACG04-P03] 黒潮前線帯で最発達する爆弾低気圧の進路と発達を導く環境場について

*永井 将貴1樋口 篤志2 (1.千葉大学大学院理学研究科地球生命圏科学専攻地球科学コース、2.千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:爆弾低気圧, 冬季東アジアモンスーン

冬季アジアモンスーンが強い時,爆弾低気圧は黒潮流域に集中する (Yoshiike and Kawamura,2009).暖流からの熱・水蒸気供給と低気圧の発達過程との関係を理解することは重要である.本研究は,黒潮前線帯近傍で最発達した爆弾低気圧について,進路及び発達位置の違いをもたらす環境場を黒潮前線帯の応答も含めて明らかにすることを目的とした.
黒潮前線帯を西部と東部で区分し,それぞれの領域で最発達した低気圧 (TypeW_P, TypeE_P) に対してコンポジット解析を行った結果,TypeW_P が発達する際には日本海上にメソスケール擾乱が存在することが分かり,低気圧発達後の進路との関連が示唆された.TypeW_P の発達前には黒潮前線帯に顕著な潜熱フラックスの極大域が見られた.これは発達中の低気圧前面に吹く東風に,南北に蛇行した黒潮前線帯が応答したものであった.これらはTypeE_P には見られない特徴であった.また,関東地方の気象に及ぼす影響について,TypeW_P 時は大雪や大雨,TypeE_P 時は強風による災害が発生しやすい傾向にあることがわかった.TypeW_P のもたらす大雨には潜熱フラックス上昇に伴う黒潮続流域からの水蒸気供給の寄与が示唆される.低気圧中心におけるコンポジット解析を行ったところ,低気圧中心に吹き込む水蒸気の移流についても両タイプで大きな違いが見られた.低気圧南西象限から中心に吹き込む水蒸気フラックスはTypeE_P でより強く,低気圧南方の可降水量は TypeW_P でより大きい値を示していた.TypeE_P は強い水蒸気の引き込みによる発達の促進,TypeW_P は湿潤な空気の移流による発達の促進がそれぞれ特徴的であった.同様の解析を大西洋亜寒帯前線帯の西部及び東部で発達する低気圧 (TypeW_A, TypeE_A) においても実施したが,発達の前後で下層環境場に大きな違いは見られなかった.したがって発達位置の違いに伴う下層環境場の違いは黒潮前線帯に特徴的な現象であることがわかった.また,大西洋で発達する低気圧よりも黒潮前線帯で発達する低気圧の方が,低気圧中心への水蒸気移流の影響を強く受けて発達していることが示唆された.